影絵が趣味
影絵が趣味
1年以上前
私事ながら、先日、夏の休暇に鎌倉へ遊びに行ってきました。一日じゅう海だ山だと方々歩きまわって、さいごは海岸の小さな橋に足をぶらんと投げ出して海と日没を拝みました。 帰ってきて翌日、そういえば、鎌倉といえば『海街diary』だったと思い立ち、本棚を漁って、およそ2年ぶりに頁をめくりました。連載のスピードがあまりに遅いのでしばらく放っておいたんですね。するとどうでしょう、鎌倉で目にした風景のあれやこれやが数頁に2,3度も描かれている。とりわけ、私がさいごに腰を落ち着けた海岸の小さな橋、これが何度も出てきてですね、しかも三姉妹それぞれの重要な逢瀬の場になっている。そのときは涙でぐしゃぐしゃになりながら読んでいたわけですが、後になって冷静に考えてみると、じぶんの無意識がおそろしいのか、すべては吉田秋生の手中にあるのか、それは分かりませんけども、とにかく場所の力というのは物凄いと感じました。この海岸の小さな橋以外にも、おなじ風景はたくさん描かれていて、しかも、違う人物がそこに居たりする。おそらく、それらの場所は、鎌倉において人がしぜんと足を止めてしまうところなのでしょう。 海街diaryを通して読んでいくと、とくに人の生死やお金にまつわる問題をめぐって、いかに人と人とが分かり合うことが困難か、というより、そもそも分かり合うことはできないけれどそれでも生きてゆく、というモチーフが繰り返し描かれているように思います。でも今回、鎌倉にじっさいに足を運んでみて、そんな人それぞれの胸の内の想いが、おなじ鎌倉の風景の下で人知れず交わっている、そんなことを考えると胸が熱くなってくるのです。
(とりあえず)名無し
(とりあえず)名無し
1年以上前
『ネイチャージモン』は、驚くべき快作である。 「肉」と「虫」についてのエピソードを、ここまで感動的に語ることが、他の誰にできるだろうか! 寺門ジモンの類まれな個性(奇癖?)も素晴らしいのだが、なによりも賞賛すべきは、刃森尊の漫画家として凄さだろう。 徹頭徹尾、「肉を食う」と「虫を採る」ということだけなのに、それをここまで熱く描き出すことができるのは、長い歴史を持つ少年漫画というフィールドで鍛え上げてきた、豊かで多彩な漫画力を使うことで、初めて可能だったのだと思う。 焼肉屋が開くのを店前で待つジモンの背中から「覇気」が漂っているシーンとか、少年漫画的世界以外では、絶対表現できないですよ。 騙されたと思って、1巻だけでも読んでいただきたい。 素晴らしく心躍る漫画時間を過ごせることを、約束します。 ただ、自分は、「まあ、これ以降も要するに『肉』と『虫』なんだろうなあ」と思って、3巻までしか読んでません。 すいません。 (全9巻であったことを、このマンバのページで初めて知った。「肉」と「虫」だけで、よく9巻も描けたなあ。もしかしたら、後半で別のテーマが……いや、絶対それはないと思うなあ)