遡る石

人は誰しも「遡る石」なのかもしれない

遡る石
かしこ
かしこ
1年以上前

ぼっち死の館の齋藤なずな先生の最新作。 まず何十年も前にダムの建設現場で同僚と交わした何気ない会話を思い出すところから物語が始まるのがいいですね。不思議と記憶に残ってる会話って誰にでもあると思います。 アフガニスタンに用水路を建設した医師の中村哲さんを山の斜面を登っていく巨石だとすれば、自分はただの小石だけど丸くならずに尖ったままでいようとする男が主人公です。 息子を事故で亡くしてから自暴自棄になり独居老人となった男ですが、迷子のインコを飼い始めたことが転機になります。 ラストで川に落ちそうになったインコを助けようとして溺れる男と、中村さんの最期、そして巨石が粉々にされ小石となりダム建設の一部になる様子が重なります。 中村さんは偉人ですが、この漫画の主人公は特別に褒められるような人生を送っていた訳ではありません。しかし男が身を投げ出して小さな命を助けたことにスポットライトが当たることで、前作のぼっち死の館と同様に普通の人の人生への肯定を感じました。 もしかしたら彼ら二人とも人類誕生以後の大河のような歴史においては同じ小石なのかもしれません。そうなると本来なら火の鳥レベルの壮大なスケールで描かれるべきところを、こうして短編にまとめ上げられた齋藤なずな先生の力量に驚くばかりです。

ぼっち・ざ・ろっく!

たしかに名作

ぼっち・ざ・ろっく!
野愛
野愛
1年以上前

大人気すぎる作品は読むまでに時間がかかってしまう。でも読んでみると大体おもしろい。だから大人気なんだなあ…。 女子高生がバンドやる話ってくらいしか知らなかったので、主人公のぼっちちゃんが想像以上に陰キャで驚いた。本当に陰だった。 ギターテクニックはかなりのものなのにコミュ力がないからバンドに入ると下手くそっていう解像度が素晴らしい。ひとりでやるのとみんなとやるのは大違い、その難しさ楽しさに出会う成長物語なんだなあ…と感心してしまった。 女の子同士のわちゃわちゃだけでなく、音楽や仲間の素晴らしさが描かれていてグッとくる。 結束バンド、推せる。

スーパーの裏でヤニ吸うふたり

大人のかわいさ

スーパーの裏でヤニ吸うふたり
野愛
野愛
1年以上前

人気作だから読んだつもりで読んでなかったけど、甘酸っぱくてかわいいのに大人でよい…!! 疲れたおじさんサラリーマン佐々木さんとやさぐれスーパー店員田山(山田)さんの関係性がたまらなくよい。 ゆるく言葉を交わしているだけ、でも駆け引きめいている瞬間もあり、互いの存在に元気をもらっている2人。 田山と山田で気づくだろ!と思いつつ、佐々木さんのおじさん描写で気づかないことにリアリティを持たせてるのもうまいなあ。でも気づくだろ…とは思うけど。 山田さんのことは偶像崇拝みたいな感覚で、田山さんのことは1人の人間として表情までしっかり見ているから逆に気づかないのかな…と考えてみたり。 そんな細かいことはどうでもいいと思えるくらいかわいくて癒される作品です。

俺の恋心が弄ばれています

2人ともウブで可愛らしい内容だった

俺の恋心が弄ばれています
るる
るる
10ヶ月前

インフルエンサーやってるし元カレまでいるけど、 柚葉はウブで可愛かった。 元カレから逃れる為の出まかせでポチャの八千呂くんと付き合ってると公言するけど、外見のせいで周りからは笑われる。 でも柚葉はそんな中でも外見で判断しないで八千呂くんの優しさに惹かれていくのが良い😍 八千呂くんが変身して今までバカにしてたヤツ、ザマー。

木洩れ日のひと

贖いの果てに仄見える光 #1巻応援

木洩れ日のひと
兎来栄寿
兎来栄寿
約2ヶ月前

『宇宙を駆けるよだか』、『箱庭のソレイユ』、『僕のオリオン』、などでお馴染みの川端志季さんの最新作です。 基本的には集英社系のレーベルでキャリアを重ねてきた方ですが、前作の『世界で一番早い春』で『KISS』を経て祥伝社で連載を開始したときにはとても納得感がありました。 川端志季さんの作品が纏う、仄暗さを纏った空気感。そして時代感覚を捉えた鋭敏なセンスから生み出されるキャラクターたちは、『FEEL』系とも絶妙にマッチしていると思ったからです。期待通り、本作でも開幕からその持ち味を出していきます。 議員の娘である白瀬皓子が国民的人気アイドルグループの烏墨真弘を轢いてしまい、彼女はその贖罪として意識を取り戻さない彼の下で10年の月日を看病に費やしていました。そして、遂に真弘が目を覚ましたことで物語の歯車が回り出します。 ヒロインが重い罪を背負い贖罪をし続ける状態で始まる男女の関係というのは流石になかなか『マーガレット』系列では見られないもので、媒体の特徴も活かした建て付けになっています。父親が参議院議員でその名誉に奉仕するよう定められた運命の不自由さ、息苦しさの描写も流石です。 そういった抑圧がしっかり描かれてていることで、皓子が外の世界を知って束の間の開放感や多くの人が普通に味わう感情を得ていく瞬間のえもいわれぬ良さが際立ちます。 真弘は、皓子のことを恨んでおらずむしろ10年間も付き添ってくれていたことに感謝しているというのがポイントです。ふたりの穏やかならぬ事故から始まった関係が今後どのようになっていくのか。10年間のブランクの先で真弘はどう生きて行くのか。 また、彼らを取り巻く家族や同じアイドルグループのメンバーたちなど脇役も魅力的なのですが、その関係図も複雑に絡み合って今後ますます盛り上がっていきそうです。

真夜中のハイライト

千佳ちゃんがとにかく可愛い #読切応援

真夜中のハイライト
文旦漬🍊
文旦漬🍊
1年以上前

アフタヌーン四季賞で一般デビューした熊谷亜門/今井ミキオ先生の作品 透明感のある世界観・空気感、「昭和」と言いつつも舞台は現代で平成の少し前のような雰囲気、私と同じ年代の人たちには懐かしくいとおしく感じると思います 今井ミキオ先生の繊細で美しい背景と可愛らしい女の子、熊谷亜門先生の独特なテンポの会話の間と切なく清涼感のあるストーリーが見事に融合していて素晴らしかったです 「オチ」をあえてつけないで物語に幅を持たせつつ希望を感じさせるラストにするのを得意としている方なのでデビュー作の「大人はわかってくれない」や別名義の成年向け作品もぜひご覧ください

恋をしたのに世界は滅びる気配もない

本に救われた青年とふたりの女性 #1巻応援

恋をしたのに世界は滅びる気配もない
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前

東雲さんの初連載・初単行本……なんですが、画力的にもそれぞれ魅力的過ぎる女の子たちもそうであると感じさせない作品です。 図書館の本に救われ読んでいるときだけ自由でいられて生きてこられた原体験から、人と接するのが極端に苦手でありながらも司書をしている主人公の青年・天城。もう、その設定だけで深く共感せずにはいられませんでした。 その上で ″「好き」を手離さずいてくれたら…って この先どんな人生を歩んでも 「好き」をお守りに揚々と立ち向かってほしいから 俺も本が楽しみで生きれてるとこあるし…″ なんていうセリフまで出てきたら大好きにならざるを得ないではないですか。あまつさえ、ふたりのヒロインがどちらも非常に良いんですよね。 片や、天城が勤める図書館に夫の遺言を携えてやってきた謎多き美女。1話終盤でその謎の一端が明かされ、3話や巻末のおまけで更なる魅力が明かされます。綺麗さとかわいさを併せ持つだけではなく、食に貪欲なところや表情豊かで感受性も高く世界観を持っているところも非常に良いです。 一方、天城の幼馴染の空岡も、登場から僅か3ページで好きになる要素しか出てこないと思わせてくれる人物。3話では、そのかわいさが爆発します。何と言っても幼馴染ですので。幼馴染からしか摂れない栄養があります。 マンガなのでどちらか片方のルートしかないわけですが、これがゲームならどちらのシナリオも楽しみたい。甲乙つけ難い。 決めゴマの大胆さや表情の繊細な魅力も素晴らしいです。 それにつけてもやはり、根底に流れるのが冒頭1P目で描かれるような″想い″であるところに一番強く惹きつけられます。 巻末のおまけを見るだに、東雲さんはグルメマンガの才能もおありのようで。けんさ焼きは近々作ってみたいです。

CREWでございます!

華やかなだけではないCAの世界

CREWでございます!
たか
たか
1年以上前

とにかく面白いお仕事エッセイ漫画が読みたいなら、この「クルござ」をおすすめします! https://mangacross.jp/comics/crew/1 登場人物たちこそ架空の存在ですが、元CAの作者の体験をもとに普段CAさんがどのような毎日を送っているのか具体的に描かれています。 入社面接、ヘアスタイルの秘密、機内での栄養補給、合コン、入国審査、そして飛行機事故への対応訓練。 機内で素晴らしいおもてなしをしてくださるお姉さん・お兄さんたちが、その裏でどれだけハードな業務をこなし、乗客の命に責任を負っているのか。読めば読むほど尊敬の念に堪えません。 特に「過去に発生した飛行機事故にもし自分がCAとして搭乗していたら」というロールプレイ訓練の話を読んで、航空保安員としてCAさんが負う責任の重さに圧倒されました。 クスッと笑えるエピソードからシリアスまで。客室乗務員とは何かがよくわかる1冊です。

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