そばかすの少年

20世紀初頭、アメリカの豊かな森で番人をする心美しい少年の物語 #完結応援

そばかすの少年 竹宮惠子
ぺそ
ぺそ

竹宮惠子先生の1巻完結の作品ということで読みやすそうだなと軽い気持ちで手にとったのですが、 若草物語や大草原の小さな家に通じるアメリカの古き良き時代と大自然を感じさせる本当に素敵なお話でした! 本当の名前すら持たない、片腕でアイルランド訛りの少年「そばかす」が、林業で賑わうアメリカはインディアナ・リンバロストの飯場で森の見回りとして働く物語。 自分を雇ってくれた支配人に恥じぬよう正直に一生懸命働き、リンバロストの森に棲む鳥や虫など様々な生き物を慈しむそばかすの姿に、周囲の人々はみな心を打たれ愛情をもって接します。 材木泥棒と鉢合わせ目をつぶれと持ちかけられたのを毅然と断り、殴りあったそばかすを、偶然居合わせ目撃した支配人などは 「なんてヤツだ! 美しい……神のみわざそのものだ」 と心のなかで讃えるほど。どれだけそばかすが素晴らしい少年なのかがわかると思います。(ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが本編を読めば全くそんなことないです) 「鳥のおばさん」と呼ばれる写真家のご婦人のために森で見つけた生き物や珍しい出来事を報告したり、賢く勇気と思いやりのある製材会社の令嬢・エンゼルに叶わぬ恋心を抱いたり(エンゼルが沼地を歩いたあとに残った足跡に、そっと板切れをかぶせて大切に残しておくなんていじらしすぎる)、材木の窃盗団に立ち向かったり…。 そばかすのリンバロストの森での生活は充実していて目が離せません。 最後には、そばかすの出生の秘密が明かされ物語はハッピーエンドで幕を閉じます。 この『そばかすの少年』は、アメリカの女性小説家ジーン・ポーターが1904年に書いた原作『Freckles』を、『赤毛のアン』でおなじみの村岡花子が翻訳した小説をもとに竹宮惠子先生が1982年に漫画化したもの。 この時代の少女漫画って言葉遣いが古風で上品で本当に素敵だなと思うのですが、海外小説が原作ということで台詞回しが輪をかけて魅力的で原作の小説も読んでみたくなりました。 【原作】 https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309464077/

伊勢さんと志摩さん

親友女子のチャレンジ同居生活 #完結応援

伊勢さんと志摩さん トクヲツム
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

恋人と親友、何が違うのか?と考える。 恋?性欲?……特別感と言う事なら、親友もかなりの物ですよ?百合を「精神的な清い繋がり」という狭い定義で捉えるなら、時に親友は恋人と並ぶ位、百合的だと思うのは私だけでしょうか?(そういう関係性に、私はよくロマンシスという語を当て嵌めます) ルームメイトで同じ会社に勤める伊勢さんと志摩さんは、高校の時からの知り合いですが、親友になるのは社会人になってから。 要領が良くてもドライな伊勢さんと、仕事は出来なくても人当たりが良い志摩さんは、仕事でも日常生活でもナイスコンビ。恋は無くても互いが切り離せない二人は、うん「相方」ですね!(画像は1巻/CHALLANGE10より。周囲から見ても「相方」な二人) 毎日やりたい事、試したい事をチャレンジ表に書き出して、試していく日々は楽しそう。でもこれ、二人だから続くんだろうなぁ……と羨ましくもあり。 恋をしたい!という二人ですが、次第に二人の間には少しの、ズレや複雑さが見えて来る。最後まで読み進めれば、単純なユルフワお友達ではない、互いを奥深くまで受け入れた「親友」の、心震える感情交換が味わえます。 そして全て分かってから、また1巻から読み返してみると……えっ、この時彼女は何思ってたの?という感じで、かなり驚かされる造りになっています。その辺は是非、本編で確かめてみて下さい!

お金ためます!

Netflixで実写化してくれ!! ドケチ令嬢が小銭を稼ぐハイスクールコメディ! #完結応援

お金ためます! 忠津陽子
たか
たか

このあいだ新刊ページで見つけたのがこれ。レトロな絵柄でオシャレなデザインの表紙だったので邦キチ映子さんタイプの最近の作品かな?と思いきや、調べてみたらなんと1972年の少女漫画。 >「型破りなヒロイン、アニー・モーガンはカワイイのにケチでガメツイ女の子。モーガン財閥のご令嬢でお金持ちなのだけれど、父から20歳までに1万ドルためられない怠け者には、財産を譲らないと言い渡されていた。将来の遺産相続権を得るため、アニーは日々、小銭を稼ぎつつ、常にビジネスチャンスをうかがうのだった!」 というあらすじがメチャクチャ良かったのでソッコーで買ったのですが、期待通りの面白いコメディでした。 https://i.imgur.com/o6UDV1b.jpg https://i.imgur.com/AHhVyzl.png **【アニーの小銭を稼ぐ執念が半端ない】** 6歳のときから10年間お金をためているというアニーは、現在目標金額の半分である5千ドルまで到達。忍たまのきり丸ばりの商売っ気の強さで、24時間息を吸うように小銭を稼ぎまくっている。 宿題代行業で顧客を獲得するため成績1位を維持したり、イケメン・ラフティが溺れているときに救助用品を売りつけようとしたり(ちなみに5ドルだと藁1本、10ドルなら空気の抜けた浮き袋)と、ラフティから懐中電灯を借りて電気代を浮かそうとしたり、ドケチな商人根性は筋金入り。 あまりのドケチ商売人ぶりに、アニーのことを財閥令嬢だと知らない人も多い。 まったく恋愛要素がないこのお話の中で一応アニーのヒーローポジションというか、イケメン枠で登場するラフティもまた、アニーの正体を知らない。 **【アニーと似て非なる生き方 逆玉狙いのイケメン・ラフティ】** マイアミにあるアイスクリーム屋の息子・ラフティはなかなかスッキリした見た目に成績優秀・スポーツ万能という少年なんだけど、彼が人一倍努力して女の子が好む条件を揃えた理由というのがお金持ちの女の子を捕まえるため。 https://i.imgur.com/F7kfS3w.png 1代で財産を築いた父のように自分の力で1万ドル稼ごうとしている少女・アニーのカウンターが、逆玉のために自分磨きをするイケメンという構造が面白い。 ちなみにアニーはラフティのやり方にあんまり納得はいっていないんだけれど、決してムキになって相手を否定したりせず >「人それぞれやりかたがちがうわ とにかくわたしはわたしのやりかたでお金をためるの」 と、相手を尊重して自分のやり方を貫くところが素敵。 物語の中で、ラフティはことあるごとにアニーに金を巻き上げられる(たまーにやり返すところが面白い)んだけど、2巻の最後の方になってついにアニーが財閥令嬢だと知ってしまう展開がしっかりあるのでお楽しみに。 **【ドケチ・アニーの名セリフ集】** >「ようするに頭はかざりじゃないのよ」 ラフティの父のアイスクリーム屋を勝手に手伝い、全部売ってみせたアニーが言ったセリフ。もちろん、手数料としてしっかり3ドル貰っていった。 >「くやしい 1割もらって逃してやればよかった」 空港でトランクを拾ってやった相手から謝礼の1割をもらおうとしていたアニー。しかし相手は公金横領の犯人で警察に捕まってしまいこの一言。 >「わかった? お金ってのはこうやってもうけるものよ」 https://i.imgur.com/6FDVVBK.png 隣人の壁ドンに腹が立ったラフティが隣の部屋に文句を言いに行くとなんと隣人はアニーだった。驚いたアニーが貯金箱を割ってしまいお金を拾い集めるが5セント足りず、ラフティの身ぐるみを剥がしてまで探しているところにラフティの友達がやって来る。ラフティは焦るが、みんなは服まで借金のカタに取られたのだと誤解しアニーはすぐさま「3ドル返して」とのたまう。これを断れば当然、ラフティの紳士の名にキズがついてしまうわけで…。流石アニーの手腕は鮮やか。 **【Netflixで実写ドラマにならないかな…】** 「1万ドル稼ぐ」というテーマがキャッチーでわかりやすく、アニーとラフティの掛け合いが小気味よいので米ネトフリで旬のティーンの俳優を揃えてドラマ化してほしいくらい。 舞台を現代日本に変えてドラマ化しても面白そうなのでテレビ関係者の方に売り込みたい。(身の回りに関係者とかいないけど) アトム ザ・ビギニングみたいにリブートで再コミカライズとかもありだと思います…! メディアミックスで成功する可能性をビンビン感じる完成度の高い作品なのでたくさんの人に届いてほしいです。

明るい記憶喪失

え!?私が「する方」ですか!? #完結応援

明るい記憶喪失 奥たまむし
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

イェーイ私アリサ!目が覚めたら目の前に美人のお姉さんが。何か私、三年間の記憶失っててお姉さんは恋人なんだって!ウソーお姉さんめっちゃ好みだし私よくやった!でもどんな風に同棲してたか思い出せない〜! ♡♡♡♡♡ 概ねこんなノリで、アリサは記憶喪失をモノともしないポジティブさで、年上のマリさんとの同棲を再開。 関係を再構築しようとする二人に立ちはだかるのは、元の関係の「捻れ」。 年下で記憶の無いアリサを引っ張らないといけないマリさんが、何故かモジモジしている。どうやらかつてマリさんは「引っ張られる」方だった様で、キスの仕方すら忘れているアリサと向かい合って固まってしまう……みたいな様子は初々しくも焦ったい。 アリサはおバカだけれど超ポジティブ。真面目なマリさんを引き摺り回して、周囲も明るく認めさせて、関係を前進させる様が楽しくて気持ち良い。しかしこと「性」に限っては、十代の知識と恥じらい。そしてマリさんにガンガンエロい事していた「昔の私」に嫉妬する羽目に……可哀想だけれどウケる。 記憶喪失は重くは描かれないが、二人の捻れは意外と尾を引く。互いに好きすぎて、体の関係も持ちたいのに、望む形になれなくてあたふたするエロコメディは、見ていてあ゛ーーってなる(語彙力… アリサのおバカテンションにソワソワしっぱなしになる作品。お願いだから、二人のエロを暴露するのはやめてあげてよ!

東周英雄伝

圧倒的に美しく力強い水墨画のような漫画 #完結応援

東周英雄伝 鄭問 徳田隆
たか
たか

前に原正人さんが主宰される「世界のマンガについてゆるーく考える会」で知った作品。積読していたのをふと思い出し読んでみたところ圧倒されました。 昔の映画の看板のような画風の表紙からは想像できませんが、本編の作画は伝統的な中国の水墨画と日本の漫画表現のハイブリッド。 筆の強弱がとにかく魅力的で、力強い荒々しさと繊細な美しさの両方が楽しめます。 春秋戦国時代の故事がテーマなので全体的に古風で硬い雰囲気があるのですが、ところどころに如何に漫画っぽい表現がありクスリとさせられます。 (第二話の「おれの舌はまだあるか? 張儀」の、旅館のオッサンが竹槍を片手にパンパン打ち付けながらプンスカ憤ってるところとか大好きです) 表紙の「モーニングKC」の文字に驚いたのですが、こんな超絶技巧の美しい芸術作品のような漫画が週刊連載でモーニングに載っていたとは信じられません。すごすぎる。 先程Wikipediaを読み、鄭問先生(台湾出身)が2017年に亡くなられていると知り好きな人がもうこの世にいない寂しさを今噛み締めています…。 久々に「この作品に出会えて良かったな」と思える素晴らしい漫画を読みました。やはり積読は解消するものですね。

私の拳をうけとめて!

ライバル百合ままならぬ交際 #完結応援

私の拳をうけとめて! murata
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

元ヤンの武部がふと再会してしまった、高校時代の喧嘩相手・空森。あの時つかなかった決着つけるか!と公園で決闘。でも空森は条件を突き付ける。 「私が勝ったら、付き合って!」 ○●○●○ あっさり負けた武部は空森と、形ばかりの交際を始める。しかし付き合うって何すりゃいいんだ? 恋心が分からず、周囲の結婚ラッシュに焦る武部。それに付き合う空森も、アパレル店員だがお洒落以外はからっきし。かくして二人集まっては、とても恋人同士とは思えない、しょうもない事に興じる。いい大人の二人が戸惑う姿が常に可笑しい。 空森は武部のそばにいられれば幸せだし、それに付き合う武部も次第に空森といるのが心地良くなる。何をしてもつい白熱して、勝負になだれ込むお約束も含めて、怖い顔の武部と呆け顔の空森が軽いタッチの絵柄で割と平熱に描かれて、そこはかとなく笑えるコメディ。 それにしても互いの心が全く掴めない二人。理解り合う為にはやはり拳を……?いやいや、そこからが本番。二人の笑顔を確かめる為に……最終4巻、「4巻」まで読むべ! (すみません3巻が出た時、これで終わりなのかと一瞬思ってしまったのです……)

にいさまどなた?

ハンサムな三兄弟の中から実の兄を見つけるドタバタラブコメ♡ #完結応援

にいさまどなた? 庄司陽子
天沢聖司
天沢聖司

もうメチャクチャ最高のやつだった…!!マンバで1970年代の少女漫画を眺めていたらかわいい表紙と「にいさま」の文字が目に入り読んでみることに(兄キャラ大好きマン)。 孤児になった15歳のシシリーは、亡くなった母が貧しい時にルース家のお屋敷の前に捨てた息子のことを気に病んでいたことから実の兄を見つけることに。 シシリーはお兄ちゃんの可能性がある3人とともに暮らし始めるわけですが、このルース三兄弟がまぁ〜〜素敵…! https://i.imgur.com/5jxGPS8.jpg (『にいさまどなた?』庄司陽子) 美しいブロンドの長髪が似合う大学生で、毎日違う女の子とデートしているプレイボーイ長男のディンドン。 黒髪短髪、頭脳明晰で兄と同時に大学に入学する秀才でいつも難しい本を読んでいる次男のクルー。 ブロンド短髪で一番シシリーに年が近く、スポーツ万能で柔道クラブに入っている末っ子のアンディ。 全員実子として別け隔てなく育てられとても仲良しなうえに、イケメンで優しく特技を持っているんですよね。 イケメン兄弟が出てくる少女漫画やゲームなんて今どき山程ありますが、「兄弟仲がよく、格好良すぎずコミカルなところもあり、母親への愛情を隠さない」という親しみやすい温かみにあふれているところが最高でした。 朝に家を出る前にパパと息子たち全員がママにキスするところ…優しい世界で大好きです。 当然、この三兄弟を育てたルースご夫婦も素敵な方なんです。 「全員実の息子だと思っているから絶対に誰が養子か言わない」と最初に宣言し、シシリーを養子に取ることを申し出るけれどシシリーの気持ちを尊重し決して押し付けず、実の母への気持ちを考慮しつつ距離を縮めるために「エリザベスママ、セオドアパパと呼んでちょうだい」と頼む。 あの息子たちが育つのも納得の人格者で、あんな素敵な男の子に育ててくれてありがとうという気持ちになりました。 https://i.imgur.com/mhtkOM9.jpg (『にいさまどなた?』庄司陽子) ルース三兄弟がシシリーについて夜中話し合うシーン大好きですね…兄弟感がすごい。 結局シシリーを妹として扱うと決めてからは、ディンドンがお洒落と遊び担当、クルーが勉強担当、アンディが運動担当として面倒をみることになるのですが、その過程で無事順番に1人ずつシシリーを好きになってしまうのが微笑ましい。 そしてシシリーもまた、3人のうち1人に恋をすることになるのですが……結末はぜひご自分の目で確かめてください! いや〜〜もう、王道オブ王道な設定のはずなんだけど、新鮮にメチャクチャときめいてしまいました。庄司陽子先生すごい。

蕗ノ下さんは背が小さい

コビトも鬼も恋してカワイイ! #完結応援

蕗ノ下さんは背が小さい 依澄れい
あうしぃ@カワイイマンガ
あうしぃ@カワイイマンガ

タイトルになっている、花コビト属の蕗ノ下さんがカワイイのは、もうカバーイラストで分かりますよね?コビトで可憐な容姿で、頭に花を咲かせていて、更にしっかり者とくれば……間違い無いな! しかし彼女が一番カワイイのは、幼馴染の鬼ヶ島君(オニくん)と一緒にいる時。寄り添う安心感と秘めた恋心に、くるくる表情を変える蕗ノ下さん、愛らしい! そんな蕗ノ下さんの、素顔を引き出すオニくん。彼はオニ属と人間のハーフで、ヤンチャな子だけれど、蕗の下さんの前では安心した優しい顔だし、蕗の下さんが好きで簡単に赤面したり。怖い男子の素の表情、これまたカワイイ! オニくんの胸ポケットで悶える蕗ノ下さんを見て悶えるオニくんのダブル悶々、威力は2倍じゃない、100倍だ! つい「幼馴染」を強調してなかなか踏み込めない両片想いは、お約束のパターンではありますが、「早くくっつけよ〜」とヤキモキしながら次を求めてしまう、安定の中毒性。 異種属が集まる高校で、様々な恋模様あり、異種属恋愛の難しさや、差別意識なども読み応えのある内容で、二人の将来や様々なカップルの先行き等、もっと読みたかったのですが、3巻で完結。惜しまれますが、とぉーとぉーい素敵ラブコメでした! 蕗ノ下さんの妹達の物語で続編……読みたいなぁ。