ネタバレ

天才を描いた漫画を語るうえで個人的には外せないのが『神童』。

子供が活躍する漫画を考える機会があって、あー、コレがあるじゃないかと思い当たった。
タイトルと表紙通りにピアノの「神童」が出てくる漫画。

一応の主人公は、音大受験を目指す冴えない音楽青年の凡夫で、彼が野球に興じるピアノの天才少女・うたに出会うところからスタートし、彼女を師と仰ぎ稽古を重ねる中でお互いに成長していく様子を描く。

全4巻で読みやすく、話も起伏に富んでいて面白い。

個人的に好きなシーンがいくつかあって、うたの天才性を示すためのシーン。
ピアノの天才、つまりは指使いが天才的であるがゆえに腰痛持ちの腰に手を当てただけでたちどころに治してしまうのだ。
また、もちろん感受性や耳も天才的であるからこそ、主人公が恋をしたときに感情を乗せて弾いた曲を聴いたうたは胸が高鳴り、その晩に初潮を迎える。
ギャグ的とさえ思えてしまうこの過剰な演出も魅力的なキャラ造形の一エピソードでしかない。
『神童』が天才を描いてくれる上で嬉しいのは、平凡な人間との比較だけではなく単体での異様なエピソードと、順調なときはとことん順調に、壁が立ちはだかる時にはとことん大きな障害となって現れることだ。
ベタだが、それがいい。それがベスト。だが、この作者の独特な空気感というものがオリジナリティを醸し出す。
それが上に書いたようなエピソードだ。
独特すぎて最高。聞いたことないもの。

さて、やがて二人の関係性は変わっていき、うたが世間に見つかり始めラストへ繋がっていく。
もっと読みたいと思える漫画って幸せだといつも思う。
腹八分目理論だ。
美味しく思えるうちに終わるのは、傑作『スラムダンク』然り。
たまに読み返したくなるのは全4巻というサイズ感もあるが、新たな発見もあるから。
次はいつ読み返そう。

読みたい
テムパル〜アイテムの力〜

ゲームの中でアイテム作って売りまくって現実でも成り上がる!

テムパル〜アイテムの力〜
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

先日発表された「ピッコマAWARD 2023」のSMARTOON部門を受賞していましたね。 https://piccoma.com/web/product/43170 世界最高のバーチャルリアリティゲーム<SATISFY>。全世界ユーザー数20億人が参加する壮大なファンタジーゲーム。 主人公は、借金まみれで日雇いの肉体労働で稼ぐゲーム中毒者の青年。ゲームばっかりやるから友達からも家族からも見放されていたが、ある日ゲームの中の依頼をこなしていると、まだ一人も存在しないレジェンドクラスの「伝説の鍛冶職人」に転職できる本を見つけ転職する。「伝説の鍛冶職人」になったおかげで、何でも武器を装備できるし強い武器も作れるようになって、それらを売ったお金を現実で換金して儲かってゲーム内でも現実でも底辺から成り上がっていく! という話です。 アイテムの力で猛スピードで成り上がっていく痛快なストーリー、縦スクロールならではのかっこいいアクション、仲間との絆、ゲームの世界のキャラ(AI)との恋愛まであって見どころがたくさん! 底辺を味わってきた主人公だから、ずっとお金にがめつくてとにかく根性で乗り切るところが面白いです。いろいろ運も向いてくるんですよね。 気軽にサクサクスルスルっと読み進められるのでちょっとした時間にぜひ。

巡る遊星

どうなるのか読めないけど楽しみな話!

巡る遊星
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

待ってました!中島佑先生の新連載!! ちばてつや賞『ODD FUTURE』や、となりのヤングジャンプ読切『友人について』『A PERFECT DAY』など素晴らしい読切を発表されてきた中島佑先生。 満を持しての連載!楽しみにしてました! https://tonarinoyj.jp/episode/2550689798819277317 高校時代、文化祭で脚本を書いたクラス演劇が優勝して才能を発揮していた主人公は、のちに高校時代の同級生に誘われてトリオを組んでいたが30を目の前にして芸人として売れていなかった。物書きとして友人の怪談系YouTubeの台本を書いて活躍してステップアップみ見えてきたりはするのだが、周囲では少しずつ不協和音的に人間関係がもつれ始めていく…。 これは「お笑い」の話というより、彼と彼を巡る周囲の物語。 物書きとして自分に自信がある主人公だし、自分自身のことを客観的に見られているのだが、決定的に人を楽しませようという気持ちに欠けているから芸人には向いていない。さらに、少なくとも自分は面白いものを書けているという傲慢さ、ふてぶてしさが表に出てしまっていて、他人から好かれることもない。プライドから自分から出た言葉は引っ込めないし、一人で何が悪いと開き直っている部分もある。 それでも僕にはどうしても彼を憎めない。 誰に評価されるでもなく、自分が面白いと思えることをやることが正義な世界で貫く彼は素晴らしい。しかしその価値観を他人に押し付け強要するのは傲慢すぎるし、いる環境に自分を適合させようという意思すら感じないのも違うと思う。その強情さと柔軟性の無さはやはり芸人には向いていないかもしれない。人に求めてばかりで求められることに応じられないのも人間関係が厳しくなってくる。 そのブレない姿勢が必要な場所もあるだろうから、全てを失う彼にはどこかで上手くいってほしいと願ってしまう。本格的に孤独になった彼にどのような変化が訪れるのか。 これからが楽しみだ。 https://comic-days.com/episode/2550689798274443728 https://tonarinoyj.jp/episode/316190247136013710 https://tonarinoyj.jp/episode/4856001361553621486

本棚に追加
本棚から外す
読みたい
積読
読んでる
読んだ
フォローする
メモを登録
メモ(非公開)
保存する
お気に入り度を登録
また読みたい
トゥルー・カラーズ

トゥルー・カラーズ

さそうあきらのフルカラーの名作が電子配信で復活!色をテーマに、文字通りカラフルな物語が展開されるショートコミック集。鮮やかに繊細に34編を収録!「この物語に出てくる色たちは、ほとんどが再現の難しい質感のある色ばかりです。読みながら、そのようなことを感じていただけるとうれしいです」(byさそうあきら)

true sounds~楽器物語

true sounds~楽器物語

『true sounds~楽器物語』はかつての名作『true colors』の精神を継承するカラー漫画。「真実の楽音」を鮮烈に描く。新バンドで実力を示せず苦闘するドラマーの藤堂はかつての師を思い出す――あんときも雨が降ってたな……基礎練習にうんざりしてたけど…今なら理解できるよ「次を予感させる音」ってやつを――――

愛がいそがしい

愛がいそがしい

高校生の時夫は父親の大介と二人暮し。学業のかたわら家事もこなす時夫だったが、一方で大介はろくに働きもせず女遊びばかり。そんなある日、時夫は大介が連れ込んだ女の一人・みふゆに恋をする。最終巻の4巻に待ち受けるトンでもないラストとは!?

マンガ脚本概論 漫画家を志すすべての人へ

マンガ脚本概論 漫画家を志すすべての人へ

さそうあきら氏は2006年より京都精華大学マンガ学部でストーリー部門の教鞭とって本年退職。15年に及ぶマンガ創作術のノウハウをこの作品に込めました。本作では、さそう氏が長年の実績と経験から構築した「漫画のためのシナリオ術」を惜しみなく披露しています。漫画家を目指す者たちにとって実践的な「マンガ教室」となっています。

戦争×漫画 1970-2020

戦争×漫画 1970-2020

漫画家たちの「戦争」アンソロジー 漫画家の感性が「未来の戦争」の予感を、戦時への想像力で捉えた作品を集め話題を呼んだ「ビッグコミックオリジナル戦後70周年増刊号」を底本に再編集し、追加原稿も多数収録した増補愛蔵版アンソロジー。排外主義と非寛容。世界全体を覆うきな臭さは、すでに新しい「質」の戦争が起きているとも考えられる。漫画家の想像力は果たして「戦争」をどう表現するのか。水木しげる、山上たつひこから浅野いにおまで異才・鬼才・天才……日本を代表する漫画界の傑物たちの描く「戦争」。小説家等の寄稿も多数収録。角田光代の「漫画の自由さと豊富さ」と題する書き下ろしも収録。

天才の描き方が秀逸にコメントする