仲良しだった男女4人組の青春群像劇にコメントする
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金のひつじ

あのときの気持ちを思い出せてくれるいいマンガになりそうな予感!

金のひつじ 尾崎かおり
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

痛ましく切ない少年少女の葛藤を描き出した傑作『神様がうそをつく。』の尾崎かおり先生の最新作第1巻。 小学校の頃に大親友だった男女4人組。 主人公である継(つぐ)ちゃんは大阪へ引っ越し、そしてまた高校で戻ってきた。 3人と久しぶりの再会を果たした継だったが、関係性は当時のままとはいかず…。 かつてあった姿や関係の幻影を追い求め、すがり、幻滅するという話はたまにあるが、そういったとき主に描かれるのは青春の同時代を過ごした同士である友人などの大人になった姿だ。 しかし、『金のひつじ』では、スタートが小学生であり、再会は高校生。 思春期に起こる身体や精神の変化は著しく、必然だ。 僕自身、親の都合で転勤が多く、人間関係には振り回されたクチだ。 広島で小学生3年~5年を過ごし、親友と呼び心底信頼していた友人と、大学生になる前の春休みに久しぶりに連絡を取り東京で会うことになった。 しっかりと当時の面影を残した彼と再会したものの、会話は弾まず、当時の思い出を語るも覚えているのは僕ばかりで、彼は広島で彼の時間を更新し続けていた。 広島にいた3年間に囚われ郷愁の念を抱き続けてきた僕とは対照的に。 そして、お互いにだんだんと口数は減り、洗濯物を取り込まなきゃいけないとかどうでもいい理由をつけて別れを告げ、それ以来会っていない。 そんなものだ。 その帰り道、僕はノスタルジーと、言い表しがたい感情に締めつけられ無性に泣きたくなった。 大学生になる前の夜、諦めのようなものを覚えた瞬間だった。 僕と彼とはなんだったのか。 あの日々はもう二度とは戻らない。 といった感情は誰しもが持っていると思う。 思春期→大人という変化より、小学生→思春期の方が僕はよっぽど共感できる。 そんな感情を思い出させてくれるし、おそらくお話の結末には僕が成しえなかった救いが描かれるんだろう。 いやそう願っている。 どうか、どうか、なにとぞ。

COBRA THE SPACE PIRATE

夢と呼ぶにはあまりに厳しく余りに哀しい影に向かってのオデッセイ

COBRA THE SPACE PIRATE
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)
阿房門 王仁太郎(アボカド ワニタロウ)

著者のライフワークなので一言で括れない幅がある作品で、私は 1.手塚治虫的なタッチが残り奇想展開なアイディアの楽しい「少年ジャンプ初期」(「コブラ復活」~「ラグボール」) 2.線がややソリッドになりシニカルな描写の増えた「少年ジャンプ中期」(「二人の軍曹」~「黄金の扉」) 3.ヒロイックな描写の光る「少年ジャンプ後期」(「神の瞳」~「リターンコブラ」) 4.「聖なる騎士伝説」 5.CGフルカラー期 で分けている。どの期間も見るべき所のある漫画であるが、4.の「聖なる騎士伝説」について書きたい。  「聖なる騎士伝説」は青年誌に掲載された長編で他の話より暗く、いつもよりシリアスでアダルトな展開や描写が多い異色のエピソード(何てったって、レディーさえ出てこない) だ。ここでは新世界の興奮は悪鬼に蹂躙され、コブラのいつもの剽軽な態度やヒロイックな勇気は鳴りを潜め、笑みは嘗て見られなかった暗い影を忍ばせている。絵の線もどの辺よりも細く、陰影もまた濃く、混沌とした悪意蔓延る世界をこれでもかと描き出す。筋も宝や冒険ではなく悪鬼の暗殺と言う剣呑な代物で、終盤に明かされる種も周到に張られた伏線もあり陰惨な世界観を補強する。  今までのスペースオペラと比べると余りにもノワールであり、退廃的でもあるが、それだけに強烈であり、私はこのエピソードが一番好きだ。けだし、このノワールが単なる露悪に終わらず、コブラが常に世を儚むようなニヒルな皮肉を呟きながら銃をぶっ放しながらもどこか善や正義を諦めきれていないからではないかと思う。有名なコマでもある様にコブラは終盤、実際には何の利益を齎さなかった教会を批判し「神か……最初に罪を考え出したつまらん男さ」と呟いてみせたが、これはやはり神や正義についてどこか夢を持っている証拠に他ならないと思う。さもなくばこんなセリフは決して言わないだろう。  コブラの海賊としてのアウトローな性格や享楽主義は上記の理想主義的な思想やストイックさに支えられている。寺沢武一は彼の初期作品を「思弁的」と批評していた記憶があるが、そういった性格が彼の作品から消えた事は一度も無かったことは確かだろう、そしてそれこそがこの漫画をいつまでも輝かせているのだろう。海賊と言う自由とギルドに対抗する高潔な戦士の顔を持つあの男のとこしえの旅に祝福を。

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