魔法少女(∋変身ヒロイン)の多様化が激しい。プリキュアで肉弾戦をやるようになり、まどマギ以降は過酷な運命を背負わされるのも当たり前になった。キューティーハニーセーラームーンではセクシー路線が開けていたように見えますが、CCさくらやリリカルなのはを含め'10年代現在に至るまであまり主流にはならなかった模様です(高齢オタク向けの二次創作界隈では未だに人気は健在ですが)

 「魔法少女まどか☆マギカ」以降、メタ的かつダークな作品が増えた印象です。そうして開けた新たな道を踏み台にしつつ、それらの作品群にありがちな『二番煎じ感』から脱却して次のステージへ…この「魔法少女特殊戦あすか」からはそんな予感を勝手に感じ取りました。

※『二番煎じ感』の詳細は以下の通り
①魔法少女ものがもつファンシーなイメージを逆手に取った、可愛らしいパッケージとは裏腹の血みどろ展開(「結城友奈」「魔法少女育成計画」など)
②従来のクリーンでピュアな魔法少女像とのギャップを意識した、暴力的な魔法少女を全面に押し出したもの(「魔法少女オブジエンド」「間違った子を魔法少女にしてしまった」など)

 「あすか」からはそれらは違い完全に開き直った『作者が描きたいものを色々ぶっこんだらこうなった』というビジュアルイメージがこの表紙に現れている気がします。こういうの好きな人がこういうの好きな人に向けて描いたらこうなったっていう、もうそれ以上言葉とか必要ないんですよね。たとえばマジカル自動小銃の先輩である暁美ほむらさんは、あの能力の設定があったからああなったのか銃火器魔法少女という最高にクールなアイデアを実現するために辻褄を合わせたのかわかりませんが、「あすか」では要らぬ心配です。軍の特殊部隊なのでw

 「まどマギ」がウケたからアンチ魔法少女で二匹目のドジョウを狙おう、の時代は終わって、魔法少女の新しい時代が始まったと捉えるべきでしょう。

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MA・MA・Match

映画『怪物』みたいな構成の話だった

MA・MA・Match
mampuku
mampuku

いい意味で誤解や異説の飛び交いそうな、多層構造のストーリーだったように思う。 主人公の一人である芦原(母)は、生意気な息子とモラハラ夫を見返すべく、息子の得意なサッカーで勝負を挑む。 前半は、ママさんたちが友情や努力によって青春を取り戻しながら、悪役(息子と夫)に挑むという物語で、この悪役というのがちょっとやり過ぎなくらいのヘイトタンクっぷりなのだ。その場限りのヘイトを買うキャラクターは、ヒーロー役の株を上げるための装置として少女漫画では常套手段だ。だが『マ・マ・マッチ』はそういう物語ではないため、話はここで終わらない。 後半は時を遡り、息子と夫の目線で描かれ直す。母目線ではイヤ〜な輩にしか映らなかった彼らにも彼らの言い分や考えがあったのだと明かされる。 真っ先に私が思い出したのが、是枝監督の映画『怪物』の主人公の一人、安藤サクラさん演じるシングルマザーの早織である。 息子が教師に暴力を振るわれたことに抗議するため学校に乗り込むも学校側からぞんざいな対応をされ不信感を募らせる早織。その後教師や子供など、さまざまな視点が映し出されることでやがて全体観が像を結ぶ。 『マ・マ・マッチ』でも、後半部分を読んだあとに最初から読み返すと些か感想が変わる。息子や夫がイヤな奴らとして描かれているのは確かだが、先入観によって印象が悪化していたのも事実だ。なにより、序盤に出てくる夫のコマは母を嘲弄するような不快なものだったが、そもそもこれは芦原母の回想であり主観だ。その後実際に登場する夫は彼女と衝突こそすれ至って真面目だ。 つまり、それぞれの立場から不満を抱いたり譲れない部分でぶつかり合いながら、逐一仲直りしたり折り合いをつけているのだ、という話に畢竟見えなくもない。悪者退治という少女漫画にありがちなフォーマットで導入を描いて入り込みやすくしておいて、後半の考えさせる話でモヤモヤさせる。末次由紀先生、さすがの巨匠っぷりを見せつけた怪作だ。

テセウスの船

どちらかというと『テセウスの船』というより『動的平衡』じゃない?

テセウスの船
mampuku
mampuku

時間遡行をして人生をやり直したとしたら、それは本当に同一の自分といえるのか?という問いを有名なパラドックス「テセウスの船」になぞらえたタイトルだ。 ストーリーに関しては論理的整合性や感情的整合性においてやや粗い部分も感じられたもののサスペンスとして緊張感もあり、ラストは新海誠監督『君の名は。』のような美しい締め方だったし概ね面白かった。 ただ、タイトル『テセウスの船』がイマイチストーリーにハマっていない感じがした。 どちらかといえば「動的平衡」のほうが比喩としてしっくりくるのではないだろうか。 「動的平衡」とはシェーンハイマーの提唱した概念であり、日本では福岡伸一氏による著書『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』で有名になった言葉である。“生命”とは、取り込まれ代謝されていく物質、生まれ変わり続ける細胞どうしの相互作用によって現れる“現象”である、という考え方だ。 主人公の田村心は生まれる前の過去に遡り、そこで巻き起こる惨劇を阻止することで、その惨劇により自身に降りかかった不幸な運命を変えようと奮闘する。作品では、過去を改変して自らの人生を曲げようとする一連の試みをテセウスの船にたとえているが、やはりピンとこない。作中、田村心は殺人事件を未然に防ぐため凶器となった薬物を隠したり被害者に避難を呼びかけたりするが、その影響で心の知る未来とは異なる人物が命を落としたり、結果的に大量殺人を防げなかったばかりか予想だにしなかった事態を招くことになる。 この予測不可能性こそがまさに動的平衡そのものって感じなのだ。生命体は、船の部品のように壊れた部分を取り替えれば前と変わらず機能する、ということにはならない。ある重要なホルモンの分泌に作用する細胞を、遺伝子操作によってあらかじめ削除してしまったとしても、ほかの細胞がそのポジションを埋めることがある。これは心が殺人事件の阻止に何度も失敗したことに似ている。思わぬ不運や予想しない死者が出てしまったのも、脚のツボを押すと胃腸の働きが改善するなどの神経細胞の複雑さに似ている。 船は組み立てて積み上げれば完成するが、生命は時間という大きな流れの中で分子同士が複雑に相互作用しあうことで初めて現象する。『テセウスの船』での田村心の試みは人生あるいは歴史という動的平衡に翻弄されながらも抗う物語だったのかもしれない。

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たくあかっ!

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税理士事務所でのアルバイトを始める紗音。 高校の先輩で現役税理士の燎子に連れられて事務所へ向かいます。 道中の紗音の言動に燎子は振り回されているみたいだけど…?

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剣仙ヒョウ局 ケンセンヒョウキョク

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強大な力を誇るジャン国の第三皇子・セツカはカレンの剣術指導を受けながら、嫌みな二人の兄と、敵国の人質・スイラン、幼馴染みのシラハと日々を過ごしていた。そんなある日ジャン国は敵国からの強襲を受ける! だがその時、凄腕の飛剣術の使い手・コクヨウ率いる運び屋・花乱ヒョウ局(からんひょうきょく)が現れた! 亡国の皇子という“荷物”となったセツカ、それを護り目的地まで送り届けるヒョウ局(ひょうきょく)。大陸を駆ける壮大な東方戦闘幻想活劇開幕(アジアン・バトル・ファンタジー)! ※こちらの商品には、巻末にデジタル版限定特典イラストが収録されています。※

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