重さと軽さが同居する、命の話
大好きな漫画です。 学生の頃、この漫画に狂っていた時期がありました。 友人全員にこれを読めとしつこく勧めて、 読んだ人に対してはお前はこの漫画の何もわかってない!と浅い考察を語る最悪のオタクでした。黒歴史です。 つまり、人を狂わせるほど魅力ある漫画ということとも言えます。言えますね。 とはいえ、こちらは既に多方面で紹介され尽くした人気作でもあります。 今さら自分の稚拙な語彙でレビューしても読むに耐えませんので、 ネットの海に散乱した情報に少しだけ補足をして、読むことを迷っている方の壁を取り払えればと思います。 この漫画が話に上がる時についてくるのが、とんでもない鬱漫画だという話題。 これが読み手の1つのハードルになってしまっていると思います。もったいない! 大丈夫。救いはあります。怖くないです。 確かに取り扱うテーマは重く、展開に心が締め付けられることはありますが、この作品の魅力はそこだけではないです。 素晴らしいのは重厚な世界観の中に、ポップさのエッセンスを忘れず組み込んでいること。 (ここで言うポップさとは、いわゆる大衆に寄り添う心のこと) 会話のテンポ、 キャラの関わり、 かわいらしいジョークのセンス。 そういう要素の節々に、作者である市川春子氏の人柄を感じられます。 そしてその人柄から読み取れるのは、 この人は読者の心をズタズタにしたい訳ではないよ〜。 ということ。 きっと最後まで読み切った方なら共感してくれると思います。 苦しさの先に希望がある。 これは人間の話。命の話。生と死の話。愛の話。宇宙の話。 火の鳥超えてます。ガチ。
「呪い」…人を殺したり傷つけたりすることに限定された超能力。そして精神力にその力は比例する。こんな特殊な能力だからこそ、この作品はドラマ性が色濃く出る結果になったのでしょう。呪力合戦に派手な演出は無し。一方、作品の核である命を奪う能力をもつ人々の心理描写はこれでもかというほど丹念。2つの話を交互に描き、補完し合ってじわじわとドラマを盛り上げているのも効果的です。この作品における呪力とは、思春期から20代にかけて発症する能力。この能力をもつ者は呪街に行かなければならない。12歳で発症してしまった優愛菜は能力を中和することのできる火詠とともに呪街に向かう、というのがひとつめの話。そしてもうひとつは呪街四天王・笠音と、彼女に預けられた真魚が、権力争いに巻き込まれるという話。能力に疑問をもつ者と、強力な能力をもつが故に安らぎを求める者。この2人のストーリーが最終的にどう交わるのかがまさに焦点です。ようやく最終巻がリリースされましたので、その衝撃のラストを心して読んでください。