あらすじ名人・滝川幸次、挑戦者・氷室将介との間でついに始まった第57期名人戦。持ち時間無制限、一本勝負にて雌雄を決する特別ルールが採用された対局の序盤、滝川は「95手目、私の5五角で、きみの投了」と発言。対する将介も「96手目、オレの一手で、てめぇの投了だ」と言い返す。だが、その裏で将介は滝川の強さをひしひしと感じ、このままでは負けてしまう、と追いつめられていた…。
能條純一作品はまるで邦画を見ているかのような気分になる。 しかも昭和の作品…松田優作の「蘇える金狼」のような空気感。 その雰囲気と空気感は凄まじい。 その一方、現在連載中でマンガ好き達にこぞって好評である「昭和天皇物語」ではスピード感を封印してゆっくり目に見えるオーラの漂う神秘的な人物像を描いている。 能條先生は凄いのだ。 私は本作で初めて能條純一作品を読んだ。当時スピリッツで連載されていた中でも異色を放っていて、ベタ部分から見える圧が下手なホラー漫画よりも恐ろしく見えた。 とかいうと言い過ぎかもしれないけど、それだけ「本気で集中している人間」というのを描くのが上手かった。 本作では将棋の天才、棋士 氷室将介が巻き起こす嵐の物語。 ただ、周りの登場人物たちも負けていない。 なにはともあれ、鈴本永吉戦が終わる3~4巻あたりまで読んでみてほしい。