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妻をめとらば

バブル絶頂期の若者の恋愛観を描く

妻をめとらば 柳沢きみお
マウナケア
マウナケア

この作品の連載が始まったのはバブル絶頂期。そして主人公・高根沢八一は証券会社の営業マン。そんな華やかなりし時代の花形職業という浮ついた設定なのに、話はどんどん陰鬱になっていく。あの時代のサラリーマン漫画にしては異色の作品。しかしながら当時の若者の恋愛観がしっかり描かれていて、そんなところがヤングサラリーマンには人気だったと記憶しています。テーマはタイトル通りの理想の結婚相手探し。八一はさまざまなタイプの女性と付き合うのですが、うまくいかずに破局、の繰り返し。なぜダメなのか、その答えは読者にはよくわかるように描かれていて、逆に劇中の八一はそれに気づかないという、なんとももどかしいストーリーが延々と続きます。八一の恋愛下手っぷり、そして八一に関わる女性たちの行動。恋愛に対する価値観が変わりつつあった時代の中、まわりはそれに乗っかって成長していくのに、八一は変わることができない。いつの時代もこういう人っていますよね。こういう側面だけ見ると人間ってあまり変わっていないのかもなあ。30歳前に結婚で焦る、ってことはさすがになくなってきたけれども。

宝石の国

重さと軽さが同居する、命の話

宝石の国
アフリカ象とインド象
アフリカ象とインド象

大好きな漫画です。 学生の頃、この漫画に狂っていた時期がありました。 友人全員にこれを読めとしつこく勧めて、 読んだ人に対してはお前はこの漫画の何もわかってない!と浅い考察を語る最悪のオタクでした。黒歴史です。 つまり、人を狂わせるほど魅力ある漫画ということとも言えます。言えますね。 とはいえ、こちらは既に多方面で紹介され尽くした人気作でもあります。 今さら自分の稚拙な語彙でレビューしても読むに耐えませんので、 ネットの海に散乱した情報に少しだけ補足をして、読むことを迷っている方の壁を取り払えればと思います。 この漫画が話に上がる時についてくるのが、とんでもない鬱漫画だという話題。 これが読み手の1つのハードルになってしまっていると思います。もったいない! 大丈夫。救いはあります。怖くないです。 確かに取り扱うテーマは重く、展開に心が締め付けられることはありますが、この作品の魅力はそこだけではないです。 素晴らしいのは重厚な世界観の中に、ポップさのエッセンスを忘れず組み込んでいること。 (ここで言うポップさとは、いわゆる大衆に寄り添う心のこと) 会話のテンポ、 キャラの関わり、 かわいらしいジョークのセンス。 そういう要素の節々に、作者である市川春子氏の人柄を感じられます。 そしてその人柄から読み取れるのは、 この人は読者の心をズタズタにしたい訳ではないよ〜。 ということ。 きっと最後まで読み切った方なら共感してくれると思います。 苦しさの先に希望がある。 これは人間の話。命の話。生と死の話。愛の話。宇宙の話。 火の鳥超えてます。ガチ。