かがみの孤城

原作ファンでしたが良かった

かがみの孤城
六文銭
六文銭
4ヶ月前

元々作家さんのファンだったこともあり、約4年前に本屋大賞受賞と同時に読んだ本作。 久しぶりに読んだこのコミカライズも、当時の思い出がよみがえり、とても丁寧かつキレイに表現されて大満足でした。 内容は、何らかの理由で不登校になった中学生7人が、部屋の鏡から通じる異世界のような謎のお城で出会い、あるゲームをするという流れ。 そのゲームとは、城の中にある「開かずの部屋」があって、その鍵をみつけるというもの。 しかも、鍵をみつけた人は何でも願いがかなうという。 城にいる狼姿の少女に招かれ、7人の冒険が始まる・・・と思っていましたが、「冒険」というか「人間模様」を描いた感じが本作のポイント。 上述のとおり、皆なんらかの理由で学校にいけず、城内でも似たような境遇から、時にこじれたり、時に支えあったり、ファンタジー要素がありながら、どちらかというと思春期の苦労を描いたヒューマンドラマの要素が強くて、ここが面白かったんですよね。 特に、いじめなどを苦に学校に行けなくなってしまった人が、城の中でできた人間関係(友人)を、自信や勇気に変えて、再出発する姿はグッときました。 また、ミステリー的な仕掛けも色々あって、例えば 7人同じ中学に通っていながら現実で出会うことができない とか 全員不登校だと思ったら実は1人、別に不登校ではない人がいた とか これらの、秘密が徐々に明らかになっていくストーリー展開は純粋に面白いです。 ネタバレされれば、すごくシンプルな展開なんですけど、 キャラクターがすごく魅力的だったからか、すんなり感情移入できてあっというまに読めてしまいます。 『この話が誰かの「城」のような居場所になればいい』https://booklog.jp/award/2018/winner/book という思いで、書いた本作ですが、 学校を行くことに悩んでいる人、またはその親はもちろんですが、それだけでなく人間関係に全般に不安を抱えている人に、希望を与えてくれる内容だと思います。 余談ですが、コミカライズの風花の設定が、現代風に変えたんでしょうかね。ここらへんが原作と少し違うかもです。

OH!MYコンブ ミドル

まさかの続編、そして1巻で終了

OH!MYコンブ ミドル
六文銭
六文銭
1年以上前

『OH!MYコンブ』好きだったんで、この続編には狂気乱舞しました。 しかも、ミドルって・・・。 昔の『OH!MYコンブ』ファンは、この続編にどう思っているか気になるところ。 自分的に一部アリでした。 表紙みた瞬間、ありふれたおっさん感に、一瞬 「うおっ!?」 てなりましたけど、1話目から相変わらず駄菓子を食べてて安心しました。 だけど、料理人にでもなっているかと思ってましたが、なっていない。 確か、コンブの家って定食屋だったと思うのですが、そこを継ぐわけでもなく、コンビニでバイトしている。(バイト・・・) メンメンを「元」恋人と称しているなかで、料理を辞めた経緯なんかも絡めて展開されるのかな?と思った矢先に終了。 特に背景が出てくることもなく消化不良で終わってしまった。 ここが残念でした。 ただ、昔の、登場人物も、それなりに登場してファンに嬉しい。 パイ助のyoutuberが一番しっくりきました。 むすびが社長になっているとかも、弁当屋で苦労していた不遇の過去を知っている身としては嬉しい出世。 リトルグルメから、おっさんの酒の肴向けにチューニングした料理もそれなりに興味深く読めました。 なので、1巻終了はちょっと残念でしたね。 とはいえ、小さい頃読んでいたマンガの登場人物のその後が見れるのがファンとしては嬉しいもの。 金田一少年もそうですが、今後もこういう形の続編が多くなりそうな予感で、昔からマンガばっか読んでいた人間にとっては楽しみでしかないですね。

一条さんは顔に出やすい

彼女が"吸血鬼"なのは2人だけの秘密。だけど… #1巻応援

一条さんは顔に出やすい
sogor25
sogor25
1年以上前

この作品はクラスのお嬢様・一条夜永が実は吸血鬼であることを知ってしまった男の子、真広俊を描くラブコメ作品です。 普段は同じクラスの友達にバレないようにお昼の時間になると一人でこっそり旧校舎に行って家から持ってきたネズミの血を飲んでいた一条さん。 そんな場面に偶然遭遇してしまった真広くんは、彼女とその秘密を共有するようになります しかし、普段動物の血しか飲んでない一条さんは人間の血に興味津々で、しかも真広くんにすぐ気づかれてしまうほどそれが表情に出てしまいます。 そんな感じでちょっと油断すると吸血鬼だとバレてしまうような言動をしてしまう一条さんと、一条さんに気を配りながら彼女と仲良くなりたい真広くんとの初々しさ溢れるラブコメ作品です。 1巻まで読了

サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと

極度の人見知り、ゆえに天才である魔女が学園潜入任務に挑む #1巻応援

サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと
sogor25
sogor25
1年以上前

主人公はリディル王国の魔術師の頂点である七賢人の1人に数えられる魔女モニカ・エヴァレット。 彼女は世界で唯一、魔術式を無詠唱で魔術を発動することができるため、「沈黙の魔女」という二つ名で呼ばれていました。 しかし、そんな彼女はの素顔は極度の人見知りで、彼女の代名詞である無詠唱魔術も実は人前で言葉を発することができなかったために身に付けた術でした。 そんなモニカが王国の第二王子の護衛任務を命じられたことで物語が動き始めます。 第二王子は全寮制の名門校に通う18歳ということで、モニカに与えられた任務は「第二王子本人にも気づかれぬよう彼を護衛すること」。 そんな経緯で、天才魔女だけど人とのコミュニケーションが苦手なモニカの、第二王子の通う学校への潜入生活が始まるという物語です。 1巻まで読了

紅灯のハンタマルヤ

異国から紛れ込む西洋の怪異を遊女たちが討つ! #1巻応援

紅灯のハンタマルヤ
sogor25
sogor25
1年以上前

舞台は19世紀初頭、鎖国中の日本において唯一、出島での貿易により異国との接触があった長崎の町。 この町には人やモノに紛れ、異国から“人ならざる怪異”が入り込んでいました。 この作品はそんな怪異たちから長崎の町を人知れず守る、丸山遊郭の遊女・菊花太夫と「かむろ(禿)」と呼ばれる遊女見習いの幼女3人、そして奉行所付の隠密同心である相模壮次郎の活躍を描く作品です。 江戸時代の長崎が舞台ということで、美しい和装や刀による戦闘に加えて異国から入り込んだ西洋の怪異や銃などの武器の登場と、和洋それぞれの文化が入り混じった独特の世界観が構築されていて、それを作画コストの高い緻密な絵柄で描いていく作品です さらに 物語が進むにつれて、怪異との戦闘では協力体制にある菊花太夫たちと壮次郎との微妙な関係性や、菊花太夫を純粋に慕っているように見える3人のかむろが抱える因縁など、ストーリーにもどんどん深みが出てきて、読み進めるごとに面白さが見えてくる、そんな作品です。 1巻まで読了

蓼食う君も好き好き

すこしふしぎ、だけどピュアな恋物語 #1巻応援

蓼食う君も好き好き
sogor25
sogor25
1年以上前

小さいころに母親がいなくなってから父親と2人暮らしをしている16歳の芳川ヒロ。 彼女は大人っぽい同級生の女子・遊木かりんに恋をしていました。 この作品はそんなヒロが父親と2人で行くはずだったキャンプに、道中で偶然出会ったかりんが参加することになる場面から始まります 好きな相手と一日一緒に過ごせることになりドキドキしっぱなしのヒロでしたが、その日の夜、テントでかりんと一緒に寝ているときに彼女は、かりんと”若いころの父親”が肩を寄せ合っているような場面の夢を見ます。 かりんに対して恋をしているのと同じくらい父親のことも好きなヒロでしたが、その夢のせいで父親に対するかりんの目線がどうにも気になってしまいます。 そんな謎の夢に惑わされながらもかりんを想う気持ちを止められないヒロの、すこしふしぎ、だけどとてもピュアな恋物語です 1巻まで読了

第七女子会彷徨

おバカで切ないSFファンタジーっていう要素のごった煮

第七女子会彷徨
名無し
1年以上前

基本的に高木さんと金やんのおバカな日常なんだけど、ベースの世界観がちょっとディストピアっぽいSFで、ついでに妖怪とか出てくるファンタジー要素もあってっていう、作者の「こうなったら面白くない?」っていうのが詰め込まれた感じがする 基本的におバカなのに、猛烈に切なくなる回とかがあって、結構好きな作品

東大くんと元ギャルさん~格差婚ロワイヤル~

二人だからこそ先々も困難を乗り越えていくのでは

東大くんと元ギャルさん~格差婚ロワイヤル~
Pom
Pom
1年以上前

想像の上いく面白さ。 秀太郎と真夏、真逆の二人。 だからこそ惹かれあって結婚に至ったのだと思うけど、そこに絡む姑が中々の癖あり。 あんなに嫌がらせされても、諦めずに立ち向かう真夏、凛として素敵だな。 これから同居が始まるとのこと。 どうなることやら、楽しみです。

空を歩く

くらもちふさこ先生の最新作「空を歩く」

空を歩く
かしこ
かしこ
1年以上前

弥生美術館で開催しているくらもちふさこ展とてもよかったです。展示の最後で6年ぶりの新作「空を歩く」の紹介もあったのですが、展示内容が充実しすぎて素通りしてしまった方も多いのでは?電子なら今からでも買えますよー! 脚本家を目指している女の子が電車に飛び乗ります。クラスメイトから「品行方正のあなたらしくて型通りなのよね」と言われたシナリオをコンクールに出す為に、目的の駅に到着する17分の間に直さなければなりません。しかし同じ車両の乗客の挙動や関係性が気になってる内に余計な妄想が広がっていきます。そこに例のクラスメイトが「私の良き人」と紹介した男性に似ている人が現れて… くらもち先生の過去作でもインターネットの仮想空間や花染町の住人など、限られた空間の中での自由自在な関係性が見られましたが、今回はたった数分の電車の中。しかし主人公の脳内では物語が飛躍していくし、主人公に元気がないことを見抜いていた男の子がいるなど、短編という枠を感じさせない広がりがありました。 展覧会でのお言葉で「自分にとって漫画を描くことはツール探しの旅だった」とあったのが印象的でした。くらもち先生ならでは世界が生まれたきっかけを少しだけでも知ることが出来たような気がします。

長い道

基本ほのぼの、たまに闇 ふしぎな夫婦生活

長い道
名無し
1年以上前

クズだけどどこか憎めないダメ男と、のほほんとしたおおらかな女性の夫婦生活を描いた作品。全体的にほのぼのとしてて好きです。荘介殿の女癖の悪さや道のふところの広さに呆れつつ、いっぽうでなんだかこんな生活いいなぁと思ってしまう。さいしょは道のことを快くおもっていなかった荘介殿がだんだん道に惹かれていく様子がかわいい。道のほうは基本的におっとりしてて、クズな夫にも優しいのだけれど、その裏で元カレへの執着があることを匂わせたり、父との関係にすこし不穏な気配を孕んでいたり、芯のつよいところを見せたりと、ときどき闇が垣間見えるようでぞっとする。ふたりの微妙な距離感はたがいの無関心の裏返しなのでは?とも思ってしまうような描写もちらほら…… ほのぼのしつつもどこか怖い、でもやっぱり癒やされる、素敵な作品。 小ネタなどもたくさんあるので、何周でもたのしめるのもグッドポイント♡

シスコンお姉ちゃんと気にしない妹

ママは百合同人作家

シスコンお姉ちゃんと気にしない妹
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
1年以上前

妹だーい好きな変態JKと鈍感な妹を中心とした百合ギャグ漫画の本作で、私がいちばん好きなキャラは、姉妹のお母さんです。 姉妹の仲が良すぎる事に疑念を持ち、観察を始めるお母さんは、その過程で封印していた過去を思い出します。 その過去とは、自分が「百合同人作家」であった事。 自分の娘達から百合妄想が止められないお母さんは、いけないと思いつつ湧き上がる妄想を原稿用紙にぶつける。姉妹を覗き見し、聞き耳を立てるお母さんは、決して百合に介入しないし親としてはちゃんとしている一方で、親の仮面の下に一匹の百合創作者を飼っているのです。 3巻の後半、お母さんの元に届く荷物に、爆笑と共に謎の感慨が! #マンバ読書会 #いいお母さん

永遠の一手‐2030年、コンピューター将棋に挑む‐

近未来SF将棋ドラマ!

永遠の一手‐2030年、コンピューター将棋に挑む‐
toyoneko
toyoneko
1年以上前

「神」とまで呼ばれた最強の名人がソフトに敗北したことで将棋人気が急落、大きな制度改革が行われ、将棋の対戦は、「人間+ソフト」のチーム戦に移行した…。 そんな、ありえたかもしれない近未来が舞台となる将棋SFです。 そんな本作の何よりの魅力は人間ドラマ! かつて「神」と呼ばれた元名人の羽内、 そんな「神」をも倒すソフトを作り上げてしまった天才プログラマー、 ソフトに頼らず戦いを続ける現名人増山、 そしてその娘の翔子。 それぞれの思いが交錯しながら物語は進み、感動のクライマックスを迎えることになります。 面白いし上下巻で綺麗にまとまっている名作なのですが、どうもあまり売れなかったようですし、諸々のランキングにも絡まなかったので、改めて紹介するものです。 発表時期がソフト不正疑惑の時期と重なってたというタイミングの悪さも一因でしょうかね…。 ちなみに、原作の伊藤智義先生は、大学教授でありつつ(現在は千葉大学)、「栄光なき天才たち」(の一部エピソード)の原作者でもあります。 週刊少年チャンピオン編集長(当時)の沢考史さんからの熱烈なラブコールのおかげで https://yayoi-2011.hatenablog.com/entry/20170609/1496962629 本作は週刊少年チャンピオンに連載されました。その関係で、栄光なき天才たち(電子版)のうち伊藤智義先生が原作をつとめている部分は、秋田書店から出版されています こっちも最高に面白いですよ!(私はロケット関連の一連のエピソード〔6巻〕が大好き)

おひとりさまホテル

これは…羨ましい

おひとりさまホテル
名無し
1年以上前

最近女性一人でホテルに泊まったり県外に旅行されてるyoutubeを見漁ってる者です。 最初っからホテルオークラ!?? 金にモノ言わせてるんじゃないよお〜! ただの僻みです、ええ。 羨ましいです。ホテルオークラで飲み食いして朝から風呂入れるの。 取材費になっちゃうんだろうな〜〜…いいな〜

ハニー・アンデッド

ハニー・アンデッドの感想 連載求ム!!!

ハニー・アンデッド
もち
もち
1年以上前

コメディとホラーとラブのバランスがしっかり良くて、この短い読み切りの中でも愛着の持てるキャラクター。 バーシルの不死の呪いだけじゃなくてバーシルとローサお互いが心に鎖を持っていてそれが緩んでいく様子がとても良いです! 可哀想なバーシル、でも冷たくて感情が読めなくてふとしたところでそれが出る。ヒロイン、ローサはコメディ(ツッコミ)担当なので明るい感じだけど彼女もふとしたところで影が見える。バーシルの影をローサがローサの影をバーシルが照らしている。いつか2人の影がきれいに晴れるところを連載で見届けたいのです!! 最後のローサを守るバーシルが最高にかっっっこいいのですよ!!そのあとも!!!キャーッてなる!! いでさやか先生の作品他も全部面白いです!

鋼の錬金術師

人は何かの犠牲なしに何も得ることなどできない

鋼の錬金術師
Nano
Nano
1年以上前

今改めて読むとしょっぱなから真理が書かれているんだよなあ。 錬金術の禁忌である人体錬成をし、体の一部と体全てを持っていかれた兄弟が、元の体に戻るための旅をする、という話。超ざっくりいうと。 言わずもがなめっちゃ面白い。絵がもうずーっとうまい。読みやすい。 色々と勉強になる作品だと思う。

My Sweet Home

母を、娘を呼ぶ声切なく

My Sweet Home
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ
1年以上前

百合分野で力のある作家達が、中村たいやき先生という「親子百合」分野のスペシャリティのもとに集まったアンソロジー。様々な内容の作品にはプリミティブな感情が共通して存在しています。 娘が母に抱く、お母さん・ママと呼び求める幼いままの愛着。そして母が娘に最初に抱く、小さな命を慈しむ感情。それが「恋」になるとは多くの人は思わないから「近親者となんて」と眉をひそめる。 しかし、百合好きなら皆「当たり前」なんて無いと知っている。だから普遍的な親子の情が「恋愛」に否応なくなだれ込むのも、柔軟な心で受け入れる……のかもしれません。 受け入れればそこには、強い感情と近すぎる距離感がある。背徳感も安心感も何もかもが強すぎる。私は一つひとつの物語から母を、娘を乞い、思わず呼ぶ声を聞いて胸が締め付けられるのでした。 #マンバ読書会 #いいお母さん

罪の花束

思ってた以上に血しぶきが舞う、ホラー?短編集

罪の花束
名無し
1年以上前

絵柄が少女漫画なのでそこまで描写がリアルなわけではないですが、まあまあ容赦ない話が多いです。ただ、ストーリーには伝えたいメッセージがしっかり込められていると感じました。1話目も、自分より弱いものに対する虐殺行為にただ興奮する少年の話ではなく、そこに至るまでに、世間の"自分以外の誰かの死"に対する認識を彼なりに冷静な目線でみた結果、行き着いたんだと思うと全く共感できないものではないな…という気持ちになりました。ここまで極端じゃなくても、罪を犯す一線を超えるか超えないかは誰もがギリギリの瀬戸際にいるのかもな、と タイトルにはホラーと書きましたけどホラーじゃないですね、多分。こういうのなんていうジャンルなんでしょうか。Kindle Unlimitedでサクッと読むには丁度いい短編集でした。

異類の友 空木帆子よみきり集

異類の友、になれるだろうか?

異類の友 空木帆子よみきり集
pennzou
pennzou
1年以上前

『異類の友 空木帆子よみきり集』は、そのタイトルの通り、主に『月刊フラワーズ』にて発表された、空木帆子先生による読切を集めた作品集です。 本作は、『月刊フラワーズ』で注目の3作家のコミックスを発売する「NEXT3フェア」という括りで発刊されました。本作以外の「NEXT3フェア」のコミックスは、大上貴子先生による『メイドのエミリーは今日も笑わない』、江平洋巳先生の『煌燿国後宮譚』。各コミックスの帯には、現在『フラワーズ』で連載されている大御所作家によるコメントが寄せられています。本作は田村由美先生なのですが、コメントが詩的かつ分析的で、その表現力にさすが田村先生……とおののきました。なお他作のコメントを担当されたのは、『メイドの~』が波津彬子先生、『煌燿国後宮譚』がさいとうちほ先生でした。各作品がどのような立ち位置に想定されているのかが、うかがえるような気がします。 空木先生および大上先生はフラワーズ新人作家(という表し方の是非については脇に置かせてください。なにせ空木先生がデビューしたのはもう6年も前の2015年12月号で、新人と呼ぶには憚られるところがあるのは確か……)にあたりますが、新人作家の紙の単行本が出るのは、2017年の笠原千鶴先生『ボクんちの幽霊』ぶりのことです。自分はかねてよりフラワーズ新人作家のコミックスが発刊されることを待ちわびていたので、今回のフェアで空木先生と大上先生のコミックスが日の目を見たのは、とても嬉しい出来事でした。 『異類の友』の話に戻ります。本作品集は6作品が収められています。ショートショートから長編まで幅広く取り揃えられており、色々な読み味が楽しめますが、自分が好きだったのは「アザミと芙貴の指定席」と「おしどりふうふ」の長編2作です。 「アザミと芙貴の指定席」で描かれているのは、人であるアザミと人ならぬ者を自称する芙貴という二人の交差です。『異類の友』という作品集のタイトルは、このような描写から取られたものと想像します。その他の収録作品も、全く性質の異なる二者をメインに据えた作品が並んでいるので、このタイトルは作品集のムードを的確に表していると思います。 「アザミ~」で特徴的なのは、人ならぬ者・芙貴だけでなくその対となる人・アザミもまた孤立しているように見える点です。互いが孤立しているゆえに惹かれてしまうというのもわかる、しかしながらその上で……という部分が描かれているわけですが、ここで発生する二人の関係性のあざやかさが、とても心地よく感じられました。 さきほど、『異類の友』というタイトルは、人と人ならぬ者、全く性質の異なる二者からきていると書きました。その点で、「おしどりふうふ」は他作品と一線を画しています。というのも、「おしどりふうふ」でメインに置かれているキャラクターは、二人ともロボットだからです。つまり、自分たち読者と作品中のキャラクターが異類、という関係になっています。 子細は省略しますが、「おしどりふうふ」の物語は美しく終わります。二人の間にある感情だけを見ればハッピーエンドです。しかし自分が突きつけられたと感じたのは、さびしさであり、世界への絶望感でした。異類から世界はどう見えているのか、自分は異類を友にできているだろうか……そういった問いかけがあったように思えたんですよね。読み違えかもしれないのですが、空木先生もこのエピソードを反語的に描いているような気がしてなりません。(反語的というか、絶望を描きつつも、同時にこの二人を絶対に幸せにしたいという意志があったのかなと思う。この二人を幸せにするということは、現実にいる似た境遇の二人たちを幸せにするということなので) 「おしどりふうふ」を読んで、この問いかけについて考える、それだけであれば難しさはそれほどでもない気がします。しかし本作品集には、異類を絶対的に相容れない存在として描いている作品も収録されています。それがこの問いかけに対する答えをより困難にします。世界、複雑すぎるし残酷すぎる。 結局は、ケースバイケースで考えて、その時に一番いいと思う行動をするよりほかなく、それこそアザミがとったような行動をする、ということなのかもと思います。 本作は、異類というテーマで統一しながらも、異なる切り口の作品を集めることで、作品集としての強度を高めています。それが面白さの一端を担っている一方で、今回収録された作品はテーマに沿って選ばれた一握りである、ということも示しています。空木先生のデビューが2015年ということから察せられると思いますが、本作の収録作品数は、これまで発表された作品の半分にも満たないのではないでしょうか。(ちゃんとは把握できていないのですが……) 空木先生の残りの作品が、そしてこれをここに書くのもなんですけど、他のフラワーズ新人作家のコミックスが発表されることを、自分は心より願っております。

めしに導かれしエルフ

エルフが飯を食べまくる

めしに導かれしエルフ
野愛
野愛
1年以上前

異世界の調査をするために日本にやってきたエルフのコロエ。 調査が目的のはずなのに、おでんにカレーに宅配ピザなど美味しい食べ物に誘惑され「くっ…殺せ!」状態でひたすら飯を食べまくります。 おでんでは〆のとうめしまで、ピザはコーラと合わせて一気に、回転寿司では魚以外のジャンクなメニューばかりと欲望にまみれた食べ方をしているのもポイント高いです。気持ちがいいですね。 異世界の方にも日本の飯の美味さは通じるんだなあ。コロエちゃんにいっぱい飯食わせたいです。

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