ジャンプ作品より遙かに上質なエンタメ
この漫画が他の作品と比べて、優れている決定的な点はサスペンスである。 サスペンス描写が圧倒的に上手い。世界観設定に対して、キャラクター同士の命のやり取りが行われる際の‘間’の使い方、駆け引きが適切なコマ数で描写されていく。サスペンスを急ぎすぎることも、もてあそぶことも無い適切なコマ数である。線による描写はガッチリと安定感のある線で止まった時の中を表現するには運動的な線よりも、こちらの方が良いのかもしれない。ただ、線は寄生獣の作者、岩明均と似ていてこの作家特有のものは感じられなかった。
表紙を見て何が描いてあるのかさっぱりわかりませんでした。さらにページをめくって数ページ読んでも何が何やらわからない。こりゃとんだ一杯食わせもんか、と思っていたら…、さすがマンガ大賞ノミネート作だけのことはあります。ストーリーが進む中での静から動、動から静への転換があまりにも劇的で息を飲んでしまいましたよ。失業中の佑河樹里と父・貴文と兄・翼、そしてじいさん。序盤はこの家族のちょっといや~な日常でスタート。そこに甥・真が加わり、ある事件が起こります。そして佑河家に代々伝わる術の使い手であるじいさんは、その危機から脱すため力を使うのですが、ここでの間のタメが実に見事。一瞬何が起こったのかよくわからない、とはまさにこのこと。そして表紙に描かれていた異形の存在・管理人の出現。このあたり、人がたくさん出てきてよくわからなくなってきた場面でしたが、そこにピシッと楔を入れられた感じ。止まった時の中が舞台だけに、このメリハリのつけ方は効いたなあ。