まみこ
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2023/07/29
ネタバレ
強い、歪ませる力が。
自分の性格形成に影響を与えた作品、ってやっぱり色々ありますよね。 漫画だと、手塚治虫、諸星大二郎、星野之宣。 でも、たった一冊で、私の人生、と言うか、性的指向/性的嗜好/性自認を大きく歪ませてしまったのは、このどんと「奴隷戦士マヤ」です。 今となっては、ハッキリ分かります。 そして、それでよかったのです。 それが嬉しいとさえ思えるし。 私、成年エロ漫画、好きなんですけど、なかでも「ふたなり」が大好きなんですよね。 いや、世に出ている「ふたなり」作品は大抵読んでいるかもですわ。 それだけ流通量が少ないからなんですけどね…。 と言うか、「ふたなり」以外で好きなジャンルって、「強制身体改造」「強制肉便器化」「強制催淫」 「異生物寄生」「異生物排卵」とかなんですけど、結局、これ全部「奴隷戦士マヤ」で植え付けられた概念ですよね…。 私は、ずっと「奴隷戦士マヤ」みたいな話を読みたくて、彷徨っている流浪の民なのかもしれません…。 でも、作品読むと分かるんですけど、まだ生硬い身体に、ちょっと肉がついてきた感じの女子高生マヤ、が、強制的に青筋隆々としたそそり勃つ肉棒を身体改造で植え付けられてしまう、自分の内なる被虐の性と、その身体の欲に目覚め、どんどん辱めを受け入れてしまう、でもそれはその後に目覚める聖戦士としての試練だったのである。 って、めっちゃ興奮しません? 当時15歳の私の色んな箇所が歪むよなー、って言うか、今の15歳の子供に見せたって歪むこと必至です。 その興奮と歪みが、心の奥底で淀んでいて、今に至ります。 はいな、今となってはハッキリ分かります。 あの一冊が分岐点だったって。 結局、「奴隷戦士マヤ」は完結せずに終わってしまいます。作者、2019年に亡くなってしまいましたしね。 でも、それは、皆の心の中でマヤは生きていて、活躍して、蹂躙されて、貶められつつも、その後に救済される、ということなのかもしれません。 (すみません、少々正気を失っております)
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2023/07/26
ネタバレ
甘くて強い。
寂れた商店街、空き家だったパン屋、居抜きで開く、ケーキ店。 ここからはじまる、再生物語。 無名剛腕菓子職人、熊谷周作が、理解ある人々に担がれ、寂れたシャッター商店街に店を興し、そこから始める街の再生物語、と書くと噺は早いんですが、それでは始まらないし終わりもしないのです。 熊谷周作が、とにかくクセ強過ぎ超人であるわけですね。フランスで修行し、様々な菓子店を経由し、古くからの菓子の知識を備えている。計量しないでも、粉や砂糖の量を正確に測る。その日の空気の温度で、買いに来る客のオーダーを見越して、ロスの出ないように商品を作る。筋骨隆々、太極拳の達人にして、腕力も強い。曲がったことが大嫌いで、そのためには腕力を使うことも厭わない。曲がったことが大嫌いなので、その菓子にも、それが反映された、誰にでも美味しい味が提供される、しかも低価格で。 言っている意味が全く分かりませんよね?でも、こう言うストーリーです。 (読んだ人には自明ですが)この物語の登場人物、全員、機能不全家族の出自なんですね。 勿論、熊谷周作とて例外ではないのですが、彼は自ら発するパワーワード/パンチラインで、人々をねじ伏せ、巻き込み、家族の再生も生み出していくのです。 * 「まぁ漫画家とパティシエは似たところがありますね / かけがえのない何かになるため全力を尽くして戦う」(1巻第2話) * 「俺ですよ / あそこで菓子屋を始めようって馬鹿野郎は」(1巻第3話) * 「単語一つ一つ意味はなさなくとも繋げれば文になるように…」(1巻第5話) * 「誰かの誕生日にコンクールなんか出ていたらこれを作れないだろう!!」(1巻第6話) * 「プチ・セヴェイユは日本一の菓子店です」(1巻第9話) * 「揺るぎない信頼と矜持があるから店を開けました!!」(1巻第9話) 言っている意味が全く分かりませんよね?でも、こう言うストーリーです。
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2023/07/18
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カルト、ピカレスク、ラーメン。
土山しげるのグルメ漫画の中でも、今になってすれば「え?誰が読むの?」とも言える、随一のカルト作、2011~2012年連載作品。 飛ぶ鳥を落とす小規模ラーメンチェーン「天守閣」に入り込んだ主人公が、その頭脳と立ち振舞の物腰柔らかさで、人を操り堕し、時には蹴り落としつつ、実権を握り、のし上がっていくピカレスクロマン(悪漢物語)なのです。 土山しげるのラーメン漫画、と言うか土山しげるの描くグルメ漫画全般には、構造的な問題があります。 それは、「そも、土山しげる、食に執着がない」です。 ここら辺は『味いちもんめ 食べて・描く! 漫画家食紀行』のインタビューでも描かれていますが。…なので、出てくるラーメンが、あの連載時期時点ですらの、工夫が無さすぎて、全然美味しそうに見えない、って言うのは事実です。 ただ、食べる時に、必死に麺を啜ったり、食べたりする勢いの描写は凄くて、これは一つの発明であって、唯一無二だと思います。それが極まったのが『極道めし』なんでしょうね。 そういう前提が分かった今、読み返すと、作中、女子スタッフだけのラーメン店を作る際の最終面接が、「実際にラーメンを食べさせて、美味いと言う仕草や表情をやっていた者を採用する」と言うのは、フフッって感じでした。 主人公、兵頭新介は、この国の最高頭脳が集まる大学で、経営学の権威と言われる教授から薫陶を受けて、総合商社10数社から内定を貰っていたのに、半年の在学期間を残して退学し、そして小規模ラーメンチェーンに入り、壊しつつも再生させていくのです。 主人公の意図は?動機は?と言うのは、作中小出しにされるんですが、その出発点が何か、みたいなのは最終巻まで待たねばなりませんでした。 でも、そこから数話でヤマを作って、最終2話で全てをたたみにかける、ここら辺のヒキの強さって言うんでしょうか?流石は土山しげるの手腕です。 ラストは、令和4年7月8日を連想させる、実に後味悪い終わり方。ピカレスクロマンかくあるべし、と言う感じです。
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2023/07/12
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素敵なDIY、楽しい貧乏
売れない漫画家、山田ブンが、日々の生活をそれなりに、幼い頃からの友達、ぬいぐるみのホクサイと楽しく生きる! 料理と食べることに人一倍貧欲な主人公が、貧乏なりに自分で頑張って美味しい料理を作る! …と言うか、ボロいぬいぐるみのホクサイって、フツーにイマジナリーフレンドですよね?え?大丈夫? でも、途中で友達になる乙女さんも、それを許容してくれる優しい人間関係で包まれているので、全然嫌な気にはならないです。 表紙から分かるように、随所に魚眼レンズっぽい俯瞰だったり、広角レンズっぽい画像描写が出てきます。でも、実際に描写されるのは、貧乏と工夫とそれを楽しむ生活、と言う二枚底の建付けなんですね。 更に言うと、食漫画の基本である、女の子が「んー☆」とか言うシーンが無いです。と言うか、作って食べようかとするシーンで終わります。食べないんですね。これが一つのギミックであって、この作品を特別なものにしていると思うのです。 作品の合間に、作者、鈴木小波が実際に作った料理写真が載った補足ページが挟まるのですが、実はあんま美味しそうに見えない、と言う。これが作者の作画術の証明でもあるんですね。 …後、この作品の舞台は、足立区北千住。わたくしが今住んでいるところから、駅一つ、ちょくちょく見ている風景が出てきて、フフッって感じになります。
まみこ
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2023/06/13
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きれいに収まらなかったけど、それで良いではないですか
主人公、北丘蒼太の口癖「なんも、なんも」を、地で行く終わり方でした。 正直、打ち切りで、収録されなかった話もあるのですが、このエピソードとトピックで終わって良かったのではないですか?と言う感じです。 『新・蒼太の包丁』の出発点が目指したのは、「2020年の東京オリンピックを迎えるにあたって、インバウンドに向けた、銀座ならではの料理と接客、おもてなしの心」がありました。まぁ、現実はご存知の通り。悲しいことに、そうはなりませんでした。 なので、2021年前後の掲載エピソードを含む、第4巻から壮絶に迷走します。まぁ、現実が大きく迷走している以上、噺もそれを避けられなかったのです。 前作から、相変わらず、富田さつきはクソ女のままですし、主人公、北丘蒼太は、なんであんなクソ女のことが好きなん??という気持ちと、赤瀬雅美の優しさと健気さが交差する!!と言う、読者にはつら過ぎ展開。やっと終わってくれて良かった、と言う気持ち半分です。 後、最終巻で、赤瀬雅美が里帰りした時、普段は丁寧で優しい口調の彼女が、ガチな岡山弁になるのが良かったですね。
まみこ
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2023/05/28
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四季折々の美味しい料理
この漫画のタイトルから、「四季折々の彩り良い美味しい料理が楽しめるんだろうなぁ」と思った皆様! 残念ながら、そういう幻想は、第一話目から、木っ端微塵に打ち砕かれます。 鼻っ柱が強くて、高慢ちきで、妥協しない、女性主人公が、とにかく敵を作りながらも、実力でねじ伏せていくのです。 フードコーディネイター如月彩は、依頼があれば、依頼人の感情を平気で無視して、流行らない店も繁盛させるように作るし、そのためには、近隣の飲食店を潰すことも躊躇しない、というか、潰しにかかることですら、自分の能力の一環として、平然と行うのです。 週刊漫画TIMESのグルメ漫画は、基本誰も傷つけない、優しい人情噺がベースばかりだったので、最初読んだ時はびっくりでしたが、こう言うのがあってもいいかな、と言う感じです。 話にはトゲっぽいのもあるんですが、「料理店は美味しい料理を出すべき」と言う、と言う極々自然なベースが根底にあるので、全然嫌じゃないですね。 ラストは、如月彩の親父さんの無念を晴らすための、料理バトル正面衝突一騎打ちなのですが、でも、この絵柄でここまでヒリヒリしたバトル、まだ読んだことない人には是非ですわ。
まみこ
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2023/04/28
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悲しいまでに美しい、最後のワルツ
勿論、タイトルは、The Bandの解散コンサートを撮ったドキュメンタリー映画、"The Last Waltz"から取られています。 …のように、'70年代末辺りに、ロックやブルーズにハマった、中年、と言うか初老男性の音楽遍歴の自分語り、それも自己陶酔が過ぎて少々気持ち悪い感じ、で構成された奇妙な一冊です。 …とは言え、やっぱり画力は流石なんですよね。 楽器って、本当に銃とかバイクと同じ、精密機器なので、正しく描かないと、説得力無いんですよ。今となってはビンテージになったギターの、ペグやブリッジ、フレットの一本一本まで細かく描く、それに向き合う姿勢、全然イヤじゃないです。 Amazonのレビューでも書かれていましたが、「漫画ゴラクより、リットーミュージックあたりで連載した方が良いんでないの?」は、全くの正論ですわ。 実は、この単行本に収録されなかった、悲劇の最終回があります。 作者は、2巻に向けて、話を考えたりネームを切っていたのですが、打ち合わせの時に、担当編集者と営業担当に、「1巻の予約の数字が、目標に到達しなかったので、このまま打ち切りです」と非情な宣告を受け、心が折れてしまうのです。 「1巻の予約の数字で、その後の連載継続が決まる」と言う日本文芸社/漫画ゴラクのシステムを、ハッキリ意識したのは、これが最初だったのかもしれません。 でも、描写はされなくても、最後のワルツは、終わることなく、ずっと続いていくんでしょうね。そういう変な余韻のある一冊です。
まみこ
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2023/04/25
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ラーメンが食べたくなります
ラーメンを題材にした漫画には、構造的な問題があります。 「枯れている料理であるが故、そのためには表層的ではない旨さを描く、そのための手法/技術を、絵で説得しなければいけない」 …と言うものです。 え?めちゃくちゃ難しいですよ、これ! 生きることに絶望した三人、婆さんを亡くしたラーメン屋の爺さん、友人に裏切られてしまった女子高生、砂漠の中で遭難してしまったグルメ評論家、それぞれが一杯の塩ラーメンのために最後に集結する。 勿論、食べることと生きることは直結しているのですが、更に踏み込んで、もつれた人間関係も、自分の生きたい道を伝えることも、自然と紐解かれていく。そういうお話です。 そのためには、舞台を新櫃ウイグルの山脈と、群馬県の小都市を交互に行き来させることで、説得力を持たせているんですね。 今のグルメ漫画は、大概、作者や原作者が、実物をデジタルカメラで撮って、それを取り込んで加工、またはトレスするのが普通なのですが、この漫画はそれをやってないですね。そのシンプルでも、きちんと美味しそうに見えるのは、実物のシンプルだけど力強い一杯、これがないと成立しなかったでしょう。 麺を綿棒で打つ、出汁を取る、味見をする、湯切りする、と言う極々地味な作業の一つ一つが愛おしいのです。 …後、最後のオチとしては、最後までラーメン屋になることを反対していた、コジマの母親が、フツーにフロアのバイトとして入ってるコマでしょうか(?)
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2023/04/22
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魂の行方
ラーメンを題材にした漫画には、構造的な問題があります。 それは「(所謂)ラーメンハゲが、大体の結論を、もう既に言っている」ということです。 特に、味や技法については、『ラーメン発見伝』で、あたかも最初から既知であるかのごとく、スッと結論を述べるので、そこに至るまでの先人たちの試行錯誤と研鑽の積み重ねが、全く伝わりません。 別に、ラーメンは、友情努力勝利じゃないので、それでいいのだ、と言われそうですが、でもね、と言う感情もあります。 そこら辺のモヤモヤしたものを、一掃してくれるのが、このシリーズなのです。 1巻2巻は、名物ラーメン店創始者傑物人物伝、とも呼べる物で、とにかく熱意体力情熱気力で、ゼロから店を起こし、繁盛店に持っていきます。 基本的に、登場人物は、大概他業種から経験ゼロで修行もそこそこに挑んだ人達ばかりですが、全員「ラーメンが好き」「お客さんのよろこぶ顔が好き」と言う共通点があります。そして、大変な困難に面しても、それなりの成功を手にした後でも、それを絶対手放さない、と言う描写がなされます。 ある種の浪花節かもしれませんが、そうでないと得られない心の揺さぶりもあります。 さて、現時点(2023年4月)で、振り返るとどうでしょうか。 「ちゃぶ屋」はブランドごと消滅して数年経ちますし、「春木屋」も「なんつッ亭」も企業に買収されてしまいました。 なによりも、このシリーズで最も印象に残る人物、佐野実、山岸一雄、そして原作の竹内伸は、もうこの世にはいません。 だからこそ、この熱意体力情熱気力の結晶のようなストーリーの数々は価値がありますし、これからもその意味と価値が失われる事は無いのでしょうね。 今なら無料で全話読めるみたいです。 https://www.mangaz.com/series/detail/194931
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2023/04/21
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丼と人情
主人公、米野国崇は、農水省の下っ端役人で、落ちこぼれっていうか、グータラとは違うかもだけど、普段はイマイチ。彼と、新人女性役人、及川栞が組んで、農水省の肝入りプロジェクト、…とは名ばかりの、食堂「丼ぶり一丁」の運営を任される。 どう考えても、厳しい条件の中、米野国崇は、隠された才能、膨大な素材/料理知識と包丁裁きで、どんどん問題を解決していく。 米野の父親は一流名高い料理人だったが、彼は、自分と妹達を捨てた父親に対して、許せない感情を抱いていたのであった。 …どこかで見た設定ですね。ま、こう言う定番化したクリシェは、もうなくならないのでしょう。 ちなみに、原作の花形怜が、途中のコラムで1977年生まれと書いていて。と言うことは、アニメ版『美味しんぼ』が始まった時は、11歳なので、色々吸収したんでしょうね。 基本的に、一杯の丼ぶり飯で、困った人/困っている人の記憶を呼び覚まし、人間関係と感情を解放するという、食漫画のパターンというか、クリシェなんですが、蘊蓄も軽いものですし、嫌な感情は無いですね。でも、これでよく18話も持たせたよな、と言う感じも。 たった2年程しか存在しなかった月刊雑誌『食漫』の中でも、かなり長い連載だったかもしれません。 …後、やっぱり、国民にもっと米を食べてもらう、という「丼ぶり一丁」の目的の割には、米の味とか蘊蓄とか、全く出てこないのが、今となってはフフッて感じです。
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2023/04/13
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探偵と料理
作者、加藤唯史の代表作『ザ・シェフ』は、よく知られるように、手塚治虫の『ブラックジャック』のエピゴーネンです。 「エピゴーネンって何だよ、日本語でおk、物真似って言えよ」 …と言われかねないのですが、物真似とは違った、良さ、意味、味わいがあるのは、一回でも読んだことのある人なら、御存知の通り。グルメ漫画の名作です。 で、この『グルメ探偵りょうじ』は、正直言って、臆面もない『美味しんぼ』のエピゴーネン/パスティーシュです。 グータラ社員が新人女性社員がタッグを組み、困っている人のために向かい、時として天才的な味覚と手腕を使い、料理と会話でその困難を解決する、時に料理バトルもする。大きな存在の親父と、そのために、心労を患って早く亡くなった母親の名誉にかけて、父親にいつか復讐しようとしている。 …そのまんまじゃん。 とは言え、やっぱり違う味わいがあります。料理バトルでは結構な確率で負けますし、料理で人間関係や問題が解決しないケースもあります。いや、結構多いですね。後、探偵として割りと無能かも。 …ダメじゃん。 なのですが、それなりの面白さもありますし、是非読んで欲しいです。 …全然説得力無いですが。 今なら無料で全部読めますしね。 https://www.mangaz.com/series/detail/190681
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2023/04/11
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異世界転生、とは違った視点で
逆?異世界転生物語なのは、他のレビューで御存知の通り。 威勢は良い、腕っぷしは強い、女を抱かせるとすぐ堕とす、寿司の握りの腕前は超一流、と言う与兵衛が、ぼんやりしたおっさん耕一に憑依して大活躍の、人情活劇!なんですけど。 でも、もう一つの側面として、今の(所謂)「グルメ漫画」の基本である、「伝統の味ってなんだろう?本当に旨いものなのか?」と言う問いが根底にあって、段々そのテーマが重要になってきます。 寿司屋與兵衛の寿司は、元禄時代の魚のバリーションも少なく、冷凍技術もなく、マグロだって猫またぎと言われる下魚だった時代の、イノベーションであり、それがスタンダードになっていく時代の産物でした。 では、それが今の時代に美味しいと思えるのか?が浮き彫りになってくるのです。 持ち帰り寿司バトルは、そのクライマックスで、與兵衛ではなく、耕一がお客さんに食べて欲しいがために、江戸前のプライドをかなぐり捨てて、シャリもネタも変えるのは、本当に素晴らしいです。 …すみません、わたくし生まれが西日本の人なので、江戸前のシャリが好きじゃないんです(???) だから、ラストの大阪寿司と江戸前寿司のバトルが未完で終わってしまった、これは本当に喪失だと思います。