あらすじ真珠湾攻撃実行のため、航空母艦「赤城」に乗艦し、荒波の中ハワイへ向けて出発した櫂。「赤城」艦内は作戦成功に向けて大いに奮い立つ。一方、首相官邸では、アメリカからの最後通牒、通称「ハルノート」について、東條総理が最後の決断を下そうとしていた……。決定づけられた日米開戦! 陸・海のトップが大ゲンカ!? そして櫂は一人の青年と出会う……。開戦前夜の32巻。
極上の「負」のカタルシスだった。 日本が第二次大戦に突入しそして敗戦するまでを描いた戦記モノで、架空の天才軍人・櫂直(かいただし)が明晰な頭脳と冷静な分析によって開戦を、ひいては敗戦を回避すべく孤軍奮闘する話。 犠牲を払いながら手を尽くしても戦争へ突き進む軍部を止められず、事態は坂を転がり落ちるように悪化の一途をたどっていく。巻数にして30巻を超える長い長い無力感と喪失感を味わいながら、物語終盤ミッドウェー海戦で惨敗、櫂は軍を離れ、そのまま終戦、東京裁判を経て完結へ。 勝利も復讐も俺TUEEEも、およそ快感と呼べるものを与えられないまま、ずっとしんどい思いをしながら読み続けることになるものの、読後感は不思議と悪くない。むしろ心地よいまである。なぜか。 「いわんこっちゃない!」と叫びたくなるような負の感情のカタルシスの連続、喪失感、破壊(と再生)、櫂の決意と忠誠、わずかな希望……。一言であらわすなら、「大人の味すぎる娯楽」って感じ。