詩と哲学
魂の詩人こと坂口尚のおくるSF冒険活劇。 短編では漫画で詩を描くという前代未聞の試みを大成功させ一躍孤高の人になり、これがもうほんとうに凄まじい、色のない白と黒の漫画から色彩がほとばしり、部屋で読んでいながらそよ風がふわりとよせて、しかも草の匂いまでただよってくるという……。 そんな魂の詩人が長編を描いたらどうなったかといえば、哲学になった。詩と哲学はコインの裏表とよく言われるけれど、その言葉に反せず、白と黒のコマの連続がグイグイと真理に迫っていく。詩に書かれたものとは真理そのものであり、哲学とは真理に至る過程である。描かれた人物や風景はほとんどその意味を失って白と黒とに回帰していき、しかし、そのギリギリのところでかろうじて物語がすすんでゆく。