にわか2018/12/03絡まり解けて、服になる戦前のエスを思い起こさせる舞台設定に、艶やかで絡まり解ける、女性らしい「髪」という題材で紡がれる話。制服を髪でつくる習慣という設定が、肝になっていて新しい。これが既存の髪のイメージに息苦しいという印象を抱かせ、女性同士の関係性と上手くリンクさせている(気がする)。画力は高く、雰囲気もしっかりと作っている。あとは物語の筋がはっきりと見えてくるのか。様子を見ていきたい。繭、纏う原百合子3わかる
にわか2018/12/03にんげんはこわいオガツカヅオのホラーの根幹には「人間」がある。それは悪意や暴力性、あるいは行き場のないどうしようもなさ、そうしたものが超常現象を生んで、物語となる。お腹が重くなるような独特の後味の悪さはこの露悪的な「人間味」に起因している。それが気持ち悪く、くせになる。この感覚を見事に描いてみせた星野茂樹の漫画力も見逃せない。ことなかれ星野茂樹 オガツカヅオ1わかる
にわか2018/12/03ケモノじゃないケダモノだ相手の指し手を全て殺して、喰らう将棋をする女性アマチュア将棋士の物語。バイトの休憩時間にトイレの個室に籠もり、対局鑑賞に熱中しすぎて、びっしりと棋譜を壁に描いてしまうシーンが好き。あのぞっとするような、止め処のない才能の漫画的表現は堪らない。 また、16歳時の援助交際疑惑や、昔はギャルの格好をしていたなど、パッと見からは想像のつかないギャップある過去を小出しにしている。こういった要素が「現在の彼女」にどう繋がってくるかが気になる。非常に楽しみな一作将棋指す獣市丸いろは 左藤真通
にわか2018/12/03ちがう人間だから「受け入れる」それぞれの孤独の在り方は違うし、理解し合えないことはあるけど、歩み寄れる。こうした人との距離の測り方は現代においてとても大事なテーマをもった作品だと思う。 槙生のスタンスは、分かるまで話し合うわけでも、押し付けるわけでもなく、「受け入れる」こと。理解できなくとも朝ちゃんだけの「寂しさ」があることを認める。それはどこか悲しいことにも思えるが、仕方ない。ふたりは「ちがう人間」なのだから。けれど、「砂漠」があることを認めてくれる人が側にいる。それは朝ちゃんにとって、一部の読者にとって命綱になってくれるのではないだろうか。違国日記ヤマシタトモコ2わかる
にわか2018/11/26退廃的なセカイの短編集鬼灯さん家のアネキの作者、五十嵐藍の短編集。退廃的な世界観と好みの人にはぶっ刺さる気だるげな女の子が魅力的。 「神様ごっこ」が個人的に好き。世界の終わり、と言われる日が来たら、あんな風に過ごしたい。退廃には夢があると思わされる一作ローファイ・アフタースクール 五十嵐藍短編集五十嵐藍
にわか2018/11/19最近のジャンプ読切だと断トツ『アイアンナイト』『レッドスプライト』の屋宜知宏先生の読切。連載作家ということもあってか、話をすごく綺麗にまとめている。ここ最近のジャンプの読み切りだと断トツで面白いと思う。 ミステリ、能力の魅せ方、感情の機微。どれもが噛み合っている。主人公のコミカルな表情で緩急を付けているのも技巧的。特にキャッチーだけど荒唐無稽な設定を作中でちゃんと処理していたのが良かった。すこし無理があるところも話の面白さで気にさせない力がある。文句なし忘レ者探偵屋宜知宏3わかる
にわか2018/11/15料理の王道を個性的に仕上げた漫画出てくる食事が旨そうという大前提をしっかり抑えながらも独特のコミカルさが楽しい漫画。癖になる書き文字、ユニークな動き、豊かな表情。キャラもしっかりと立っていて、飽きない。いいグルメ漫画瑠璃と料理の王様ときくち正太
にわか2018/11/12世界が少しだけ広がる瞬間を捉えた漫画明るくて全能感に満ちている主人公が、父親の不倫を目撃することで挫折し、不良になるというのはよくある流れ。 けれど「人間の宇宙」という公園の遊具にある七不思議と主人公の精神状態のリンクによってオリジナリティのある物語となり、面白さが出た。 気に入らなかった妹が見えないところで自分の呪いを拭き取ってくれている、そんな「裏側」に気がついた主人公の世界は少しだけ広がったに違いない。よく出来た作品。 人間の宇宙じんのあい1わかる
にわか2018/11/12ループする現代風刺シュールファンタジーマンガワン連載中はコメント欄を含めて、ぶらパンダのことを皆が心配してたのが印象的だった。せめて野生に帰ってよかった。。 仮想敵としての魔王が居て、それを倒すことでしか自己承認や肯定を得ることができない勇者たち。逆説的にいえば自己承認を得るために魔王のような必要悪を生み続けるのは、とても現代的。「次の魔王を産まない努力」「森から抜け出す努力」を彼らはできない。 インスタやツイッターのモジりが作中では見受けられる。そうした現代風刺を意識して書かれたからだろう。WEBの漫画らしくて良かった勇者たち浅野いにお5わかる
にわか2018/11/09「ひっコミュ系」女子のかわいいコメディ「干物妹!うまるちゃん」のサンカクヘッドによる、ひっこみじあんな女の子たちのメイド喫茶コメディ。「ひっコミュ」という「コミュニティが苦手なひっこみじあん」を可愛らしく表現した造語、可愛いデフォルメとオノマトペ、様々なタイプ分類など、コミカルな表現はさすが。週刊誌で箸休め的に読むのにちょうどいい漫画になっていきそう。ゆるりんと見ていきたい。メイド・イン・ひっこみゅ~ずサンカクヘッド
にわか2018/11/08分析系主人公による、新しいサッカー漫画弱虫の主人公が徹底的に自分や他人を分析して、サッカーを上達していく漫画。 徹底的に分析して、上達する主人公といえば「ベイビーステップ」を思わせるが、サッカーは集団戦。スポーツの特色の差により、意識せずに別の物語として楽しめる。 「TIENPO-ティエンポ-」というタイトルからも、仲間との連携に必要なTIENPO=タイミングが重要と分かる。その連携を取る仲間は一癖二癖ある。特に絶対的なサッカーセンスを持つ自己中の朝美はキャラはすでによく立っていて、面白い。弱虫な主人公だからこそ他人との関わり方、サッカーの連携に色が出る。今後が楽しみな新しいサッカー漫画。TIEMPO―ティエンポ―飯野大祐
にわか2018/11/05都会で失踪した少女を探す、渋い山男失踪した親友の娘を探す、渋い山男の話。 単純にミステリとしても良く出来ている。主人公からすると未開の地である渋谷で、どのように情報を集めるか、手掛かりがない中で真実にどう近寄っていくかという読みどころが意識されているため、飽きることなく読める。また、それぞれの場所で生きる者の考え方の差もしっかり書き分けられており、話に深みが生まれていた。 でもまさか高層ビルを山に見立てるとは思わなかった。そこのハチャメチャ感も含めて楽しめた。 捜索者谷口ジロー
にわか2018/10/25今週のOL進化論生活に根ざしているネタだけど、閃きがあるところがいい。のんびりと読んで楽しめるところもよい。今週はセクハラ上司に会うのに、強面の家族をレンタルって話が良かった。レンタル家族、ほんとにあるのかな?OL進化論秋月りす1わかる
にわか2018/10/25家族であるがゆえの薄ぼんやりとした壁なんとなく分かりあえてない家族の話なのかな? 登場人物の生き方や趣味はそれぞれ興味深いが、そっちの掘り下げというよりは、家族であるがゆえの「分からなさ」と「踏み込みづらさ」とかがテーマという感じ。 現代の家族ってたしかにぼんやりとした、互いを見ないことで成立している側面も感じるし、面白いかもしれない。まだあんまりよくわからないので、今後に期待したい。ストロベリーサライネス
にわか2018/10/22泡になって消えた少女桜庭一樹の名作「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」を「ナナマルサンバツ」杉基イクラが漫画化した作品。 原作から痛いほど伝わってくる少女の無力感と絶望的なまでのどうしようもなさが、しっかりと描写されている。色濃く描かれた日常生活はやるせなさを引き立て、決まっていた終わりにただただ流れていく。原作の雰囲気をしっかりと掴んだ上手な作画により、読みやすくもずっしりとした漫画になっている。砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない杉基イクラ 桜庭一樹5わかる
にわか2018/10/22人形のように美しいけれど、お人形じゃないヤマシタトモコの女性は人形のように美しい。色気があって、身体のバランスがよくって、はっきりとした顔立ちをしている。ただ、彼女たちの本当の魅力は『お人形』じゃないところにある。 この作品に扱いやすそうな女性は一人も出てこない。誰もが自身のスタイルを意識しているからだ。自分の内側の本音と外側の出来事。そうした揺さぶりの中から生まれる衝動。瞬間、彼女たちの表情や仕草はこれ以上ないほど瑞々しく描写される。その魅力はお人形には決してない、人だから出てくるものに違いない。何度でも読みたい。HERヤマシタトモコ2わかる
にわか2018/10/22繊細な描写と呪いの言葉に彩られた百合見ていて綺麗で癒やされるだけの「百合」じゃなくて、あくまで切実な女の子同士の関係。繊細に描いているがゆえに登場人物の言葉はときに呪いとなって、傷つけ合い、束縛する。目線や手の動き、仕草も作者の意識が配られて、他にない空気感が醸成されている。 女の子同士の恋愛だからこそ描かれるこの息苦しくなるような物語は、ただ読むことでしか味わえない。最高なので買ってよむべし。やがて君になる仲谷鳰
にわか2018/10/19そうとしか生きられない人たち映画化が間近ということで読んでみた。 「ハード・コア」の主人公の核というか、真っ直ぐさは、汚泥のようにどうしようもない行き詰まりの中でも、莫大な金銭を得ても変わらないんだなと思った。だからとんでもなく不幸だけど、惹かれる。友人の牛山も奇矯な行動をとるが、間違ったことや裏切ることはしない。ふたりの「純度」は最期まで変わらない。 だから彼らの空回りはちょっと面白くて、物悲しくて、気が滅入るけれど、胸が打たれるんじゃないかと思った。個人的には扇風機の回が強く頭に残ってる。ハード・コア狩撫麻礼 いましろたかし2わかる
にわか2018/10/18ネタバレ本格的で可愛い『女子校生×柔道』中学時代、柔道部最後の大会。友人の早苗と二人だけの柔道部に所属している主人公の未知は、気持ちのいい『いっぽん』を取れないまま、暑い夏を終える。 高校に入り、もう柔道はやらないと決めていた主人公だが、そこで最後の試合の相手と再会する…… 少女×柔道という面白い題材。ゆるい部活モノの雰囲気はなく、技の応酬の描写も本格的。その熱量は『あさひなぐ』を彷彿させる。画力も高く、キャラはほどよくデフォルメされていて可愛い。期待の新連載作品。もういっぽん!村岡ユウ5わかる
にわか2018/10/18現実がちょっと夢ある世界に見えるようになる日常生活の様々な問題を乗り越える、彼女たちのクセある「やりかた」をまとめた短編集。 面白かった。読み終わった後に「もしかしたら、あの同僚もこんなことを……」って思わせてくれる。現実世界にちょっとした夢をもたせる力がある。 個人的には自身のあられもない姿を撮り、エロ本に加工し、ボロボロの状態にして河原に置いておく、OLの話が好きだった。発想の勝利。彼女のやりかた田所コウ2わかる
にわか2018/10/18ネタバレ昆虫料理ラブコメディー「キャッチャー・イン・ザ・ライム」背川 昇の読み切り。 主人公はある日、生物部のカエルに毎日、恋人のように会いに来る女の子が、エサ用のゴキブリを口にしようとしているところを見かける。カエルに似ている主人公はそれをきっかけにデートすることとなるが、昆虫採集からの、お家デートで昆虫料理。この境遇は天国か地獄か。新感覚の昆虫料理ラブコメディー。 昆虫料理というと、鉄鍋のジャンを思い出すが、こっちは可愛い女の子が採取したての虫を調理する分、強烈なインパクト。身近な昆虫が多いのもなんとも言えない。 スキな子のお家デートで昆虫料理。なんとも微妙な気持ちになりそうだが、味は美味しいらしい。いつか食べてみるか…… あなたのためなら虫も食える背川昇
にわか2018/10/18日常からふわっと浮く瞬間「メメント飛日常」カラシユニコの読み切り。 魚談義から始まるちょっと新しい青春漫画。前作を読んだ時にも感じた、小さいけどたしかな喜びを覚えた時に人が感じる、ふわっとした非日常感を独特の感性で描写できるところが素晴らしい。 特に今作では指先で感じた水の感触から広がっていく、主人公の空想世界が綺麗で、どこか親しみを覚えるものだった。また、この人の青春漫画を読みたい。魚に声があったならカラシユニコ
にわか2018/10/15まさに「かわいい顔して甘くない」かわいい顔して甘くない、ねむようこ作品の「まさに」って部分だと思う。女の子は本当に可愛らしいんだけど、ただ可愛いだけじゃない。綺麗な薔薇にはトゲがあるってのとも違ってて、なんというかリアル。感情の揺れ動きとか、執着とか、あるいは無関心とか。どれもなんだかホントっぽい。そこが楽しくて、ちょっと怖い。そんな物語が宝箱のように詰まっている。 ねむようこの本領発揮って感じのとても良い短編集だと思う。くらすはこ HOUSE IS WONDERLANDねむようこ