長年「あっかんべェ一休」は紙版も手に入りにくく電子書籍化もされていない作品でしたが、このたびKADOKAWAから復刊されたことによってその問題がクリアされたことは大変喜ばしいことです。大判なので1冊約2000円とお高いですが、坂口尚の圧倒的な画業をこのサイズで見れるならばむしろ安いと言っていいでしょう。調べたら電子版も同じ価格だったので「おらぁミニマリストだ!」という人以外は紙で買った方がいいと思います。

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【1巻の感想】

一休さんはとんちが上手いでお馴染みですが、それしか知らないという人は多いのではないでしょうか。私もその1人でした…。1巻を読んで初めて一休さんが帝の子供だったと知りました。でも生まれる前に母親がライバル達の策略で左遷させられたから会ったことはないんですね。この複雑な出自が一休さんの根幹になってるんだなぁ。子供時代のキャラクターは本当に可愛らしくて母上様を恋しがって泣いてるところはつられて悲しくなりました。けれども青年になった一休さんはだいぶイメージが変わりますね。欲にまみれて腐敗した寺を離脱して、世捨て人のような僧侶に弟子入りしてからの葛藤がすごかった。やっぱり坂口尚が題材に選ぶだけある人ですね。

【2巻の感想】
自分の出自や生きることの葛藤から解脱して悟りを開いていきます。道号「一休」も授けられますが、たった1回の悟りじゃ煩悩って捨てきれないんですね…。1巻で師匠が語っていた「迷いなければ悟りもない 悟ってまた狂うその繰り返しじゃ…」というのは本当のことだったんだ。ストイックに仏道を極めながらも恋愛をしたり、葛藤は更に深まってるような気もします。どうなるんだ一休さんは…。むしろこれって仏教じゃなくて哲学の話なんじゃないかと思ってきた。

【3巻】
一揆が起きたり世の中が荒れてきたけど一休さんの破壊僧っぷりも加速してますね。でも捨てたはずの俗世にどっぷりと浸かってる姿はイキイキとしていて、天から授かった生をまっとうしてるように感じました。宗沅さんが言っていた「真心ちゅうのは心の無い人に有るのだ 人で無しに有るんじゃ!」というのはどういう意味なんだろう…。関わってきた人達が亡くなるシーンも増えてきたけど、一休さんの「私は毎日毎日生まれたい!!」という言葉が心に残りました。

【4巻】
1〜3巻に描かれていた心の迷いが全て払拭される4巻だった。「仏の道にはたどり着く先などないヨ」というのは真理だけど凡人とっては辛い現実だから、そういう人にとって一休さんは人で無しの破壊僧に見えるのかもしれないなと思った。晩年になっても女にモテ過ぎだろ!と思ったけど結婚したのも史実なんですね。死に際のあのセリフはすごかったな〜。ああいう風に死ねるって最高の人生かもしれませんな。

最終話での「争いを無くしたいなら平安も求めぬことだ 平安という夢を… 信仰を…!」「この世は夢と夢がぶつかり合っている…」という一休さんのセリフは、石の花を描いた人が言ってるんだと思うと尚更に重みがありますね…。

坂口尚作品をまだ全部読んでないけど共通のテーマとして「より善く生きるにはどうしたらいいか」があるような気がしていて、それに対してあっかんべェ一休は最大のアンサーだと思いました。私はこれを読んで新たな扉が開きました。今の世の中で「自分を疑う」ことが出来てる人はどれくらいいるのだろうか…。

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あっかんべェ一休

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今から600年ほど前、1人の純粋な僧が生まれた。権力に抗し、名ばかりの高僧をあざわらい、民衆の中に飛びこんで豪放に生きた、一休宗純の生涯。第1巻は、悩んで成長していく少年期の一休。

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