あらすじ

日本の選挙戦は、主要4党の党首による激烈なテレビ討論会を経て、雪の投票日を迎えた。結果は、どの政党も過半数をとれず、参議院の首班指名選挙でようやく決着、竹上総理が再び首相の座についた。一方、ニューヨーク沖には米大西洋艦隊が総動員で展開。「やまと」に対する完全勝利を期し、領海侵入を想定した演習が行われていた。そして、迫るワシントン・サミットへ向け、各国は動く。
沈黙の艦隊 1巻

日米は、世界でも類をみない高性能な原子力潜水艦「シーバット」を、極秘裡に造り上げる。日本によって資金、技術提供をされた日本初の原潜であったが、米第7艦隊所属という、数奇の宿命を背負った落とし子でもあった。艦長には、海上自衛隊一の操艦と慎重さを誇る海江田四郎が任命された。しかし、海江田は試験航海中に指揮下を離れ、深海へと潜行、突如反乱逃亡をする!原潜、核兵器、国家、戦争、そして…真の平和とは!?激動の20世紀末、人類最大のテーマに挑む最高傑作!

沈黙の艦隊 2巻

日本初の原潜「シーバット」が試験航海中に反乱逃亡!激怒した米軍は、シーバット撃沈を指令、第7・第3艦隊を南太平洋に集結させる。シーバットは、包囲網をしく米第7艦隊最大空母「カールビンソン」の眼前に大胆にも浮上。世界最強空母と、世界最強原潜は南太平洋上で対面!一触即発の南太平洋で、海江田は全世界に向け、独立国「やまと」を宣言した!!

沈黙の艦隊 3巻

独立国家「やまと」を宣言した「シーバット」。「やまと」はどこの国にも属さない戦闘国家であり、大国に支配されず、国連軍に出来ない軍事行動をとれる国として存在し、地球を一つの国家としようと、艦長・海江田は考えていた。さらに、海江田は、「やまと」は日本と軍事同盟を結ぶ用意があると明かす。やまとはたった3分で、米原潜6艦を戦闘不能に陥れ、世界を相手に独立戦争を開始した!

沈黙の艦隊 4巻

米潜水艦隊の包囲網を突破した「シーバット」は、沖縄沖に出現。そこには、ソ連最強の原子力潜水艦「レッド・スコーピオン」を操るロブコフ大佐が待ち受けていた。海江田の華麗なる操艦が、世界中を震撼させる!!一方、米ソの「やまと」攻撃姿勢に対し、日本は戦後はじめて独自の外交姿勢を見せる。「やまと」擁護の立場を取った日本は、護衛艦隊を送りだす準備を開始した。

沈黙の艦隊 5巻

独立国「やまと」は、同盟締結のため日本へ向かう。日本政府は、「シーバット」追撃のため沖縄沖に集結した米・ソ両超大国の太平洋艦隊から「シーバット」を擁護するため、海上自衛隊第2護衛艦隊の出動を決定。沖縄沖で、日米ソは「やまと」を中心に一触即発状態に突入!!「世界最強の戦闘国家」を標榜する「やまと」は、戦って勝つことにより、自らの目的を明らかにしようとしていた。

沈黙の艦隊 6巻

「やまと」の出現で、米ソによって作られた世界のパワーバランスは、崩壊しつつあった。「やまと」の処分をめぐり対立する日米両政府は、ハワイにおいて首脳会談を設ける。しかし交渉は難航、首脳会談の収拾がつかぬまま、米第3艦隊は同盟国である日本の護衛艦隊に対しミサイル攻撃を開始。一方、ソ連艦隊と交戦中の「やまと」は、ソ連空母「ミンスク」直下でソ連潜水艦隊に包囲されていた。

沈黙の艦隊 7巻

「やまと」は、世界に新しい軍事バランスを生みだそうとしていた。対立する日米首脳会談の席上、米大統領ニコラス・J・ベネットは日本政府に対し、日本再占領を通告し、交渉は決裂。日本政府は国連への働きかけを開始する。一方、日・米・ソ三国の艦隊が対峙する沖縄沖では、ソ連潜水艦隊の包囲網を突破した「やまと」が米第3艦隊との総力戦に突入し、米空母「ミッドウエー」に向け、魚雷を発射した。

沈黙の艦隊 8巻

米第3艦隊との戦闘を開始した「やまと」は、これに壊滅的打撃を与えた。搭載していた通常兵器を全て使い果たした「やまと」は、「核」の驚異と共に深海へ潜航していく。――国士の対等な会話は、最終兵器を突きつけあう事で成立する――「やまと」は世界に、その真実を見せつけようとしていた。一方、「やまと」との同盟締結を決意した日本政府は、事件の調停を国連安保理事会にゆだねた。

沈黙の艦隊 9巻

世界最強の戦闘国家である「やまと」は、世界に身の振り方の熟考を迫っていた。「やまと」との同盟を決意した日本政府は、国連安保理事会において同盟案の承認をえるべく、各国大使の説得を続ける。一方、通常兵器を使い果たし「核」のみを搭載する「やまと」は、日本からの大使を受け入れ、日本政府の要請に応じ大島沖に浮上。米原潜部隊が待ち伏せる東京湾に近づきつつあった。

沈黙の艦隊 10巻

「やまと」艦長、そして独立戦闘国家元首・海江田は単身東京に上陸。ついに日本政府と「やまと」は友好条約を締結させた。その直後、竹上総理は自衛隊と「やまと」の指揮権を、期限付きながら国連に委ねたいと発表する。一方、日本政府が「やまと」の補給・点検のため派遣した自走浮きドック「サザンクロス」は、米軍の制止を振り切り、東京湾へ入港、懸命に「やまと」との接触を試みる。

沈黙の艦隊 11巻

「やまと」と同盟を結んだ事によって日本の政局も大きく動こうとしていた。補給・点検のため移動浮きドック「サザンクロス」に入渠した「やまと」へ向け、東京湾へ侵入した米原潜は攻撃を開始。これに対し、「サザンクロス」護衛の任務についた海上自衛隊潜水艦「たつなみ」は必死の防戦を試みる。だが、被弾・浸水した「サザンクロス」は、「やまと」を収容したまま東京湾海底へ沈降していった。

沈黙の艦隊 12巻

深町艦長操艦「たつなみ」の捨て身の援護を受け、東京湾の危機を脱出した「やまと」は北極海へ向かった。一方、日本では、「やまと」との同盟を独断した竹上総理の責任を焦点に、臨時国会が召集される。その壇上、竹上総理は「やまと」支持を掲げる新党の結成を表明。国会を解散し、国民の意思を問う総選挙へと踏み切った。竹上発言の是非をめぐり、党派入り乱れての激論は続いた。

沈黙の艦隊 13巻

米大統領ベネットは、北極海へ進入した「やまと」に対し、その撃沈作戦「オペレーション・オーロラ」を発動した。北極海に展開する戦略原潜の引き揚げを敢行し、米海軍の切り札、最新鋭攻撃型原潜「シーウルフ」を北極海に派遣する作戦だった。「やまと」は原潜一隻にして、世界の軍事バランスを根底から揺るがすことを見せつけた。そして、冠氷下1000mを舞台に原潜対原潜の死闘が始まった。

沈黙の艦隊 14巻

米政府が仕掛けた「やまと」撃沈作戦「オペレーション・オーロラ」。その主役である最新鋭攻撃型原潜「シーウルフ」の前に「やまと」は劣勢をしいられる。氷塊を利用した巧みな操艦により、ついに反撃の機会を得た「やまと」だが、その直後、後方に新たな原潜が出現!驚くべきことに「シーウルフ」は2艦存在したのだ。米海軍ベイツ兄弟が艦長を務める2艦の「シーウルフ」の攻撃に「やまと」は…!?

沈黙の艦隊 15巻

原潜国家「やまと」は米原潜シーウルフ級2艦を撃破。浮上した「やまと」は鏡水会党首・大滝淳から会見の申し入れの通信を受ける。一方、米大統領・ベネットは「やまと」の米本土接近の危機を訴えると同時に、日本の態度を激しく非難。米国内に反日デモが沸き起こる。日本の選挙戦が一層激化する中、大滝は北極圏で海江田と会見し、世界最大規模の「やまと」保険構想案を提案する。

沈黙の艦隊 16巻

鏡水会党首・大滝淳は、「やまと」艦長・海江田四郎と北極海で会見。「やまと」保険構想を明らかにし、海江田の承諾を得る。その足で大滝は英ライズ保険に乗り込み、保険の成立を認めさせる交渉を成功させた。日本の選挙戦は激化。各党の争点は「やまと」受け入れか、否かで浮き彫りにされ、主要4党の党首による激烈なテレビ討論会に至った。雪の投票日、国民の審判が下る!!

沈黙の艦隊 17巻

日本の選挙戦は、主要4党の党首による激烈なテレビ討論会を経て、雪の投票日を迎えた。結果は、どの政党も過半数をとれず、参議院の首班指名選挙でようやく決着、竹上総理が再び首相の座についた。一方、ニューヨーク沖には米大西洋艦隊が総動員で展開。「やまと」に対する完全勝利を期し、領海侵入を想定した演習が行われていた。そして、迫るワシントン・サミットへ向け、各国は動く。

沈黙の艦隊 18巻

ワシントン・サミットへ向け、各国首脳が米国へと集結する中、ニューヨーク沖ではついに「やまと」と米大西洋艦隊40艦が激突。米海軍の要撃作戦「ナイアガラ・フォールズ」を「やまと」は爆圧を利用した原潜初の操艦「飛行」により回避。探信音のみで、米大西洋艦隊を精神的においつめる「やまと」。「次は魚雷」という威嚇に翻弄される米艦隊は、ことごとく探信音で「撃沈」されてしまう。

沈黙の艦隊 19巻

探信音のみを使用し続けていた「やまと」が、ついに米大西洋艦隊に対し魚雷攻撃を開始。火と油に染まってゆくニューヨーク沖の悲惨な光景を全世界が目撃する。米大西洋艦隊全40艦のうち39艦までを撃破し、圧倒的な戦闘力を見せる「やまと」が、唯一残った米空母「T・ルーズベルト」に探信音を打ったとき、空母から攻撃機が発進。「やまと」は体当たりを受けてしまうが…!?

沈黙の艦隊 20巻

米空母艦載機の体当たりを受け「やまと」は魚雷発射装置を故障、使用可能な発射管がただ1門のみとなってしまう。その状況は「やまと」が「核」を使用するかもしれないという極限状況を指し示していた。再び一団となった米大西洋艦隊は「やまと」の背後から大量のアスロック魚雷を発射するが、「やまと」は艦を180度回頭し、魚雷全弾を引き連れて同艦隊へと逆戻りを開始した。

沈黙の艦隊 21巻

米大統領・ベネットは「やまと」の核攻撃を覚悟の上で、米大西洋艦隊に総攻撃を指示。ついに「やまと」から2発のハープーンミサイルが発射された。核――?ニューヨーク市民はもとより、全世界が核の恐怖を体験し、第3次世界大戦への危機を体感する。この攻撃によりベネットはついに停戦を決意する。ニューヨーク沖での戦闘に代え、ワシントンでの政治的勝利を狙う。

沈黙の艦隊 22巻

ニューヨーク沖に浮上した「やまと」は機関停止し、アメリカに対し友好同盟を希望するメッセージを発信。米大西洋艦隊ナガブチ大佐は、攻撃中止を決断した。直後、「やまと」の甲板に乗員が整列、米本土に敬礼したため再攻撃はためらわれる状況となる。そのすきを突きヘリで接近したACN・TVクルー5名が「やまと」に乗艦。「やまと」国民となった5名は「情報国家やまと」として活動を開始する。

沈黙の艦隊 23巻

ニューヨーク沖で、無防備な完全停船を続ける「やまと」。その後方60キロでは、英・仏・ロ・中・印の各国が秘かに放った最強原潜が、対「やまと」作戦の先陣争いを繰り広げている。ワシントンの政治サミット、ACNの世界同時中継による情報サミットに加え、原潜による第3のサミットが始まる。「やまと」と英原潜「タービュレント」との交信をプロローグに、全世界同時中継開始された。

沈黙の艦隊 24巻

「やまと」と英原潜「タービュレント」との交信をプロローグに開始された全世界同時生中継。続いてACNボブ・マッケイが行ったロング・インタビューの中で、海江田は世界政府への道となる巨大な構想「超国家原潜艦隊=沈黙の艦隊」計画を明らかにした。放送が終了し、世界中に異様な興奮が巻き起こる。一方、ワシントン・サミットは、やまと「攻撃」を決定し散会。攻撃開始時刻が迫る。

沈黙の艦隊 25巻

ワシントン・サミットは、「やまと攻撃」を決定し散会。米政府は、無防備な停船を続ける「やまと」に対し、最終降伏勧告を通達した。対潜ヘリ部隊30機が出動、総攻撃開始の時刻が迫る。世界が再び「核」の恐怖におびやかされる中、海江田は人質ともいえる米ACNのTVクルー5名を退鑑させ、米政府に対し最後通牒「宣戦布告」を行う。米大統領・ベネットは決断を迫られる。

沈黙の艦隊 26巻

対潜ヘリ30機に完全包囲された「やまと」は、米政府に対し宣戦布告、エンジンを始動した。ACN社長・デミルは世界市民投票を実施、6千万人の75%が「海江田の声をもっと聞きたい」と答えた驚異の結果を発表した。だが米大統領・ベネットは攻撃の最終結論を下す。一方、「やまと」周囲には、英原潜以下4艦が全速で集結し、米政府中心の秩序から独立する意思を見せ始める。

沈黙の艦隊 27巻

「やまと」と米政府の戦争を止めるべく、英・中・ロ・印、各国最強原潜が「やまと」周囲に浮上。だが米政府は攻撃命令を撤回せず、対潜ヘリによる急降下爆撃を命令。ところがその直前、なんと「やまと」は艦橋に白旗を掲げる。攻撃を完全に封じられた米政府は投降を要求するが、「やまと」は無視。激しい威嚇攻撃の中、「やまと」は、白旗を掲げながらも、ニューヨーク港に向かう。

沈黙の艦隊 28巻

鑑橋に白旗を揚げたまま、ニューヨークへ前進を続ける「やまと」。米対潜ヘリの激しい威嚇攻撃の中、国連特使として出動した深町らは、「やまと」への乗艦を果たす。米海軍・ナガブチ大佐は、空母「J・F・K」の巨体で「やまと」を押し潰す最後の作戦を決行。両鑑は正面衝突し、「やまと」は鑑橋に海江田を残したまま、潜航した。生還を果たした海江田を、ニューヨーク市民は熱い声援で出迎えた。

沈黙の艦隊 29巻

米空母「J・F・K」との激突から奇跡の生還を果たした「やまと」は、ついにニューヨークに入港し、市民はこれを熱い声援で出迎えた。海江田は艦橋より、4カ国原潜の集結と、国連総会の開催を要求する。一方、「やまと」への戦争における敗北を認めた米大統領・ベネットは、米海軍・ライアン大佐並びに戦略研究家・ネイサンを呼び寄せ、自らの方針転換を考え始めていた。

沈黙の艦隊 30巻

「やまと」のニューヨーク入港によって、国連総会開催が決定した。軍備廃絶への拒否反応から、軍事関連企業が各国のマスコミ及び政府への圧力を強化。反「やまと」キャンペーンが開始され、5ヵ国原潜には「やまと」撃沈の命令が下る。だが各鑑の艦長たちは「沈黙の艦隊」参加を決意。攻撃は寸前で回避された。一方、米大統領・ベネットは、議会で「一切の兵器輸出入禁止」を唱える演説を開始した。

沈黙の艦隊

無っ茶苦茶面白い超名作。故に要注意。

沈黙の艦隊 かわぐちかいじ
完兀
完兀

漫画家・かわぐちかいじの名声を高めた代表作であり、今読んでも無茶苦茶面白くて熱い名作である。 まだ読んでない人は、すぐ読んだ方がいい。このレビューを読み終わる前に読破する方がいい。海面下の武骨な”てつのくじら”とそれを取り巻く人々が織りなす、全地球スケールに広がる風呂敷のファンタスティックな面白さに痺れること間違いなしだ。 そして、だからこそ、この漫画は要注意なのだ。 この漫画はファンタスティックを通り越すぶっ飛んだファンタジー作品であり、「いやいやそれはおかしい」と逐一ツッコむぐらいの冷静さが最終的には必要な、あぶない漫画である。 これは戦闘描写に限った話ではなく、軍人描写・政治描写でも同様の話だ。 というか、素人目にもわかりやすい戦闘描写の範囲だけでこの漫画のファンタジー成分を看破した気になりかねない点が余計にあぶない。このことに関しては、交渉を優位に進めるための心理的トリックに通じるものを感じる。あるいは(いい譬えではないが)巧妙なプロパガンダと似ている。 要するに、面白さに痺れたまま、作品に感化されたまま、染まり切ったままは危険だということだ。 本作はその面白さと現実世界に即した設定故に、なぜ現実はこの作品のようになれないのかと憤って、現実から離れたところに行ってしまって戻ってこれなくなってしまう恐れがある。これは最高の読書体験でもあるが、現実に生きる私たちはいつまでもそのままではいられないだろう。デビルマンを読んで「地獄へ落ちろ人間ども!」に共感しっぱなしでいてはいられないのと大差ない。 なお、私は本作を読んでしばらくはかなり感化されていた。最高の読書体験の一つであった。こんな気持ちいい体験、味わえるなら味わった方がいいに決まっている。 故に、本作が提供してくれるかもしれない最高の読書体験に水を差すようなものは、あらかじめ見ないよう注意(※読者の冷静さを取り戻す激うまギャグ)するのがよいだろう。 こんな長文駄文レビューを読む前に、最も面白く読めるうちに面白い漫画は面白く読むべきなのだ。