まみこ
まみこ
11ヶ月前
結論から言います。映画「未来世紀ブラジル」です。 まさか、オチまで一緒とは思いませんでしたわ。 終了。 …で、終わらせても良いのですが、少々付け加えると、作者、筒井哲也が、自作が有害図書指定を受けた経験から描き始めたらしいので、マネしたかは不明ですが、素朴な動機から監視/相互監視/言論統制社会を描き始めると、まぁ、こうにしかならんよね、と言う感じです。 テリー・ギリアムは、モンティパイソンで1960年代から、ずっと皮肉と嫌味と衒学の塊で「表現とはどうあるべきか」を考え続け、実践してきた人なわけで、比べてしまうと、表層上同じに見えても、どうしたって意味と意義には差が出てきてしまうのでしょう。 表現における知性の差、と言うのは、この作品の結末以上に残酷なものなのです。 ディストピアがテーマなのは一種の切り札、どうだって出来てしまう訳で、描く方も読む方も、それなりの知的な視点が求められるよね、と言うお話でした。 _____ 翻って。現在は、2023年ですが、連載が始まった2014年からの時代を読むと、当初は萌えマンガ、エロマンガ、グロマンガの画像貼り付けインターネット掲示板「4chan」が、ミソジニスト、人種差別者、ホワイトトラッシュの巣窟になり、「反ポリコレ」で一致団結、ゲーマーズゲートを発端とし、数々のフェミサイド、ゲイをターゲットにした銃乱射、アジア系移民を石で殴って殺す、など反社会行動の起点となっていきます。 そして、"Q"が現れ、QAnonが生まれ、ディープステート陰謀から、ドナルド・トランプを神輿として、2021年の米議事堂襲撃に至るのです。 よく知られるように、「4chan」の所有者は日本人ですし、出資したのも、初音ミクのフィギュアで財を成したグッドスマイルカンパニー。日本人の表現に対する無責任さが、米国の、ひいては世界の民主主義を破壊してしまったのは揺るぎない事実です。 「4chan」の所有者はFBIによって指名手配され米国に入国は不可能、グッドスマイルカンパニーは被害者遺族による集団訴訟によって、事実上米国での営業活動は不可能になりました。 「こんなになる前に、表現に対する取り締まりは、もっと厳しくやっておけよ!」と言っても、殺人被害者は生き返りませんし、一旦壊れてしまった民主主義を立て直すのは容易ではないことは自明でしょう。 また数年後、これを読んでいるあなたは、この漫画をどう読むでしょうか?
mampuku
mampuku
11ヶ月前
Unmet Medical Need(満たされていない医療ニーズ) これをタイトルに掲げている通り、単に医療という大きなテーマに挑んでいるにとどまらず、いろいろな悩みや欠点を抱えた人間同士の相互のドラマが非常に面白い漫画です。 主人公の脳外科医は外科として優秀なだけでなく常に患者やその家族に寄り添うことによって救おうとする。しかし医療全体の最適化を図りたい経営者たちや、異なる信念を持った同僚たちとしばしば衝突する。また寄り添うべき患者も、患っているのはほかでもない「脳」である。いくら主人公たちが有能かつ真摯だとしても、彼らの苦しみを本当の意味では分かち合えない。数学における不完全性定理のように、医療とは、どこまでいってもアンメット(Unmet)なものである運命なのかもしれません。 医療漫画はどうしてどれもこれも面白いのか、とときどき考えます。膨大な取材や考証、高度な画力、これを社会に訴えかけたいという熱い思い……数え切れないほどに高いハードルが山積みであるため、世に出た医療漫画というのはすべからくハイクオリティでなければならない、という前提はあると思います。ですが読み手の目線から考えたとき、きっと医学とは人間なら誰しも無関係でいられないからなのかもしれないなとも思います。大半の人間は病院で死にますし、日本の制度では死亡確認ができる(=人の生死を判断する)のは医者だけです。病と死について真剣に向き合って本気で描かれたプロの漫画が、面白くないはずなどないのです。
六文銭
六文銭
11ヶ月前
エッセイとか離婚切り出す系マンガが、大抵夫の不貞・非協力的な態度による嫁側の視点だったけど、本作は男性側が離婚を切り出し、ちょっとした法律的な話もわかる、目からウロコな作品。 自分も、本作を読むまで「母性優先の原則」という、離婚すると親権は大体、というか9割が母親がもっていることを知りませんでした。 本作の内容は、そんな親権を欲する父親が主人公の話。 嫁は専業主婦だが、家事をしない、それどころか浮気三昧で、また娘を自分のエゴで芸能界にすすませようとする。 主人公は、上記の原則を知りながら、なんとか親権を獲得すべく、仕事よりも家庭を優先し、浮気の証拠を集めるという流れ。 家事など子供のために色々やっていることも親権獲得のために有利に働くから。 内容も結構ドラマチックなのですが、上記の原則だけでなく、父親が親権獲得するためにやるべきことや、社会構造の歪さなど知れる、なかなか社会派な感じ。 共働きも多い現代で、まだ母性優先なのなんでだろ?と純粋に疑問にもってしまった。 離婚後も、女性が子供を育てて、夫は養育費を払う、という、男が外で働き女性が家庭に入るという考えが根付いているからだろうか? 夫目線としては、全般的に嫁側の行動が胸糞な感じなのですが・・・。 親権獲得のために弁護士や探偵を駆使し並々ならぬ努力する主人公の姿に共感&圧巻です。