グーグーだって猫である

猫のいた日々

グーグーだって猫である 大島弓子
影絵が趣味
影絵が趣味

小学生の頃、ある日、母が家族になんの相談もなくいっぴきの猫を連れ帰ってきた。もう子猫とは言いがたい白いチンチラで、目は綺麗なエメラルドグリーンだった。母曰く、気がついたらペットショップで購入していたとのことだった。当時の私は、この珍事件に歓喜したのか、さっそく翌日にはクラスメイト全員にアンケートをとり、そして名前が決められた。Jといった。 家族や私の友人にたいへん可愛がられたJだったが、数年が経つと、事態は少し変わっていた。私は中学生になり、部活や勉強に忙しく、あまりJの相手をしないようになった。その代わりに意外にも、父がJの世話に熱心になった。夜、父が仕事から帰ってくると、Jは歓喜乱舞した。父が外へ連れていってくれるからだ。毎夜、Jと父は15階建のマンションを上から下まで何往復もしてから疲れ果てて帰ってくるのだった。父と折り合いの悪かった私にとっても、この外での遊びは好都合だった。 しかし、世の中とは不可思議なもので、Jと父とは相思相愛にはならなかった。いわば父はJの遊びに利用されていただけで、Jを好きすぎる父はいかんせん触りすぎる。Jはそれをちょっと鬱陶しく思っていたらしかった。家族が寝静まる夜なか、Jはふらふらと寝床を探しはじめる。高校生になっていた私はいちばん遅くまで起きているようになった。父の部屋はJが出入りできるようにいつでも開けてあった。それでもJが父の布団で寝ることはなく、いつも私の部屋の閉ざされたドアをガリガリと引っ掻いた。その音のせいで寝られない日もしばしばあった。時々、気が向いた日にだけ(それはつまり色々あって落ち込んでいたり寂しい思いをしていた日だ)ドアを開けてやっていっしょに寝た。 大学生になると私はすぐに家を出た。Jのせいではないが、父との折り合いはますます悪くなっていた。家を出ると、すぐに生活が一変した。それまでずっと視界にモヤがかかっているかのようだった慢性的鼻炎が瞬時に治ったのだった。「バカは風邪をひかない」という言葉は真であるとそのとき私は思った。たぶん、私は猫アレルギーだったのだ。 グーグーを読んでいると、猫のいた日々を思い出す。長年、思い出しもしなかった記憶が沸々と湧き起こってくる。そして、なんだかよくわからないけれど、ボロボロと涙が溢れてくる。けっしていい飼い主ではなかったのに。 Jも父もいまだに健在だ。でも父は、年に一度あるかないかで会うたびに年老いたなあと思う。Jもそろそろ猫でいえば化けてもいいぐらいの年齢になっている。家出していらい、家には寄り付かないようにしていたが、そろそろこちらから訪ねてみてもいいかもしれないと柄でもないことを思った。Jは私のことをまだ憶えているだろうか。

綿の国星

転んでもタダでは起き上がらない!

綿の国星 大島弓子
影絵が趣味
影絵が趣味

転んでもタダでは起き上がらない! 大島弓子のマンガは、もうこれに尽きると言ってもいいかもしれません。というか、もう全編に渡り転びっぱなし。敗北の人生。しかも、あしたのジョーですらびっくりして卒倒するぐらいのノーガード戦法で立ち向かってゆく。でも、それは戦法なんて呼べた代物ではなく、彼女たちは単に生まれながら身を守る手段を知らないだけなんです。それはそれは痛々しくて見ていられないほどの。 『綿の国星』のチビ猫は、両親に刷り込まれたロマンティックな価値観よって、大きくなったら人間になれると信じている。その両親というのは、じっさいには人間の飼い主で、チビ猫はほんとうの父母すらもわからない。飼い主は事業のしっぱいで夜逃げしてしまい、瀕死のノラでいるところを時夫に救われる。そして恋をする。 少女の姿で描かれてはいても、チビ猫はやっぱり猫なので、助けてくれて「ありがとう」のたったの一言も伝えることができません。それでもチビ猫は、たとえ転んでもタダでは起き上がらない! いつか人間になったら「一番はじめにありがとうって伝えるわ」と心に誓うんです。 衰弱から回復して元気なってくると、しかし、チビ猫はだんだんと世の理りを理解するようになります。でも、あたまで理解したからといって人間への憧れが消えるわけではありません。だからといって相変わらず言葉が通じるわけでもない。時夫の一家は優しく接してくれます。でも、チビ猫はいつだって周囲の人間たちにたいして、あるいは猫たちにも、あるいはものを言わないこの世界の自然にたいして、たったのひとり(いっぴき)なんです。でも、それでもチビ猫は、転んでもタダでは起き上がらない! たとえ意志の疎通ができなくても、その対象を懸命にみようとする、きこうとする、肌で感じようとする、たとえ泥だらけになろうとも。 大島弓子のマンガは全編に渡り、この種の健気な気合いがみられます。『つるばら つるばら』というのがまた凄まじくて、男性に生まれてしまった女性が、子どもの頃くりかえしみた夢にでてくる家をどこまでも、どこまでも探し続ける。夢のなかでのことですから、あらゆる意味で当の本人にしかわかりえない家をどこまでも、どこまでも探し続けるんです。もうね、大島弓子というひとはとにかく気合いが入っています!

ひだまりスケッチ

ひとり暮らしも、二人でみんなで!

ひだまりスケッチ 蒼樹うめ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

高校前の「ひだまり荘」でひとり暮らしする、新入生のゆの。同じ屋根の下の同級生、先輩達、翌年には後輩達と、女子だけの賑やかな日々に笑いっぱなし!ちょっと独特な「美術科」で、技を磨いて未来探し……は、もうちょっと先かも。 ……という感じで、基本はまったり進行の四コマコメディ。見所は何と言っても、六室あるひだまり荘の、同学年同士の「バディ」な関係。 例えば、ゆのの一つ上のヒロと沙英は、ほぼ「夫婦」。阿吽の呼吸で互いを補う関係は、「恋愛」を既に終わらせたような安心感を周囲に与える。 そんな先輩達に憧れるゆのと、同級生の宮子の関係は「持ちつ持たれつ」。宮子は生活面ではゆのに頼りっきりな反面、精神的には楽天的な性格で、自信がないゆのを支える。 一つ下のなずなと乃莉は「振り回し/され型」。乃莉は気弱ななずなのサポートに奮闘しながら、なずなの愛らしさに癒されて安心する。 様々な形の「バディ」が表現され、更には学年も飛び越えて、彼女達が支え合う日々のエピソードが少しずつ、積み上げられる。その先には、ひだまり荘でしか育めない、大きな友情が待っていて、節目節目に訪れる感慨に、思わず泣けてしまうのだ。 この先、ゆのと宮子に訪れる進学という試練が、どのようなエピソードとして彼女達の人生に積み重なるのか、乃莉・なずなと新入生の茉里と共に、見守りたい。 四コマ漫画として整理された背景は、連載当初から読みやすく、更に3、4巻辺りで現在の蒼樹うめ先生の、『魔法少女まどか☆マギカ』のキャラクターデザインや『微熱空間』で見られる、究極に可愛いキャラの完成形が発現する。 8巻から登場のぶっちゃけ系新入生・茉里ちゃんが可愛くて、今までにない展開が新鮮なので、沙英・ヒロ卒業後も安心の面白さ!

裸のマオ

女生徒と女教師の秘密の逢瀬

裸のマオ もぐこん
名無し

骨が浮き出るほど痩せている少女・マオと、彼女をデッサンモデルに誘った美術部顧問(女性)の短い逢瀬のはなし。 SNSでとてもたくさん反響があった様子で、気になりくらげバンチで読んでみました。 https://kuragebunch.com/episode/10834108156723939020 家庭の事情により不健康な生活を送っているマオの世話を焼く先生は、ただの教師と生徒として以上の感情を持ち、マオの前でそれを隠すこともなく接していた。 けれど、そんな絶対に知られてはいけない秘密の時間は、ある時あっけなく終わってしまう。 この先生は倫理に反する、むしろ犯罪ともいえる行為をしているけれど、それによりマオの心や身体が傷ついたということではなく(少なくとも作品の中では)、いち読者としては終わり方に切なさを感じました。 マオの華奢過ぎるからだと無知で未熟で無防備な様子はこちらをハラハラさせる部分もあって、ある意味先生がそばにいることで安心感が生まれていた。 でも切ないながらも、あれで良かったんだと思えるラストでした。 真面目なこというとマオの身体を見てまわりの大人が然るべき対処をするべきだったw これこそ読み手の感想が分かれる作品だと思うので、他の人の感想も知りたい。

ネオ・ファウスト

この世の最高の享楽とタイムリープと。

ネオ・ファウスト 手塚治虫
さいろく
さいろく

懐かしい気持ちで読み返したがこのネオ・ファウストは男性なら一度は読んでおいた方がいい。 誰しもが一度は妄想するであろう世界とその幕引きがわかりやすく描かれている今作では、男というものがどれだけ愚かかが(特に坂根や一ノ関を見ていると)非常によくわかる。 「享楽」という単語も初めて読んだ小学生の頃の自分には理解できず広辞苑で調べた懐かしい記憶。 享 が読めなかったんだよなぁ…ともかく享楽を描いた作品なのです。 また、この作品には現代への影響が非常に強烈だったことがいくつかの点から想像できる。タイムトラベルものは当時も多くあったがこういう使い方はさすが。 「時をかける少女」みたいな今で言う"タイムリープ"ものも当時は"タイムトラベル"と呼ばれていたなぁ。 ドラえもんのタイムマシンが多くの人達の妄想を掻き立てたように、いい大人となった男性の妄想を掻き立てる作品。 そしてもちろん手塚先生の最高傑作の一つ、と言いたいのだが惜しむらくはちゃんと完結していないところ。 手塚治虫の最後の作品となり未完のままとなったものの、全2巻として売られているのももう納得するしかないのだ。 (電子版に最後の続きのネームが入ってて涙出そうだった。本当に悔やまれる)

俺、限定コミュ症なんでっ。

世にも微笑ましい"限定コミュ症"の物語

俺、限定コミュ症なんでっ。 桐谷のば
sogor25
sogor25

「限定コミュ症」とは:人とのコミュニケーションを上手く取ることができない"コミュ症"だけど、幼稚園児くらいの子供相手であれば積極的に対話をすることができる、そんな症状のことである。障害があるということではなく、特定の相手に対してそのような症状が出る、だから"コミュ障"ではなく"コミュ症"。 そんな"限定コミュ症"な主人公の梨川益臣、彼が高校の幼児教育科という保育士になるための学科で送る日々を描いた物語。 限定コミュ症なだけに同級生とのコミュニケーションにはなかなかに苦労する梨川。それでも、舞台が幼児教育科だからなのか、彼の周りには個性が強いながらも梨川と自然と接することのできる友人が集まっている。また、子供とならコミュニケーションが取れるというだけではなく、実は保育士的な意味でも梨川がハイスペックな面を見せたりする。そういう意味で、よくある"コミュニケーションを取るのが苦手な主人公"の物語とはちょっと違う、卑屈な雰囲気の薄い、むしろ爽やかな青春感の溢れる物語。 というか、子供とハイテンションで触れ合う梨川くんが普通にカッコ可愛いのでそれだけ見てても癒やされる作品。 ちなみにタイトルと表紙からは一切わからないけど作品の舞台は神戸。ということで、全編(神戸弁寄りの)関西弁でお送りしている作品でもある。神戸弁に限らずだけど、もしかしたら標準語よりも方言のほうが、普段の会話と子供相手の時とで言葉遣いの差が小さくなっているのかもしれない、と読んでて思った。 1巻まで読了

ハルロック

屁理屈と迷惑を「電子工作」で実現させる娘

ハルロック 西餅
名無し

かつてドラえもんの世界に登場した 「こんな道具があったらいいな」 という憧れの便利道具に近い性能のものが、 いまや「アイテム」「ソフト」「アプリ」「ツール」 などと様々な形で日常生活に登場し実現してきている。 すごく便利で、あれば助かるものが しかも結構お安く「買えちゃう」のが今の世の中。 そういう世の中に「電子工作」の需要はあるのか? そっちの世界には詳しくないので想像だが、 多分、ほとんど需要は無いと思う。 かつては夢の道具を自分の手で作る、 実現させる、という趣味的にも実利としても 素晴らしい世界だったのかもしれない。 だが今や、金と時間をかけてアイテムを作るよりも 買ったほうが早くてお得な時代だ。 勿論、作る楽しみというのは確実にあるだろうし、 無から有を生み出すことの価値もあるだろう。 だが、電子工作は今では自己満足以上の評価は得がたい。 「匠」だとか「職人」だとか、 「芸術家」などの称号を世間は与えてくれない。 そんな絶滅危惧種ともいえる趣味の世界の 「電子工作」を題材にした漫画が「ハルロック」。 凄く面白い漫画なんだが、凄いのは 電子工作という趣味的な世界を世に喧伝し、 価値や需要を拡大し再興させようという考えが 基本的にほとんどないだろう、ということ。 こういうのが好きな人もいるんだろうな、 くらいには思わせてくれるが、それ以上に こういうのが好きな人って理解できん、という思いや こういうのが好きな人ってメンドクサッと思わせる 部分が大きく、それを笑いにしている。 ギャグ漫画としては面白いけれど。 電子工作という趣味が自己満足的な 「屁理屈で成り立っている世界」ということを 尊重しつつ笑いにしている。 だがそれでいてこの漫画の読後感は悪くない。 主人公・ハルの電子工作に周りの人は振り回されるのだが、 わりと皆が悟りを開くが如く達観し、 結局は?ハルにキレたり絶縁したりせずに 暖かく見守り、つきあい続けるという ハートフル?な終わり方が多いから。 それでいいのか?と思いつつも ハルの周りの人達、みんな良い人だな~と ちょっと癒される。 なんか作者は、そんなこと狙っていないような気もするが。

微熱空間

初心者姉弟の、微妙な距離感。

微熱空間 蒼樹うめ
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

親の再婚で姉弟になる、亜麻音と直耶。きょうだいに過度な期待を抱く二人だったが……「思ってたのと違う!」初対面の異性と同じ屋根の下で過ごすドキドキと、家族としての距離感の双方を往き来する、悩める高校二年生の物語。 ----- 思春期の二人にとって、同い年の異性と「姉弟になる」は一大事。相手の呼び方ひとつとっても、なかなか前進せず、二話も話が作れてしまう。 二人は基本いい子なので、家族になろうと努力しつつも、相手を異性として意識する心に悩み、ジタバタする。 姉弟として時を共有し、互いの優しさを知り、家族としての信頼を深めるにつれて、却って相手への「別の」感情も募らせてしまう様が切ない。 この二人のままならなさに、亜麻音の親友・郁乃も加わり、事態は複雑になる。 亜麻音の隣は自分のものと思っていた郁乃。どんなに「親友」を積み重ねても、ポッと現れた男に一瞬で攫われてしまうことに、思い至った時……。 それぞれの苦悩が、二巻までで一通り提示され、振り回す亜麻音に、大人しく振り回される直耶という構図も定着して、安定の面白さ。 ここまで純粋に、恋愛未満のドキドキだけで構成されている作品も、最近では珍しいのでは? 初々しいラブが足りない、とお悩みのあなたに、今イチオシの作品だ。 三巻は2019年12月26日発売。ハマるのは今からでも、遅くない!

ウメハラ FIGHTING GAMERS!

求道者「ウメハラ」の自伝的マンガ

ウメハラ FIGHTING GAMERS! 梅原大吾 西出ケンゴロー 折笠格 友井マキ
六文銭
六文銭

昨今、eスポーツなるものが盛んになり「プロゲーマー」という職業の地位もある程度認知を得てきたのでは?と感じます。 本作は、そんなプロゲーマーの、日本人元祖ともいえる梅原大吾(通称ウメハラ)の物語。 私自身ゲームが大好きだったこともあり、もう20年以上前に彼がストゼロⅢの世界大会で優勝(しかも圧倒的強さで)したころから、カリスマとして君臨しております。 なので、当時に近しい時代のことを描いているこの作品は、ファンとしては垂涎ものでした。 しかし、そうではない人ーつまり、ウメハラのことはよく知らない、ゲームはやらない人にとっても楽しめると断言できる、2つのポイントがあります。 まず、ウメハラという人間に魅力があることです。 どの業界においてもそうなのですが、先駆者としてメイキングロードした人物というのは、 知識やスキルが卓越しているだけでなく、なにかしらの美学ともいえる強烈な哲学を持っていると思うのです。 つまり、ウメハラの凄さというのは「ただゲームがうまい」ことにとどまらないところなのです。 プロとして誰よりも強ければいいわけじゃない。 勝つために何でもしていいわけではない。 より多くの観衆を沸かせ、業界を拡大させていくことに責任と使命感をもち、その上でさらなる高みを目指すという姿勢に魅了されるのです。 その思考法や意志力はビジネス書にもなるくらい、業界を超えて影響を与えております。 この自分を厳しく律し、道を極める姿は、ただのプロではない。 求道者だと感じております。 次に本作が楽しめるポイントは、ゲームを通した人間模様がしっかり描かれていることです。 ゲームって一人でやるものという印象があるかと思いますが、舞台はゲームセンターなので色んな人がいます。 学生から普段何やっているかわからない人まで。ホントに多種多様なのですが、そこではゲームが強ければ、バックグラウンド関係なく受け入れてくれる謎の寛容さがあります。 特に実話を元にした作品だからか、フィクションにはない人物の深みがあって、これが良い味出しているのです。 そういう人たちと時にライバルだったり、時に仲間として切磋琢磨しあって、強くなることに貪欲な姿勢は刺激をうけます。 生活削って何かに打ち込んでいる姿は、対象が何であれ純粋に胸アツくなるものです。 画力も高く、ゲーム描写の疾走感と臨場感たっぷりに描かれた演出にも惹きつけられ、これまでの人物描写と相まって、勝利した瞬間にはある種のカタルシスを覚えます。 また、現代のように昔は、eスポーツ(ないしはユーチューバー)などで周囲に知られるような活躍の場がなかったわけですから、 昔はこういう人がいて、自分はこういう人たちに鍛えられたのだ、ということを伝えたいウメハラの強い意志を感じます。 今のeスポーツ業界の発展があるのは、こういう人たちのおかげなのだ、というのを伝えたいのだと。 そこにもプロゲーマーの域を超えた「ウメハラ」の神髄がある気がしてなりません。 本作だけでなく、youtubeとかの動画サイトで「梅原大吾」と検索すれば、奇跡ともいえるゲームのうまさとか、講演会などで彼の思考の一端が聞けるものとか、いくらでも出てくるのであわせて見て欲しいです。

Veil

3つの芸術の総合作品 美しさしかない本…!

Veil コテリ
たか
たか

全2巻を30分ほどで読み終えたのですが、まだ夢見心地です。あまりにも2人の関係性が、ファッションが、世界観が良すぎて、物語について分析的なことや自分の感想を進んで書く気になれないですね…どう頑張っても野暮なことしか書けない気がします。 なので「この本の構成」について書こうと思います。 https://j-nbooks.jp/comic/original.php?oKey=175 この本の発売を楽しみに待っている間、「まるで美しいシネマのようなコミック&イラスト集」という謳い文句で宣伝されているのを聞き、「結局漫画なのか、画集なのかどっちなんだ?」と謎だったのですが、読んで納得しました。 漫画のように「物語がコマごとに割った絵で語られるだけ」ではない。画集のように「文脈のない絵がズラズラ並んでいるだけ」でもない。 まさに「コミック&イラスト集」と表現するのが相応しい構成になっているんです。**しかも全編フルカラー…!** https://twitter.com/_K0TTERl_/status/1202975764280299520?s=20 まず驚くのが、表紙をめくるとすぐに目に入ってくる「見返し」や「扉」といった、一般的な漫画ではただ実用的でそっけない部分まで美しく、物語に入り込むための素晴らしい導入になっているところ。 そして各話の「幕間」に当たる扉ページもまた、読者の集中力を途切れさせないよう、世界観に沿って美しくデザインされています。 さらにすごいのが、**ストーリーの幕間にイラストと文章を挿入し、複数の表現方法を組み合わせて総合的に「彼と彼女」のことを描いているところ。** あらすじでは本書のことを「まるで美しいシネマのような」と表現していますが、映像・ストーリー・音楽の総合である映画を引き合いに出していて非常に的確だなと思います。 https://twitter.com/_K0TTERl_/status/1162700555304595457?s=20 そして読み終わってみて感じたのは**「Veilのことを世に出回っている多くの漫画と同じものとして分類できないな」**ということです。 **・今作を出すまで長期に渡り制作されている(2017年〜2019年に発表された作品が収録されている)こと ・アシを雇わず1人で作り上げていること(おそらく) ・フルカラーで高価格であること ・幕間(物語外の物理的な部分)まで世界観の一部となるようにデザインされているところ** こうした特徴を抜き出すと、日本のMANGAというより**「日本のBD(バンド・デシネ)」**と呼ぶほうが相応しい気がします。 (加えて言えば、日本の漫画の9割(※個人の勝手な体感です)は、商業的な成功に結びつきやすいエンタメ性の高い作品に占められています。そのため、ただただ美しさを追究した芸術性・文学性に富んだ漫画というだけで主流から外れてしまい、やはり日本のMANGAっぽくない。 長々書いてしまいましたが言いたいことをまとめると、**自分にとって「Veil」は、作品としてあまりに美しすぎるために漫画と呼ぶことに少し抵抗がある総合芸術**です。 百聞は一見に如かずなので、今すぐ手にとって読んでください…! (紙質と装丁がいいので紙がおすすめです…!) https://manba.co.jp/boards/112451 https://manba.co.jp/boards/112451/books/2 (2人を並べてあげたい)

綺羅星のメリル

絵が可愛い星座バトル漫画!

綺羅星のメリル 川口勇貴
たか
たか

星座をテーマにしたバトル漫画をジャンプで描くなんて、スラダンのあとに黒バスを描くくらい勇気がいることではないかと思うのですが、この読切は絵もストーリーもちゃんと独自の味を持っててよかったです…! 面白いかと言われると個人的には「うーん」という感じ。もう少し光星くんが普段どんな風にすごしているのか、人となりがわかれば父との確執&一時和解にもっと感情移入できたと思います。 一方で絵柄は、柔らかくて温かみがあって、とにかくキャラクターが可愛い!!そしてキャラデザがすごく素敵!(特に主人公が覚醒するところがカッコかわいくて良かった) **「キャラの魅力」という点では、堀越耕平先生に共通するものがある**と思うので、ぜひ読んで可愛さを味わってほしいです…! https://i.imgur.com/X7lXl06.png (『綺羅星のメリル』川口勇貴 より) >**【あらすじ】 >光星(こうせい)は幼馴染の女の子・早乙女と、同じ学校に通う高校生。ある日バイトに急いで向かっていると、自分のウール100%マフラーが突如生き物のように喋りだした。彼女の名前はメリルといい、太古の魔術師・ノアが宇宙のエネルギーを地球のために使うため生み出した「聖星座(アステラ)」の1人だった。 メリルは、JAXAに勤め妻の死に目にも帰ってこないという光星の父が死んだと告げ…。**

ひとりぼっちで恋をしてみた

「わたしは死んでも良い人です」

ひとりぼっちで恋をしてみた 田川とまた
Miyake
Miyake

■1巻 天然キャラのコミカルな恋愛模様かと思いきや、ハードなヒューマンドラマだった。 締め付けられる面白さ。 家出してからのストーリーが、一気に引き込まれる。 友達もいるし母親も余裕はないけど優しいし、すぐに家に帰ると思ったらそんなことはなかった。 主人公は人間関係で失敗し続けることで、本気で追い込まれていたのが身に滲みてわかる。 「私の馬鹿は、人に笑顔を強いる凶器」 「怒らせても苦しませても傷つけても、私の周りは優しい人であふれてるから、みんな取り繕ってくれる…」 「じゃあ私から離れるべきだって、決意した」 人を好きだからこそ、その人の自然な笑顔が見たい。 でも、自分にはそれができない。 迷惑ばかりかけてしまう。 言葉にすると陳腐だけど、文字通り「死ぬほど」悩む有紗が、いつか自分を認められるように。 デキる大人になる、以外の道も多分ある。 ■2巻 千晶との生活が描かれる。 有紗は不器用で言葉も拙いけど、行動力と絵の力で、人に何か強くを伝える力があるなぁ。 魅力的だと思う。 有紗が拓の息子にバットでぶん殴られて流血するのが強烈だったな。 どうしても好きな家族を取り返したいのが伝わった。 有紗も自ら殴られに行くのが衝撃だったな…体張りすぎ。 じーさんの息子の顔描いて、笑顔になって、のシーンは好き。 千晶のでかい笑顔の絵描いて、千晶が涙流すシーンもとても良い。