皆川亮二の短編集!
普段長期連載作家として名を轟かす先生が出す短編集ではよくあるんですが、色々と試行しているのが面白いんですよね。 こちらも例に漏れず色々遊んでいます。 『進撃の巨人』の諫山創先生とのコラボ読切や、3話完結作品のS.O.L、更にはサイレント漫画などもあり、どれもインパクトあってよき。
『スプリガン』『ARMS』などのヒット作で知られる皆川亮二、初の短編集。表題作の他、『ユーキャンドゥーイット?』『S.O.L』『奪還』、諫山創原作の『the Killing Pawn』の全5作を収録。
それぞれの短編のあらすじと感想を書いてこうと思います。
まずは短編集のタイトルにもなっている前後編作品「転送者」から。
①「転送者」
未来を変える研究者となるヒロインを巡って20年後の世界から殺し屋とそれを守るボディーガードが「転送」されてくる話。作中でも突っ込まれてますがざっくり『ターミネーター2』だと思ってもらえれば話が早そう。
ヒネリがあるのは実体がタイムトラベルしてくるのではなく、「転送者」の意識だけがその時代の人間の体に宿るところ。おかげでT2のトンデモロボバトルの代わりに人間の限界を超えたスタイリッシュな殺し合いが見られます。
転送者の神覇玲二(こうはれいじ。すごい名前だ)の転送先はいじめられっ子の高校生遠野くんの体。彼の人格・振る舞いが急に変化したことで周りとの関係も変わるのが面白かったです。
『スプリガン』の次の連載ネタとして描かれたようですが、彼がさまざまな人に転送されることで歴史を守りつつ多くの人の未来も変えていく…というのがコンセプトだったんじゃないかなと想像されますね。
しかしながら皆様ご存知のとおり、本作ではなく『ARMS』が連載されたというのが実際の歴史。連載にならなかった理由は皆川先生の解説にもありますが、これから読まれる人は何故なのか考えながら読んでみると面白いかも。