あらすじ最後の希望、あるいは最後の絶望。この瞬間、戦争が終わる。「大和」は使用されず、沈みゆく日本とともにある。軍令部は櫂が提案したミッドウェー海戦の採用を決定する。しかし、海戦に一極集中させるはずの戦力を事前の戦闘で多数失い、作戦の修正を迫られる。そこで櫂は「大和」の実戦投入を構想。巨大戦艦の大胆不敵な活用法を提案する。暗号が解読されたことを日本は未だ知らず……。田中は決死の覚悟でミッドウェー最前線へ! 戦後、櫂の処分はどうなる!? 戦争の終結、そして最終章へ突入する第37巻!!
極上の「負」のカタルシスだった。 日本が第二次大戦に突入しそして敗戦するまでを描いた戦記モノで、架空の天才軍人・櫂直(かいただし)が明晰な頭脳と冷静な分析によって開戦を、ひいては敗戦を回避すべく孤軍奮闘する話。 犠牲を払いながら手を尽くしても戦争へ突き進む軍部を止められず、事態は坂を転がり落ちるように悪化の一途をたどっていく。巻数にして30巻を超える長い長い無力感と喪失感を味わいながら、物語終盤ミッドウェー海戦で惨敗、櫂は軍を離れ、そのまま終戦、東京裁判を経て完結へ。 勝利も復讐も俺TUEEEも、およそ快感と呼べるものを与えられないまま、ずっとしんどい思いをしながら読み続けることになるものの、読後感は不思議と悪くない。むしろ心地よいまである。なぜか。 「いわんこっちゃない!」と叫びたくなるような負の感情のカタルシスの連続、喪失感、破壊(と再生)、櫂の決意と忠誠、わずかな希望……。一言であらわすなら、「大人の味すぎる娯楽」って感じ。