あらすじ第57期名人戦。2日目から沈黙を続け、まる4日間、一手も指さずにいた滝川が、ついに動き、一気に詰めに向かって突き進む。頭に「投了」の二文字がちらつきはじめたそのとき、将介の耳に自分を叱咤激励するじっちゃんの声が聞こえてきた。幼い頃、じっちゃんに「世界一の棋士になる」と誓ったことを思い出した将介は、最後の大勝負に打って出た!
能條純一作品はまるで邦画を見ているかのような気分になる。 しかも昭和の作品…松田優作の「蘇える金狼」のような空気感。 その雰囲気と空気感は凄まじい。 その一方、現在連載中でマンガ好き達にこぞって好評である「昭和天皇物語」ではスピード感を封印してゆっくり目に見えるオーラの漂う神秘的な人物像を描いている。 能條先生は凄いのだ。 私は本作で初めて能條純一作品を読んだ。当時スピリッツで連載されていた中でも異色を放っていて、ベタ部分から見える圧が下手なホラー漫画よりも恐ろしく見えた。 とかいうと言い過ぎかもしれないけど、それだけ「本気で集中している人間」というのを描くのが上手かった。 本作では将棋の天才、棋士 氷室将介が巻き起こす嵐の物語。 ただ、周りの登場人物たちも負けていない。 なにはともあれ、鈴本永吉戦が終わる3~4巻あたりまで読んでみてほしい。