どるから

K-1石井館長がJKに転生して空手ビジネス

どるから ハナムラ 石井和義
mampuku
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 K-1の石井館長が事故死して、同時に借金苦で自殺を図り生死をさまよっていたJKに生まれ変わり(乗り移り)、JKの実家の空手道場を経営再建する話。設定もストーリーもぶっ飛んでてよくゴーサイン出たな!!?と思ったら原作者の名前みて爆笑w女子高生になる以前に漫画原作者になっちゃったよこの人w  転生先で生前みにつけた専門知識を揮う話はラノベを中心に流行りですが、得意の空手で大立ち回りをしたかと思えば家に帰って貸借対照表とにらめっこ……そんじょそこらの異世界でマヨネーズ作るような小説とは比べ物にならん素晴らしい説得力と読み応え。  さらには作画に「アニメ監獄学園を創った男たち」のハナムラ氏を起用。実在人物を絶妙なコミカルさ加減でキャラクターに落とし込み面白おかしく動かすことにかけては折り紙付きです。画力が素晴らしいので格闘シーンもお着換えのシーンも満足度抜群。今年刊行された新作のなかでも、自分のなかで上位ですねこの漫画は!  石井館長が出所してから十余年経ちますが、作中ではスマホとSNSが普及していることから現代が舞台のようです。この世界線の館長、また捕まったの?w

ビューティフル・エブリデイ

こじれた家族の人間関係をそれぞれの視点で描く上手さ

ビューティフル・エブリデイ 志村貴子
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

志村貴子節出てるなーという感じで好き。 女子高生の主人公のエロ漫画家の父が亡くなり、再婚した相手方には年の近い兄妹がいて、兄はセクハラ気味で接してくるし、妹はブラコンだから嫉妬してきて当たり強いし、父は幽霊になって見守っていて~、というそれぞれの人間関係がこじれた矢印になている感じ、そしてそれぞれに視点が移ってそれぞれに思うところあってみんな生きているという感じ。 好きですねー。 そもそも僕は放浪息子がめちゃくちゃ好きで感情移入以上のなにかを持って読んでいたのですが、淡々としつつ感情の機微を描いていて、デリカシーのないあいつにも自分とは人生や家族があって、みんな違うなりに人と人の間でしたたかに生きていく感じがたまらんのです。 何なんでしょう、志村貴子さんのこの達観した感じ。 他人は他人、自分は自分。 実は人って他人にそこまで興味持たないよね、といいつつ固執したり、みたいなこのバランス感覚。 何か傷つくことを言われても何も感じてませんよーみたいな顔しつつしっかりダメージあったり、その顔とか絵が単純に好きです。 外には外の顔、考えていることはまた別、みたいな、漫画らしい過剰な演出してない感じも好きですねー。 世の中、漫画みたいに感情の起伏を表に出すような人ばかりでもないし、出したところで取りあってもらえないし、構ってちゃんみたいに思われても嫌だし、そんなことごちゃごちゃ考えてしまうような人ととは仲良くなれる気がするし、志村貴子さんとの相性もいいでしょう。 でもなんでだろう、自分の中で放浪息子ほどハマれないのは。

sweet home

世の多くの男性に手痛いダメージを与えるだろう読切

sweet home 新田章
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)

『あそびあい』『恋のツキ』の新田章先生の読み切り。 本当にこの作者は男性の心をエグる漫画を描くのが上手だ。 ある種のダメな男性を描くのが上手とも言えるが、世の中の男性全てに共通しそうな点でもあるのでとても他人事とは思えない。 男性からしたら一滴も思いもしなかったことが起こる。 そして思いもしなかったこと自体が罪であり、とうにターニングポイントは過ぎていたことを思い知らされるのだ。 同棲中の結婚適齢期の二人。 そんな幸せに見えた二人の生活にはひたひたと影が迫っていた。 絶対にしそうに見えなかった女性側の浮気。 それは忙しくして相手をしてやれなかった男性の責任かもしれないが、あくまで行為に移してしまったのは女性の方だ。 これに関して男性が悪いのか、女性が悪いのかという議論はここでは些末な問題だ。 この世に絶対なんて無いし、表面的には理想的にさえ見えた二人は女性の努力だけによって支えられていて男は自分の力だけで気持ちよく立っていると思い込んでいるだけのピエロだ。 相手を見ていない。 相手の本質を見ようとしない一方通行のコミュニケーションであり、理想の押し付けだ。 女性を一人の人間という個人ではなく役柄で見てしまっているよくいる男性像が浮き上がってきて、自分が根本的に何が間違っているか気づけず救いがないまぬけなまま華麗にしっぺ返しを食らうのだ。 世の男性が好むであろう愛想の良い女性の姿は、求められているから演じてはいるがそこに本当の彼女らはおらず、本心は別にありそれを見抜けない男性は滑稽であるという強いメッセージ性が込められているように思う。 それにしても釣った魚に餌をやらないタイプの男の趣味が魚釣りとは皮肉が効いてる。 素晴らしい。 たった一話の読切でハッとさせられるとはさすがの一言である。

なんでここに先生が!?

全年齢向けエ□漫画がなんでこんなに売れてるのか考えてみた

なんでここに先生が!? 蘇募ロウ
mampuku
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 ①際どいサービスカットのない話数が存在せず、②あの手この手でラッキースケベを引き起こし、③掲載誌で1・2を争う画力を惜しみなく発揮し、④そのくせ全年齢対象のため肝心な部位は描かれず、⑤ストーリーは辛うじてラブコメの体裁を保つ程度のものである。  とりあえずこれら5つの条件…とりわけ①③⑤にあてはまるマンガを仮に「一般誌のニアエロ漫画」と呼びます。最近増えつつあってしかもどれも売れてますね。「終末のハーレム」「無邪気の楽園」あたりを筆頭に、「パラレルパラダイス」や「監獄学園」「デスラバ」もこれに近い分類かもしれません。ただこの世代における「一般誌のニアエロ」ブームを作ったのはやはり「ToLoveる-ダークネス-」の大ヒットなんじゃないかなって気がしてます。そして、ToLoveるの持つ上述の5つの要素を余すことなく持っているのが「なんでここに先生が!?」なのです。  「一般誌のニアエロ」人気の要件としては 【A】物語の要素としての性交渉が極力持ち込まれず、 【B】一般紙で許されるギリギリを攻めることで 【C】成年向けでは得られない特別感・背徳感を得る。  これABどちらも重要です。もし性交渉もしくは行為があったと匂わせる場面を描写してしまうとそこにシリアスな意味が生まれてしまい、条件⑤を満たすのが難しくなります。大袈裟にたとえるなら「チェーホフの銃」みたいなものです。主人公とヒロインの関係になるべく波風を立てないためにも【A】は守られなければなりません。(「パラレルパラダイス」に関しては物語において性交渉は重要なカギであるにもかかわらず、性交渉しないと話が進まないこともあり、セックス投げ売り&大暴落しているので【A】を満たしていなくても現状問題はないように思われます)  また、【B】を踏み越えた先(成年向けの領域)にあるものは (a.)結合部や陰部の描写と (b.)行為が明確な描写を伴って官能的に描かれること  この2つが主かなと勝手に思っているのですが、ハードル(a.)は一般紙で踏み越えられることはまずなさそうです。ハードル(b.)は少女漫画やBL漫画、一部の青年漫画(主要登場人物の男女が愛情で結ばれる、悪意ある暴力行為が行われる、など、ストーリーの構成要素として描かれる)、あとは例外的ですが週刊少年マガジンの袋とじのようなオマケ漫画……で見られますが、いずれを見ていても思うのは「行為の描写」そのものを楽しむなら多少値は張っても18禁の本を読んだ方がずっと実用的だなってことですね。【C】を得るには【B】をとことん攻めたほうが効果的なはずなのに、行き過ぎて(b.)にまで踏み込んでしまうとじゃあ成年向けでいいじゃん、という矛盾を起こしてしまう。消費者はワガママですね。  結局すべてをバランスよく満たした「ToLoveる」、そして「なんでここに先生が!?」が一番優れているという結論に……。  ちなみに個人的には「終末のハーレム」「デスラバ」が読み応えあって好きなんですが、ストーリー色が強いのでそういうの要らないって人は多いかもしれないですね。