とんちで知られる一休宗純。その人生は波乱にみちたものであった。将軍、天皇、僧侶、侍、民衆…さまざまな身分の人間の思惑が混ざりあい、混乱を極める室町時代。高貴な身分でありながら出自を隠し、真剣に悟りを目指す一休宗純は迷いながら懸命に生きる。矛盾と不条理と苦しみに満ちた世間のなかで、どのように生き、そして死ぬのかを考えるきっかけとなる傑作。アングレーム国際漫画祭遺産賞を受賞し、世界からの評価が高まる坂口尚。その遺作となる本作は、日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した幻の作品。大判かつ高精細な印刷で、人生の指針を与えてくれる本作をお楽しみください。第1巻で描かれるのは、愛する母の引き離されて仏門に入ることとなった一休の幼少期から、青年となり師匠である謙翁宗為との出会いと別れ。
【1巻の感想】
一休さんはとんちが上手いでお馴染みですが、それしか知らないという人は多いのではないでしょうか。私もその1人でした…。1巻を読んで初めて一休さんが帝の子供だったと知りました。でも生まれる前に母親がライバル達の策略で左遷させられたから会ったことはないんですね。この複雑な出自が一休さんの根幹になってるんだなぁ。子供時代のキャラクターは本当に可愛らしくて母上様を恋しがって泣いてるところはつられて悲しくなりました。けれども青年になった一休さんはだいぶイメージが変わりますね。欲にまみれて腐敗した寺を離脱して、世捨て人のような僧侶に弟子入りしてからの葛藤がすごかった。やっぱり坂口尚が題材に選ぶだけある人ですね。
【2巻の感想】
自分の出自や生きることの葛藤から解脱して悟りを開いていきます。道号「一休」も授けられますが、たった1回の悟りじゃ煩悩って捨てきれないんですね…。1巻で師匠が語っていた「迷いなければ悟りもない 悟ってまた狂うその繰り返しじゃ…」というのは本当のことだったんだ。ストイックに仏道を極めながらも恋愛をしたり、葛藤は更に深まってるような気もします。どうなるんだ一休さんは…。むしろこれって仏教じゃなくて哲学の話なんじゃないかと思ってきた。
【3巻】
一揆が起きたり世の中が荒れてきたけど一休さんの破壊僧っぷりも加速してますね。でも捨てたはずの俗世にどっぷりと浸かってる姿はイキイキとしていて、天から授かった生をまっとうしてるように感じました。宗沅さんが言っていた「真心ちゅうのは心の無い人に有るのだ 人で無しに有るんじゃ!」というのはどういう意味なんだろう…。関わってきた人達が亡くなるシーンも増えてきたけど、一休さんの「私は毎日毎日生まれたい!!」という言葉が心に残りました。
【4巻】
1〜3巻に描かれていた心の迷いが全て払拭される4巻だった。「仏の道にはたどり着く先などないヨ」というのは真理だけど凡人とっては辛い現実だから、そういう人にとって一休さんは人で無しの破壊僧に見えるのかもしれないなと思った。晩年になっても女にモテ過ぎだろ!と思ったけど結婚したのも史実なんですね。死に際のあのセリフはすごかったな〜。ああいう風に死ねるって最高の人生かもしれませんな。
それにしても遺作のラストのセリフが「まだ死にとうない」なのすごいな〜
とんちで知られる一休宗純。その人生は波乱にみちたものであった。将軍、天皇、僧侶、侍、民衆…さまざまな身分の人間の思惑が混ざりあい、混乱を極める室町時代。高貴な身分でありながら出自を隠し、真剣に悟りを目指す一休宗純は迷いながら懸命に生きる。矛盾と不条理と苦しみに満ちた世間のなかで、どのように生き、そして死ぬのかを考えるきっかけとなる傑作。アングレーム国際漫画祭遺産賞を受賞し、世界からの評価が高まる坂口尚。その遺作となる本作は、日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した幻の作品。大判かつ高精細な印刷で、人生の指針を与えてくれる本作をお楽しみください。第1巻で描かれるのは、愛する母の引き離されて仏門に入ることとなった一休の幼少期から、青年となり師匠である謙翁宗為との出会いと別れ。