メフィストの漫画

あらゆる角度からミステリをネタにしたギャグ漫画

メフィストの漫画 喜国雅彦 国樹由香
名無し

本格ミステリ好きの「漫画家夫婦」が自分達が ミステリを愛して尊重して一喜一憂した経験と知識を元に ミステリを分析したりパロディ化したり、 褒め称えたり、重箱のスミをつついたり、ディスったり。 そういった、あらゆる角度からミステリをネタにした漫画の選集。 実際の経験談をネタにしたのだろーなー、という話や、 ミステリ作家と交友があって仲がいいから描けるんだろーなー、 という話も多い。 こういうマニアックなネタをエセやニワカのファンが描いたら どこかしら嘘くさかったり嫌味っぽい感じが漂うもの。 だがこのコミックからは全くそういう香りがしない。 自分はけしてミステリに詳しくないのだけれども、 それでも、喜国先生がホントにミステリ好きで、 (古書マニアでもあられるようで) マニアならではの読書歴や知識がなければ産み出せなかった であろう各短編漫画だろうということは感じとれます。 付け焼刃のミステリ知識じゃあ絶対にこんなギャグやオチの 発想は出来ないよな、と感心します。 喜国先生がミステリのイチ読者として経験した衝撃とか、 ミステリ作家と漫画家という同じくともに作家として、 自分の作品のネタやアイディアがかぶったりとか 見透かされたり、ばらされたときの、作家としての苦悩とか、 そのへんをギャグにしている話とか 読者(第三者)という気楽な立場から読ませてもらうと 堪らなく面白い(笑)。 しかしまあ恐ろしく効率の悪い漫画とも言えるでしょうね。 ミステリ・パロディのギャグ漫画一作、 それを描くために肥やしとなった喜国先生の それまでの読書量はいかばかりだったか? 一つのネタ、一つのオチが、どれだけのマニアックな時間を 過ごしたことから産み出されたカケラなのか? もしもこういう漫画を描こう、だから今からミステリを読もう、 などと考えてそこから取り組んだら、 絶対に完成しない漫画ですね。 まさに超ミステリマニアが優秀な漫画家でもあったから出来た 奇跡のマニアック趣味コラボ漫画(笑)。

三日月のカルテ

優しい研修医と、夜のデート11ヶ条

三日月のカルテ 七坂なな
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

治る見込みの無い難病で陽の光を浴びることの出来ない少女は、人生に絶望し、命を断とうとする。彼女を救ったのは、一人の女性研修医の提案……「お試し恋愛」だった。 興味本位で始まった、夜のデート。少女は11の約束を課して、研修医を試すが、研修医のひたむきさに次第に心動かされ……。 ♡♡♡♡♡ 11話の各話で「11の約束」を一つずつ紹介しながら、二人が恋人の真似事をしながら次第にその気になっていく様子が描かれる。 しっかりしているようで世間知らずの少女は、研修医をあれこれ振り回す。それを受け止める研修医はどこか頼りないが、それでも少女の為に懸命だ。 病院の個室でしっかりした、少し気難しい子供として過ごしていた少女が、研修医の懸命さに安心し、甘えたりする一方、不安や嫉妬の感情を知る……つまりは恋心を知る、その過程が甘やかで、闇の中での逢瀬の「秘密」感と相まってドキドキする。 院内学級があるほどの大病院ですら治療できない難病に、深く絶望した少女の魂を前向きに「生かす」為に必要だったのは、頼りない研修医の強い願いだった。2巻の最後で、少女にかけられた言葉に込められたその願いに、一気に涙腺が緩む。是非、その言葉まで読んでみていただきたい。

漂流教師

教育に携わるすべてのひとに読んで欲しい

漂流教師 パルコキノシタ
nyae
nyae

著者自身の経験を元に描かれているのですべてがノンフィクションではないものの、教員という仕事の実態をかなり赤裸々に語られている1冊かと。叶うならば、教育に携わる立場になって読んでみたかった。 この漫画では主人公の木下先生が教師として思うこと、問題だと考えることを頭と体を最大限につかって自らが思う正解へと導こうと努力しますが、そんな単純ではないのが教員の仕事。生徒の数だけ答えがあると言ってもいいくらいに、教員という仕事のやり方に正解はないようです。そしてそれを常に読者にも問いかけてきます。 この漫画の舞台は2000年くらいなので今から20年前。多分ですが、20年前と今を比べても教育界って殆ど変わってないんじゃないかと思いました。毎日のように発生する問題の数々を、すべて現場にいる先生たちに委ねられているという現実、仕方がないにしても重荷がすごすぎる。問題に向き合わずに適当に誤魔化して続けるか、一生懸命向き合って病むかの二択といっても過言ではなさそう。 著者の本業は現代美術家ですが、臨時教員以降もなにかしら教育に携わっているようです。そんな彼の目線で描かれる職員室のタブーとは…。ちょっと中途半端なところで終わっているのだけ惜しい。

キングダム

現代の働き方にも通じることを実感

キングダム 原泰久
名無し

この作品の主人公は下僕から這い上がって中華の大将軍になるために「いくさ」で命がけで戦っていく物語です。 マンガなので仲間、裏切り、ライバル、強大な敵などなど、物語を盛り上げる個性がある登場人物が出てくるのは当然です。 しかし、このマンガでは、現代の働き方にも通じる一つの問題提起も見えてきます。それは「帰属意識」です。 現代は転職してより良い報酬で働けるように「所属先」を変更して「今日の見方は明日の敵」になって「個人」が戦います。 その転職理由には「人間関係」がキーフレーズになって、リーダーへの不満、会社への不満につながって、 常にそこには「自分」が登場していないように感じます。 このマンガは「個人=武将=リーダー」であり、「それぞれのチームを引きいるリーダーの生き様」を見せてくれます。 主人公はその姿を見て、「自分の足りない部分を自覚」することで成長に変えていきます。 現代の労働者の働き方でも自分のリーダーに尊敬の眼差しと見方を持って、「自分との違い」を「評論家」で見ずに、 自分が実力で勝つ見方で接していけば、すぐに転職するようなことも馬鹿げたことに見えるかもしれないことに、 気づかせてくれるマンガだと思い、ずっと継続して読ませていただいています。