大友克洋といえば『AKIRA』『童夢』の超能力とか近未来SFっていう印象が強かったけど、「さよならにっぽん」はそういうSF要素はない。
収録されているのは『East of The Sun, West of The Moon』『さよならにっぽん』『聖者が街にやって来る』『A荘殺人事件』の4作品で、『A荘殺人事件』だけがミステリー調で他は人情味溢れるいい話。だから、大友克洋=AKIRAって期待するとちょっと外れるかも。少なくともでかいクジラがNYを押しつぶす話ではない。
ただ、『East of The Sun, West of The Moon』『さよならにっぽん』『聖者が街にやって来る』の3つは大友克洋の初期に、社会の闇の部分とか退廃的な人間とかを多く描いていた頃よりももっとライトに読みやすくなって、じんわりと心に残るとてもいい短編だと思う。
『さよならにっぽん』が1〜5まである連作。『East of The Sun, West of The Moon』と『聖者が街にやって来る』は内容的なつながりはないけど登場人物がかぶる。『聖者が街にやって来る』が一番好きだな。
『A荘殺人事件』はカツ丼が出て来るから『GOOD WEATHER』って短編の『カツ丼』と繋がっているのかもしれない。
値段もそんなに高くないからおすすめ。
NYの片隅でジュードー教室の看板を掲げたニッポン男児が出会うのは奇人・変人ばかり!?他に『聖者が街にやって来る』など、心に染み入る中編を収録。