最高クラスに近いくらいの面白さ
わたしが贔屓にしているマンガ家である土田先生と、元スタージョッキーである田原さんのタッグによる競馬マンガです。駄作のできようがありません。 前半4巻くらいまで一話完結のギャグものなのですが(しかもさすが土田先生のギャグは面白い)、後半にいくに従って、かなりレースの奥深いところまで描いてくる本格競馬マンガに変身していきます。 さすが元超一流ジョッキーの原作(というか監修)が入っているだけあって、必殺技などのファンタジー路線ではなく、徹底してリアルなスポーツとしての競馬が描かれており、読み応えたっぷりです。 出場している全ジョッキーの位置どりや、その時々で考えていることなどが、すごく丁寧に描写されており、競馬が好きな方はまず間違いなくどハマりすることができると思いますし、昨今のソシャゲブームで競馬を見始めたよって方も、深く競馬を知ることができるきっかけとなることは間違いないと思います。 そういった意味で、完全に☆5でいいマンガなのですが、一点、ちょっと特に後半ジメッぽさが過度になりすぎてしまっていて、そこが個人的な好みに合わなかったので、一応4にしておきました。ジメッとした部分は土田先生の持ち味でもありますし、それが熱さや感動につながることが多いのですが、本作品の終盤は少しメメしく写ってしまいました。個人の感想ですが、悪くいうつもりは本当になかったです。すいません。
この作品の原作である田原成貴氏は80年代のトップジョッキーの一人で、大胆不敵な騎乗と派手な言動、落馬事故以降は精彩を欠くも第一線で乗り続け、武豊の登場以前は天才の呼び声も高く愛された騎手と聞いている。
ただその派手さ通りに破天荒な人物であったらしく、現役時代もマスコミに発言を切り取られたり野放図な発言で度々問題を起こしており、引退後にも度々問題を起こし、最終的に不祥事で競馬界から追放された人物である。
そんな田原氏は騎手以外にも文筆業や漫画原作等、様々な分野に手を出しており、この作品は田原氏が手掛けた競馬漫画である。
ストーリーは主人公の平凡なダメジョッキーがまぐれでダービージョッキーとなったり初期はギャグ路線だが、徐々に人や馬との出会いを通じて成長、最後は自分自身の実力でダービージョッキーになるというもの。
自分は思いっきり時代がズレているので、当時どういう扱いだったのかは分からないが、後半からの騎手たちのドラマや技術論は流石トップジョッキーと言わせる物なのだが、一番この作品で恐ろしいのは序盤のギャグ部分だと思う。
武豊氏も漫画原作としてダービージョッキー等を手掛けているが、やはり騎手や競馬そのものの部分は熱いストーリーなのだけど、職業上書けても不思議じゃないと思えるのに、この作品のギャグはどんな騎手生活を送れば思いつくのか全く想像できないようなのばかりで、願掛けで怪しい幸運グッズや宗教に頼りまくるというのはギャンブルとしての競馬を考えると思いつく事もあるだろうけど、騎乗馬の営業の為にホモヤクザに尻を奪われかけるとか、何喰ったらそんなの思いつくのか分からないギャグにとにかく驚く。
みどりのマキバオーなんかもギャグは有るけど、そもそも本業漫画家でギャグ出身の作者と、あくまで本業騎手の作者の漫画原作でこんなギャグがポンポン出てくる序盤の方こそ田原氏が天才と呼ばれていた理由が何となく察せられる。
後半の騎乗技術や駆け引きやホースマンたちのドラマも見応えがあって、非常に面白いし、特にマスコミにある事ないこと書かれてしまって処分を受ける場面は経験者だけに真に迫ってるが、これもある意味描けて当然に思ってしまうのに、序盤のギャグはなぜ描けたのかさっぱり分からない。
自分はあくまでライトな競馬ファンに過ぎないが、騎手としての天才は間違いなく武豊だろうけど、この作品を読むと天才という言葉の意味を考えてしまう。