ある意味1番可愛そうなのは三木涼太
元々施設育ちで、母親の愛情というものに飢えている三木涼太。 一見したら賢くて良い子の彼ですが、 彼が先々で出会う「母親」を採点して、見切りをつけたら殺そうとするなど、大分歪んでいます。 作中に出てくる「母親」達も各々に歪んでいて、(まともな人もいますが) 「本当に良い母親とは?」ということも考えさせられます。 主人公の三木涼太は、 自分が優位に立って相手 (母親) を選んでいると思っていると思うのですが、 本当は寂しくて愛情に飢えている1番可哀想な子だなと思います。 形は違いますが、 プライドが高く愛情に飢えている三木涼太に共感する部分もあったり。 少しやりすぎな設定というか描写もありますが、 親子のあり方などについて共感したり、色々なことを考えながら読める、 読み応えのある作品だと思います。
「バブみ」「オギャる」といった言葉が普及し始めて早数年。「戦慄のバブみサイコスリラー」とでも形容すべき作品が登場しました。
「登場親子、みんな毒」……とまでいうと語弊があり、まともな息子も中にはいるんですが、中心となるのは毒息子と毒親による予測不能のサスペンス。『スズキさんはただ静かに暮らしたい』に続いて佐藤洋寿さんらしい不穏な味わいが堪能できます。
多少のツッコミどころもありますが、異常な性向がぶつかり合ってもたらされる異様な展開の不安と不穏の波に細かいことはさておき呑まれます。
良い意味で、ネット広告で使い易そうなパワーのあるセリフやコマが多い作品です。
作中で、特殊な赤ん坊と一緒に荷物を運送するゲーム『デス・ストランディング』が描かれていたのも良い演出だなと思いました。
物語がどこに着地するのかが最大の焦点ですが、ぜひ行くところまで行ってやり切って欲しいなと願っています。
心の中の赤木しげるに「正しい親、正しい子供、正しい親子…………元々ありはしないんだって……!そんなもの…………!」と囁かれながら。