大ヒット公開中の映画「ゲゲゲの謎」には水木しげる先生の戦争に対する考えが反映されているので映画を観る前に「総員玉砕せよ!!」を読むといいかもと言われたので気軽な気持ちで読んだらガーンとなりました。

戦地では兵隊の命が馬より軽かったというのも恐ろしいですが、玉砕に失敗したからという理由で上官が自決させられるのが本当に馬鹿馬鹿しくて腹が立つし悲しかった。軍医殿の「人間の生を人為的にさえぎろうとするのは悪だ」という主張が忘れられません。なぜ今も戦争しているんだろう…。

戦争の話はつい目を背けたくなってしまいますが水木さんの語り口は子供でも読めるものになっていますね。仲間から「お前の食い意地すごいな」と言われる水木さんにはニヤリとしました。これからバナナを食べるたびに思い出しそうです。

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総員玉砕せよ!! 他 【水木しげる漫画大全集】

これほど濃厚な味のする、淡々と進行する漫画はない

総員玉砕せよ!! 他 【水木しげる漫画大全集】 水木しげる
完兀
完兀

『総員玉砕せよ!』は巨匠・水木しげる先生が自身の戦争体験を基に描き切った長編戦記漫画だ(※新装完全版を読んでのクチコミです)。 等身大の兵隊さんたちの日常が淡々と描かれる前半から、その淡々さはあまり変わらないまま物語のトルクは増していき、やがて感動的というにはあまりにも悲しく、あまりにも空しい結末を迎えて話は終わる。私はこれを読み返す度に泣いてしまう。 巻末の筆者あとがきで「九十パーセントは事実です」と物語の最後を脚色したことが語られ、寄せられた解説ではそのことについて「(ラストのフィクション化によって)”事実を超える真実”を描くことに成功した」と評される。 とても同意できるのだが、私としてはあのラストは水木先生にこみ上げてくる”わけのわからない怒り”を最も強く紙にぶつける挑戦であり、戦死者の霊たちがさせた仕業ではないかと思う。そしてそのラストが”わけのわからない怒り”をどれだけ昇華させることに成功したかはわからない。確かなことは、強烈な読後感を読者に与えてくれるということだ。     ラストも印象的だったが、天国のようなところだと作中で触れられる舞台の美しい背景、とりわけ数度あらわれる鳥と花、及び天から射す光が印象的だ。 どれも日本人の想像する天国と結び付けられる存在なのだが、そういった観点で、鳥は物語から姿を消すタイミングが、花は背景に現れるタイミングが、天から射す光はコマとして使われるタイミングがなんとも思わせられる。特に花は、水木先生が大胆に意図して配したフィクションではないかと考える。泣けてくる。         それからこの作品と一緒に、ズンゲン支隊に関するNHKの戦争証言アーカイブの視聴も薦めたい。 水木先生の生証言は当然だが、堀亀二さんの証言なんかも必聴ものだろう。印象深いキャラクターである中隊長の下で戦争を過ごしたズンゲン支隊の生存者だ(1965年にズンゲン支隊の本を出版されてもいる。水木先生も資料としてあたったかもしれないが、この本は簡単には手に入らなさそうだ)。 最後に、些末な不満点が一つある。新装完全版『総員玉砕せよ!』はなぜ文庫サイズで発売されてしまったのか。同時期に出た『漫画で知る「戦争と日本」』と同様のA5サイズだったらどれほどうれしかったことか…

モリのアサガオ

死刑を執行する刑務官

モリのアサガオ
かしこ
かしこ

死刑という重いテーマと真正面から向き合った作品です。父親のコネで刑務官になり死刑囚と接することになった実直な性格の主人公・及川。凶悪殺人犯のことが怖いと感じるのは彼らのことを理解しようとしないからだ…という考えに至ってからは、積極的に彼らと関わり更生の道を一緒に模索するようになります。しかし心を入れ替えて自らの罪と向き合ってもすでに決まっている死刑からは逃れることは出来ません。いくら凶悪殺人犯とはいえ国が人を殺してしまう、命を持って罪を償うという死刑制度は本当に正しいのか、主人公は疑問に思うようになります。 登場する死刑囚たちの中でも渡瀬という男と主人公の物語を主軸に描かれていますが、個人的には食堂を経営していた家族を惨殺してしまった星山がメインの回が一番心に残りました。主人公が人形を手作りして家族というものを思い起こさせて自分の罪を認識させることに成功する訳ですが、改心してすぐに死刑が執行される展開にはなんとも言えなくなりました。そういう流れを組みながら親友と言えるまで深い仲になった渡瀬からの「死にたくない」という望みを主人公が却下したのには驚きです。最終的には疑問を持っていた死刑制度についても、死と向き合うことが自らの罪を反省するきっかけに繋がるんじゃないかという考えになっていました。 しかしモリのアサガオ2で、渡瀬の死に携わってから主人公が精神を病んだことが描かれていて、やはりこの問題は深い森の中にあるのだなと思いました。

そういんぎょくさいせよほかみずきしげるまんがだいぜんしゅう
総員玉砕せよ!! 他 【水木しげる漫画大全集】
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水木しげる厳選集 異

水木しげる厳選集 異

「わたしも水木しげるになりたい」──。作者とその生み出したキャラクターたちをこよなく愛する漫画家・ヤマザキマリが、広大無比な作品群からマイ・フェイバリットを厳選。代表作「河童の三平」「のんのんばあ」掌中の逸品から『ガロ』以降の諧謔と飄逸に富んだ傑作短編まで、選者ならではの視点で選び抜かれた、異境に遊ぶ奇譚集。水木ワールドとの出会いと愛を語る選者解説を付す。

水木しげる厳選集 虚

水木しげる厳選集 虚

「あの世もこの世も、過去も現在も未来も同時に存在するかのようにして、救われる」──怪優・佐野史郎の魂の遍歴は常に水木作品と共にあった。俳優としての指針ともなったゆるぎない世界観、幻想文学へ導いてくれた怪異譚の愉悦……「かたときも離れられない」と言わしめた傑作短編群から愛する「鬼太郎」シリーズの好編まで、ニヒリズムをユーモアに包んだ逸品を厳選。選者解説を付す。

漫画家たちの戦争  戦場の現実と正体

漫画家たちの戦争 戦場の現実と正体

原爆、子ども、銃後等のテーマ毎に戦争漫画を収載。手塚治虫、ちばてつや、赤塚不二夫、水木しげる等の巨匠から、『社長 島耕作』の弘兼憲史、『シティハンター』の北条司など第一線の作家、気鋭の若手まで内容も年代も幅広く収録。“こち亀”の秋本治の作品など出版社や掲載誌の枠を超えて収載した奇跡的なシリーズです。今こそ漫画で平和と戦争について考えてみませんか。 激戦地ラバウルで左腕を失った戦場体験のある唯一の現役漫画家・水木しげるが描く本物の戦場/出版社の枠を超え「こち亀」秋本治の作品を収録―― 【収録作品】 水木しげる『白い旗』 手塚治虫『大将軍 森へ行く』 楳図かずお『死者の行進』 古谷三敏『寄席芸人伝 噺家戦記 柳亭円治』(脚本協力・あべ善太) 松本零士『戦場交響曲』 比嘉慂『母について』 白土三平『戦争 その恐怖の記録』 秋本治『5人の軍隊』

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総員玉砕せよ! 新装完全版

総員玉砕せよ! 新装完全版

今こそ戦争を考える。太平洋戦争に従軍した漫画家・水木しげるが実体験を元に描いた未来へ残すべき傑作戦記漫画大ボリューム20ページ歴史的発見『総員玉砕せよ!』構想ノートを巻末特別収録太平洋戦争末期の南方戦線ニューブリテン島バイエン。米軍の猛攻で圧倒的劣勢の中、日本軍将校は玉砕を決断する。兵士500人の運命は? 著者自らの実体験を元に戦争の恐ろしさ、無意味さ、悲惨さを描いた傑作戦記漫画。没後に発見された構想ノートを特別収録。作品に込められた魂の決意が心に響く新装完全版!

決定版 ゲゲゲの鬼太郎

決定版 ゲゲゲの鬼太郎

日本を代表する傑作妖怪マンガ「ゲゲゲの鬼太郎」をはじめて一挙掲載する文庫の決定版、刊行開始!あらゆる妖異に立ち向かう鬼太郎の旅がここから始まる! 1巻には、南の島で西洋の妖怪と日本の妖怪が決死の戦いに挑む「妖怪大戦争」、天才少年によって大海獣に変身させられた鬼太郎の死闘を描く「大海獣」など、長編を含む全13話を収録。〈収録作品〉手/夜叉/地獄流し/猫仙人/おばけナイター/水虎/吸血木/ゆうれい電車/妖怪大戦争/大海獣/だるま/妖怪城/鏡爺巻頭カラー口絵を掲載。

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漫画で知る「戦争と日本」ー敗走記篇ー

漫画で知る「戦争と日本」ー敗走記篇ー

日本が起こした戦争のこと、知ってますか?子どもから大人まで。戦争について100分学習。1945年8月15日に終結したアジア・太平洋戦争での日本人戦没者は、310万人[軍人・軍属230万人(日中戦争を含む)、民間人80万人]。軍人・軍属戦没者230万人のうち、約60%が広義の餓死・戦病死と推定されるという(日露戦争の戦病死者の割合は26.3%)。近代の戦争では軍事医療の進歩によって、時代が進むにしたがって戦病死者数が減少するのが一般的なはずなのに…。ではなぜ日本軍は戦地で大量の戦病死者(餓死者)をだしたのか?行き過ぎた精神主義、古兵の許されざる私的制裁、深刻な食糧難、マラリアの蔓延、医薬品不足、栄養失調、神経衰弱、戦争神経症…従軍経験者・水木しげるが描き遺した日本軍の姿と戦場のリアル。「水木が作品の中で描きたかったのは、兵士たちの「死にざま」の無残さであり、その死を生み出した陸海軍の独特の体質だった。」解説:吉田裕(一橋大学名誉教授 日本近現代史研究)水木しげるが最下層の兵士として従軍し、爆撃を受けて左手を失ったニューブリテン島(ビスマルク諸島)を舞台にした戦記漫画を中心に7作品を収録。さらにアジア・太平洋戦争が始まるまでの歴史的背景から日本の敗戦までを解説したテキストと、戦地がひと目でわかる地図を併録。日本の戦争についてこの一冊でざっくり学べます。全世代が読めるよう基本総ルビ表記。素晴らしい画を堪能するための大きな判型。保存に適した良質な紙を使用しました。[漫画作品]・敗走記・セントジョージ岬 ー総員玉砕せよー・幽霊艦長・ダンピール海峡・レーモン河畔・地獄と天国 前編・地獄と天国 後編・戦争と日本[解説]吉田裕(一橋大学名誉教授)・水木しげるの戦争・連合軍の反撃始まる・日本軍の敗北、相次ぐ・日本軍の敗戦・中国に対する戦争とアジア・太平洋戦争の連続性

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漫画で知る「戦争と日本」ー壮絶!特攻篇ー

漫画で知る「戦争と日本」ー壮絶!特攻篇ー

今、漫画で”戦争”のこと、学び直してみませんか?子どもから大人まで。100分でわかる戦争の正体。1945年8月15日に終結したアジア・太平洋戦争での日本人戦没者310万人。その91%は1944年~1945年8月15日の間に亡くなっています。敗北が決定的であったにも関わらず、日本はどうして戦争を続けていったのでしょうか。そこにあった国力を無視した誤った戦争指導、補給を軽視した軍事思想、天皇という存在とその影響、日本的組織が抱えていた問題点、生き延びても敵前逃亡罪で銃殺、「処置」という名の殺害、掠奪、襲撃、最後のバンザイ突撃、大和魂…そして、ニッポンはなぜ特攻や玉砕を決行するに至ったのか? 従軍経験者・水木しげるが遺した凄惨な戦争マンガと、一橋大学名誉教授・吉田裕の詳細な解説で学ぶ、読みついでいきたい戦場とニッポンの姿。水木しげるが最下層の兵士として従軍し、爆撃を受けて左手を失ったニューブリテン島ラバウル、アジア・太平洋戦争で戦場となった中国・硫黄島・沖縄を描いた戦記漫画7作品に加え、戦地がひと目でわかる地図と、研究者による詳細な解説付き。多視点から日本の戦争について学べる一冊です。また、全世代が読めるよう基本総ルビ表記。素晴らしい画を堪能するための大きな判型。保存に適した良質な紙を使用しました。[漫画作品]・鬼軍曹~それは何だったか~・波の音・ああ天皇とボクの五十年・姑娘・白い旗・沖縄に散る ーひめゆり部隊哀歌ー・壮絶!特攻(貸本戦記漫画作品)[解説]吉田裕(一橋大学名誉教授)・孤立するラバウル・天皇と軍隊・中国での戦い・アジア・太平洋戦争と日本軍捕虜・敗戦、日本的組織の問題点戦争は人間を悪魔にする。

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悪魔くん復活 千年王国 【水木しげる漫画大全集】

悪魔くん復活 千年王国 【水木しげる漫画大全集】

貸本作品から7年の時を経て、悪魔くん三度復活!! 『週刊少年ジャンプ』に連載された『悪魔くん復活千年王国』より、「家庭教師の巻」から「いけ! 蓬莱島の巻」までを収録。コミックスではカットされ、雑誌掲載時でしか見られなかった各話扉ページも完全再現。万人に幸福を与える理想国家、千年王国を建設するため、悪魔くんが立ち上がる! ★解説「水木しげるの美男」山上たつひこ(漫画家)

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