初めて読んだ諸星大二郎作品だったのですがメチャクチャ最高のSFでした…!各話がメチャクチャ面白いのはもちろんのこと、独立した各話&幕間劇が緩く繋がりあって全体で1つの物語になっているところが本当に見事…!
遺伝子という壮大な命の物語に相応しい、新たな世界の幕開けと純粋な人間の時代の終わりを感じさせる締めくくりがなんとも言えない怖さと期待に満ちてて好き。
マジめちゃくちゃおもしろかったです。人間みんながこうなればいいのに。バイオの風に吹かれたい。
……各話感想………
【第1話】「野菜畑」
若い女の姿をした雑草がバイオ農場に生えてくる話。チキンキャベツという「キャベツ味の鶏」のおかげでこの世界観が一瞬で理解できた。
「雑草は抜くもんだぜ 雑草相手に抜くやつがあるかよ」っていうセリフが最高。
【第2話】「養鶏場」
ヒトの遺伝子が鶏に混ざってしまい「人面鶏」を飼育するのが一般的となった養鶏場の話。
鶏の鳴き声が人間の言葉を適当に発してるだけで、会話になってないとこがリアルで怖い。まあ会話になってても怖いんだけど…。
(1、2話と読んできて遺伝子というキーワードや、おばさん鶏やギャル鶏の会話の内容から遺伝子組み換えが話題になった2000年頃っぽいな〜と思って最後の奥付みたらドンピシャだった)
【第3話】「案山子」
バイオニシキという作物を守る旧型カカシロボットの話。新型ロボが来て7年、1匹のスズメさえ殺してない旧型ロボットは作物を食いに侵入してきた女の姿の鳥を匿ってしまう。
その鳥の正体は、人間の遺伝子を組み込まれた鳥ではなく、鳥の遺伝子を獲得した人間だったというオチが良かった。
【第4話】「百鬼夜行」
子供たちの間で広がる百鬼夜行の噂を突き止めようとする少年がバイオ地区の少女と出会う話。
百鬼夜行の正体は「あれ」になってしまった人間たちが、人間らしい暮らしを求めて火星へ旅立つため宇宙空港を目指す行列。
ミナコの切ない結末とハルオの未来を想起させる終わり方がすごくよかった。
【第5話】「シンジュク埠頭」
魚突きをして暮らしている少年が人魚と人魚を探すおっさんと出会う話。
様々な遺伝子を持つ難民たちが、自分の中にある海の生き物の遺伝子が目覚めることを祈って豊かな海に飛び込み死ぬ…。
結局あの人魚は、魚っぽい人間だったのか人間っぽい魚だったのか気になる。
【第6話】「風が吹くとき」
ここまで幕間劇にたびたび登場していたロボット・サトルが、妻を探す男と出会う話。
サトルは過去にミナコとも出会っていて「あれになる」という表現を覚えており、自分のことを「ロボットの遺伝子が混ざってしまった少年」だと主張するのが複雑。
美しい肉食獣となっていた妻。そしてバイオの風に吹かれ男の遺伝子も目覚め始めたがその動物は…。
バイオ戦争後、人間の中にヒト以外の遺伝子が発現する者が現れ始めた―。 彼らの多くは“荒れ地”と呼ばれる場所に惹き付けられていく…。遺伝子混在により起こる、恐怖と笑いの混沌劇、「野菜畑」「養鶏場」「案山子」「百鬼夜行」「シンジュク埠頭」「風が吹くとき」の6作品に、物語を補完する描き下ろし、“幕間劇”5作品を加え待望の単行本化!!
バイオ戦争後、人間の中にヒト以外の遺伝子が発現する者が現れ始めた―。 彼らの多くは“荒れ地”と呼ばれる場所に惹き付けられていく…。遺伝子混在により起こる、恐怖と笑いの混沌劇、「野菜畑」「養鶏場」「案山子」「百鬼夜行」「シンジュク埠頭」「風が吹くとき」の6作品に、物語を補完する描き下ろし、“幕間劇”5作品を加え待望の単行本化!!