「固定編成」桃山アカネ先生の短期集中連載!
※ネタバレを含むクチコミです。
「私を肯定して、お願い」毒親、少年犯罪、閉塞した地方都市、ドラッグ――21歳が描く、この社会の病んだ現状。 ある地方都市に暮らす高校生・由美子は、不安定な家庭環境に悩んでいた。心を病んだ父、世間体ばかりを気にする母、クスリに溺れる弟。安心できる場所を見つけられずにいる由美子は、校内新聞の映画記事をきっかけに優等生の時田と交流を持つ。地元の権力者である時田の父は、過干渉と暴力で息子を支配していた。 ちばてつや賞受賞後、即連載デビュー。 この時代を生きる私たちを描く、圧倒的才能の誕生!!
『豪雨』http://www.moae.jp/comic/morningzero_gouu
『固定編成』http://www.moae.jp/comic/chibasho_koteihensei
桃山アカネの短期集中新連載。
過去2作の読切はどちらも考えさせられる素晴らしい読切で、絵も漫画の描き方もどんどん上手くなっている。
今回の『海の境目』は前作の『固定編成』の状況をや取り巻く環境を少し変えつつ掘り下げる形、もしくは前日譚的な立ち位置になっていると思う。
事後そして解決をロードムービー的に描く『固定編成』に対して、そこに至るまでも描く『海の境目』。
読切を読んだときも感じたのは、こんな作品を20歳、21歳で描けるのはとんでもないなということ。
ゴロッとした自分の中で処理しきれないような感情、どうしようもなく忘れたい記憶、逃げ出したくてもその糸口さえ見えない日常、どこまでいってもつきまとう血縁、家族ということ、親ということ、無力な子供ということ。
誰にも言えない、理解されえない、逃げられない「孤独」。
登場人物の息苦しさや生きづらさが生々しく表現されているのは今作にも共通する。
ふと、松本剛を思い出した。
短期集中連載のまだ1話目。
これから冒頭で明かされた結末へ向けて物語はどう進むのか。
どうか、由美子にも時田にも救いがあってほしい。
終わっている家族に何を想うか。
怖いもの見たさで楽しみだ。