あらすじミッドウェー攻撃作戦の計画書を提出するため、単身軍令部へ赴く櫂。今泉という男が出迎えるが、態度や言動の真意が掴めず、櫂は警戒心を強める。外部から作戦を持ち込む櫂に対し、強い抵抗や妨害が待ち受けていることを覚悟の上で、櫂はいよいよ軍令部上層部に接触する……。軍令部の堅物と激しく衝突!? 沈没艦に現れたアメリカ潜水員の目的は……? 最後の希望、ミッドウェー攻撃作戦は実現できるのか!? 新たな展開が幕を開ける第36巻!!
極上の「負」のカタルシスだった。 日本が第二次大戦に突入しそして敗戦するまでを描いた戦記モノで、架空の天才軍人・櫂直(かいただし)が明晰な頭脳と冷静な分析によって開戦を、ひいては敗戦を回避すべく孤軍奮闘する話。 犠牲を払いながら手を尽くしても戦争へ突き進む軍部を止められず、事態は坂を転がり落ちるように悪化の一途をたどっていく。巻数にして30巻を超える長い長い無力感と喪失感を味わいながら、物語終盤ミッドウェー海戦で惨敗、櫂は軍を離れ、そのまま終戦、東京裁判を経て完結へ。 勝利も復讐も俺TUEEEも、およそ快感と呼べるものを与えられないまま、ずっとしんどい思いをしながら読み続けることになるものの、読後感は不思議と悪くない。むしろ心地よいまである。なぜか。 「いわんこっちゃない!」と叫びたくなるような負の感情のカタルシスの連続、喪失感、破壊(と再生)、櫂の決意と忠誠、わずかな希望……。一言であらわすなら、「大人の味すぎる娯楽」って感じ。