職人の凄み
登場する職人それぞれもちろんそうなんですが、作品全体を貫く静かな熱量というか、凄みを感じました。淡々とひたむきに自分の仕事を突き詰めんとする姿勢に心が動きます。このマンガそのものが職人の仕事って雰囲気です。 個々の登場人物で言えば、自分の打った刀が不本意な使われ方をしたときの刀鍛冶職人の静かな抗議や、100年後を想像した仕事をする佐官職人。目の前のタスクをこなすことに躍起になりがちな普段の自分の姿が恥ずかしくなるほどです。 みなさん言うように絵も本当にすごい。熱した刀身を水につけた時の泡の感じが特に印象に残っています。 個人的には、静かな環境で紙で読みたいマンガです。おすすめです。
この作者の漫画を初めて読んだが、いったい何者なんだ……
トーチらしい漫画といえばそうだが、果たしてどれだけの知識、取材、リサーチがあればこれほどの解像度で江戸の街が描けるのか。陳腐なコメントになってしまうが職人たちの息遣いや染め物や木材の匂いなどさえも感じられるほど。
ただそれだけでなく、職業モノの短編としてとにかくストーリーがエモい。特に1巻後半の『左官』にはクリエイター物の魅力が詰まっている。江戸というひとつの場所と時代を切り取っていながら、悠久の時間をも感じさせる。
少し幼い顔立ちの女の子が主人公の話が多いのも特徴だ。職人漫画というやや堅苦しくなりそうな舞台がぱっと華やかかつ柔らかくなる、という一般的な美少女漫画的な効果も確かにありつつ、三者三様に奮闘する彼女たちの姿に、この時代にも色々な女性の生き方があったのだろうなと想像させられる。