②ユーキャンドゥーイット?
皆川亮二が野球を描くとこうなる!という漫画。
名門校で万年補欠捕手の高校球児・新田が夜の墓で出会ったのは怪しくも異常に元気のいい中学生屋柱。投球練習に付き合っていると屋柱はメキメキ実力をつけていきます。皆川マンガによくいる天才くんの話か…と思っちゃうのは高校生になった屋柱と新田の直接対決を見届けるまでは待ってほしい。
この凡才と天才の戦いの行方は絵も相まって非常に鮮やかです。そこからもう一段あるオチも素敵。
それぞれの短編のあらすじと感想を書いてこうと思います。
まずは短編集のタイトルにもなっている前後編作品「転送者」から。
①「転送者」
未来を変える研究者となるヒロインを巡って20年後の世界から殺し屋とそれを守るボディーガードが「転送」されてくる話。作中でも突っ込まれてますがざっくり『ターミネーター2』だと思ってもらえれば話が早そう。
ヒネリがあるのは実体がタイムトラベルしてくるのではなく、「転送者」の意識だけがその時代の人間の体に宿るところ。おかげでT2のトンデモロボバトルの代わりに人間の限界を超えたスタイリッシュな殺し合いが見られます。
転送者の神覇玲二(こうはれいじ。すごい名前だ)の転送先はいじめられっ子の高校生遠野くんの体。彼の人格・振る舞いが急に変化したことで周りとの関係も変わるのが面白かったです。
『スプリガン』の次の連載ネタとして描かれたようですが、彼がさまざまな人に転送されることで歴史を守りつつ多くの人の未来も変えていく…というのがコンセプトだったんじゃないかなと想像されますね。
しかしながら皆様ご存知のとおり、本作ではなく『ARMS』が連載されたというのが実際の歴史。連載にならなかった理由は皆川先生の解説にもありますが、これから読まれる人は何故なのか考えながら読んでみると面白いかも。
②ユーキャンドゥーイット?
皆川亮二が野球を描くとこうなる!という漫画。
名門校で万年補欠捕手の高校球児・新田が夜の墓で出会ったのは怪しくも異常に元気のいい中学生屋柱。投球練習に付き合っていると屋柱はメキメキ実力をつけていきます。皆川マンガによくいる天才くんの話か…と思っちゃうのは高校生になった屋柱と新田の直接対決を見届けるまでは待ってほしい。
この凡才と天才の戦いの行方は絵も相まって非常に鮮やかです。そこからもう一段あるオチも素敵。
③奪還
舞台は第二次大戦下のドイツ。ティーガーに乗り込むドイツ兵士のチームが連合国に制圧された教会を取り戻す戦いが描かれます。解説でも少し触れられていましたが皆川版ガルパンというところでしょうか。『D-LIVE!!』のアクションパートをずっと読めるような至福。
なんといっても最大の魅力はセリフや擬音を一切使わずサイレントで描かれたことでしょう。まるで映画を見ているかのようなアクションが描かれる皆川作品ですが、本作はとりわけ戦車の駆動や戦闘描写がより際立っている感があります。戦闘の結末も文字情報がない分映像的な美しさがすごい。
ビッグガンガンに掲載された作品だというのも面白いところです。皆川先生がガンガン誌上で輝く世界線、いつか見れる時が来るのか…。
④S.O.L
皆川作品の中でもしかしたら最も一般知名度のあるキャラクターかもしれない最強の母親こと『ARMS』の高槻美沙(主人公の前で無残に殺されると思った次の瞬間拳銃で相手の頭を吹き飛ばしてる画像の人)。
本作のヒーローもその系譜に連なっているのではないでしょうか、そう「おばさん」です。名前も明かされないのでおばさんとしか言いようがないのですが、ママチャリを斑鳩悟のように駆る姿がキマってます。
このおばさんがヤバい案件に巻き込まれた超絶ツイてない冴えない主人公を守り抜くぞ!
高槻ママは美人で優しくて超強いというファンタジー盛々のキャラクターでしたが、本作のおばさんは見た目はただのおばさん、言動もおばさんです。それでも依頼人を守り励ます姿は紛れもなくカッコいい、カッコよさとは何なのかを原液でお出しされたような感覚になります。
名前も不明、一切のバックグラウンドも説明されない、ヤバそうな仕事を引き受けてそれを捌く異常な実力の持ち主だという一本槍だけで勝てるのはやはり皆川節の妙味。皆川節は全てを解決する。
ちなみに皆川先生は長ネギが苦手らしくて、そこから発想して本作が生まれたそうです。もうわからん。
⑤the Killing Pawn
『テニスの王子様』でいまだに鮮明に覚えているシーンがあります。タカさんが石田(108式まである人)の波動球を喰らって何度も客席に吹き飛ばされるも、最後の力を振り絞って返した一撃が石田の腕を骨折させ勝利する回です。
どうにか石田を棄権に追い込みましたが、タカさん自身も相当流血していたので一歩間違えば自分が棄権するどころか、命に関わる可能性もあったのではないかと思います。(実際阿久津にいたっては「死んでこい」と発破をかけていました)
自分は将棋は詳しくないのですが、タカさんの試合から推測するに、将棋も対局中に対戦相手が何らかの理由で対局続行不可能になれば棄権試合となって勝利出来るのではないでしょうか。
原作の諫山創先生もそう考えたようです。
そして皆川先生も納得したみたいですね。
主人公の力動歩は「歩」だけでプロ棋士を倒す実力の持ち主。
多くは語りませんが、彼が二歩のミスを犯すところからが真骨頂。最強の将棋を見届けてくれ。