道具としての「役に立つ」とリベラルアーツの重要性
実在する美味しい手土産のガイドとして「役に立つ」ところに最初は目がいったのだけど、それだけでなく文学などのリベラルアーツがどのように「役に立つ」かが鮮やかに描かれている。 主人公の寅子は人を尋ねる際に手土産を持っていく。そしてその手土産には作られた背景や愛され方にストーリーがあり、「おもたせ(手土産をもらった側が持ってきた側に出すことらしい)」として一緒に食べながら話していくうちに、相手の心に引っかかっていた悩みが解きほぐされ、少し前向きになる。 リベラルアーツが「役に立つ」と言ってしまったが、これは道具のように「役に立つ」という意味ではない。会話を続けるためのネタではないし、ましてや知識の豊富さを誇示するためでは決してない。「誰と何を食べ、どんな話をするか(あるいはあえてしないか)、という全体」を作り上げるものなのだ。 そういった人格を備えたキャラクターとして寅子は魅力的だし、「コミュニケーショングルメ漫画」とはなるほどそういうことかと思った。