ぺそ
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2020/09/30
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デビュー作を含む川原泉の初期短編集
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7篇からなる最初期作品短編集。表題作をは私がイメージする川原泉先生の絵だったのですが、それ以外は全然違くてびっくりしました。かなり荒削りで拙く、目の描き方や顔の比率などはかなり従来の少女漫画の影響を受けているのが印象的でした。 当時最新作のフロイト1/2から始まり、デビュー作のジュリエット白書が一番最後に収録されている構成です。Wikipedeiaに従って各短編を作品の発表順に並べ替えてみました。(文頭の番号が書籍での掲載順です) ⑦ジュリエット白書 (別冊花とゆめ 1983年冬の号) 何の前情報もなしに読んだなかで、このジュリエット白書が王道ラブコメな感じで一番面白かったです。超優秀な兄に虐げられる2人の妹たちは、いがみ合う兄同士とは対照的に大の仲良し。たまには兄貴たちに仕返ししてやろうと、自分達の素性を隠してお互いの兄とデートし合うが…!? オチがすごく良かったです。台詞回しとかモノローグによる絶妙な間のとり方とかがすでに川原泉テイスト…! これがデビュー作とは驚きです。   ⑥メロウ・イエロー・バナナムーン (別冊花とゆめ 1983年夏の号) 宇宙のとある星を舞台にした恋愛ドタバタ劇。 主人公・ミズキは新しくやってくる長官の秘書に任命されるが、その名前を聞いて逃走を図る。実はその長官はミズキの夫で、ミズキは1年前に結婚したもののわずか1時間で逃亡、以来逃げ続けているところだった。 正直このお話が一番、話の筋を理解するのにかなり手こずって読みにくかったです。   ②たじろぎの因数分解 (花とゆめ 1983年9月大増刊号) 数学が大の苦手の女子高生が、数学教師と義理の兄妹になりお弁当を作ってあげるお話。80年代っぽい小物でいっぱいで主人公の部屋がすごく可愛い…! 「ダメダメな所もあるけどキラリと光る長所もある」というのがやはり川原先生の描かれるキャラの魅力だと思います。   ③悪魔を知る者 (別冊花とゆめ 1983年秋の号) 一番絵の癖が強い!!笑 試行錯誤されていた時期だったのでしょうか。和馬様の顔がとにかく長い。 主人公の若菜は父が勤める大企業の御曹司・和馬に子供の頃から絡まれている。なぜなら和馬は外面こそ善良なお坊ちゃんだけど内面は人格破綻者の外道(若菜曰く、「和馬は発狂した宇宙人類の歪み」)で、親すらその本性に気づかず若菜だけが知っているから。 ヤバい男に平凡な女の子が目をつけられるというテーマが読み応えがあって面白かったです。   ④真実のツベルクリン反応 (花とゆめ 1983年22号) 家の隣の病院に越してきた若いお医者さんと仲良くなるお話。 お医者さんも主人公も、家にいて縁側でお茶を飲んだり盆栽の手入れをするのが好きなタイプ。私としては「インドア趣味全然ありじゃんむしろ素敵」と思ったのですが、描かれたのがバブルへ突き進む時期なだけに、2人は家族から呆れた目で見られていたのに時代を感じました。   ⑤花にうずもれて (花とゆめ 1983年11月大増刊号) 笑うと体から花が出てしまう女の子のお話。 家庭教師の先生の前で笑わないように頑張っていたのにバレてしまったうえ、昔自分のことを不気味だといじめてきた女の子に再会して…というお話。可愛らしいメルヘンな設定に反して、主人公が嫌な思いするシーンが多い。終わり方もちょっとビターで、辛いことがあったけどでも花のおかげで…という切ない余韻が印象的でした。 ①フロイト1/2(花とゆめ 1989年4、8号) ホント面白くてこれぞ川原泉という感じ。 主人公の梨生は、8歳のときに小田原城で大学生の弓彦くんと出会う。2人は「風呂糸屋」という謎の外国人がやっている提灯屋で、2個1組10円の提灯を5円ずつ出し合って購入すると、なんと2人の夢がつながってしまう。山で遭難し夢うつつの弓彦を梨生が夢で助けて以来、2人の夢は繋がらなくなってしまう。 そして10年後、短大合格が決まり暇になった梨生がバイトすることになったファミコンソフトの会社は、なんと弓彦のもので…!? 梨生の一生懸命なのんびり屋さんぶりがかわいい…! 夢の中では2人とも10年前の姿のままで和気あいあいとしており、普段キリキリしている弓彦も本来の素直さを出しているとこがキュンときた。 7篇読んでみて、アカデミックな小難しさと、主人公のお気楽さの絶妙なハーモニーがやはり川原泉先生最大の魅力だなと感じました。
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2020/09/28
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心優しい少年が生き抜く中華風ファンタジー
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たまたま見つけて綺麗な表紙に惹かれて読んでみた作品。中華風の世界観がすごく良い✨ 表紙の主人公・遊圭は病弱だけど賢く心優しい少年で、名家の複雑な環境に生まれるものの、西方から来た強く逞しく愛情深い薬師で療母・胡娘のお陰で健やかに育ちます。 ある日親族が皇帝の妃になることが決まり、初代皇帝が定めた「皇妃に外戚なし」の掟により一族は殺されることになり、遊圭は追手から一人で生き延びることに。 幼い少年はお団子の髪型をしてるとか、遊圭には特定の動物アレルギーがあるらしいとか、端々からさり気なく読み取れるところが凄くいいですね。 たどたどしくも力強い喋り方をする胡娘の言動からは、それはもう遊圭坊ちゃんを愛していることがビシビシ伝わってきます。 作る料理はものすごく美味しそうで、しかも材料を見れば滋養があるのがわかるメニューで思わずうっとりしてしまうほど。 料理・調剤・演奏の腕に優れるだけでなく武術の心得もあり、遊圭を逃すのに充分すぎるほど活躍してくれる。 遊圭に愛おしそうに『ファルザンダム』と異国の言葉で呼びかける姿が本当に印象的で、まだ読みはじめて1巻なのに、消息不明となってしまったのがすごく心配です。 遊圭がまたほんとにいい子なんですよね…。 アルスラーン王子とか炭治郎とかと同じ真面目で優しくて賢いいい子で、思わず応援したくなってしまいます。 追手から逃れるために女装して後宮に行くって、ホントどうなっちゃうんだろう〜!続きが気になる…! 原作読んじゃおうかなぁ
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2020/09/11
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可愛くて胸が締め付けられる妖怪人情物語
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このあいだ新刊ページで見つけた作品。まずタイトルで「おっ」と気になりました。「先ず隗より始めよ」って高校で習ったやつじゃんと。それから表紙をよく見たら、手前のおじさんの表情とデフォルメがなんかすごく良くて。Amazonへ行ったら1冊110円だったので取りあえず買って読んでみたら…すっごく可愛いくてちょっと切ない人情話でした。 主人公の亜紀彦は、窓口に来るクソガキにも笑顔を絶やさず横暴な上司にも怒らず、ホームに落ちた人を間一髪助けて名乗らず去るような、健気なまでに真面目な市役所職員。一方、亜紀彦が「あんちゃん」と呼ぶ兄・波留彦は、真面目な亜紀彦とは対照的に大雑把で適当で喧嘩っ早い。そんな凸凹兄弟2人の目標は「人間になる」こと。 夜の街から闇が消えた妖怪にとっては暮らしにくい現代。妖怪たちは不死の妖怪であることを辞め、人間となって死ぬことを選んだ。 2人で善行を5回連続で重ねると、晴れて人間になれるのだが、この兄弟は兄・波留彦のせいで3259回リセットされている…というところからお話は始まります。 ちなみにこの2人は午前0時から日の出までは妖怪の姿に戻ってしまうのですが、その妖怪姿がも〜〜〜すんごく可愛い…! LINEスタンプがほしい。 亜紀彦の方はTHE・カッパという見た目で、気が弱そうというか大人しそうな見た目にキュンとくる。というか人間の姿で胸ポケットからキュウリを出してポリポリするところ好き。波留彦の方は昔の特撮怪獣のソフビ人形みたいな見た目でシンプルに可愛い。 この2人がドタバタしながら色んな人に出会い善行を重ねようとする話なんだけど、2人は妖怪ゆえにかなり純粋なため、途中人間に手ひどく裏切られる話ではかなり胸に来ます。(ちなみに亜紀彦は昔も人間に裏切られたことがあり、その切ないお話は郷土の昔話にもなっている) この兄弟の過去とか、亜紀彦と姫様の生まれ変わりとの恋の話とか…もっと掘り下げて描いてほしいところがたくさんあるんだけど、残念ながら8話で完結してしまっています。 しかも最終怪はかなり悲しいお話で、最初はなんでこんな話で最後なのか納得がいかなかった。けど、この話は「人間となり死を望む妖怪」の話だから、最後に兄弟2人に人間の死を見せる必要があったのかなと今は思います。 人間よりピュアな妖怪の生き様にホッとする作品でした。
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2020/08/28
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じんわりくる切なくて優しい話 #読切応援
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鯖ななこ先生ってflowersでヤギの4コマ描いてる人…という認識だったのですが、今回人間の女性が主人公のお話を読んで一気にファンになってしまいました。人間関係と心の動きが繊細に柔らかく描かれていて、もうずっと読んでいたい…! 幼い頃に両親に捨てられた主人公・喜代恵は、祖母のたばこ屋で働きながら日々淡々と生きている。母と一緒に遊園地に行った日に、母が家を出ていき二度と帰らなかったため、喜代恵はうれしいことがあると不安になってしまう。 あるときから、爽やかな青年・壮介が度々やって来るようになり、気づくと彼を家に住まわせてやり、彼の代わりでバイトに行くようになっていた。そんなとき、家に母が尋ねてきて…。 客観的に見れば壮介はヒモで、喜代恵は利用された女で、2人とも出会ったことで人間的に大きく成長したりはしません。 だけど少しだけ変化はあって、引っ張り出してハロ(日暈)を見せてくれた思い出や、お洒落に垢抜けた容姿が今も残り、壮介が去ったあとの喜代恵の日常は今までとは違ったものになっている。 この全くドラマチックじゃない、現実的で静かな変化がとても良くてじんわり来ました。 鯖先生の人間を描いた作品、もっと読みたい…!
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2020/08/18
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姪に教わってイギリス文学に登場するお菓子を作って食べるおじさんの話
自分は「好きな国は?」って聞かれたら「イギリスかな〜」と答える程度のものすごくライトなイギリス好きなので、この本は英国文学とそのお菓子について知るのにちょうど良い内容でした。 https://youtu.be/CIYN0ghOfUM 主人公は48歳の老眼始まりかけの雨宮先生。 有名な小説の中に登場するお菓子をイギリス育ちの姪・サヤに教わりながら作って、2人で一緒に3時のおやつを楽しむお話。 サヤちゃんがメチャクチャお菓子づくりに詳しくてしっかりしててすごい。 ハリー・ポッターに登場する糖蜜パイが「トリークルタルト(treacle tart)」のことで、中身は生パン粉で出来てるというのが驚きでした。メチャクチャ美味そう…! レシピが全部付属しているのでいつかチャレンジしてみたいです。 『ホビット』を読んだことも見たこともなかったので、サヤちゃんがドアにかかっている看板を見てなんで嬉しそうにしていたのかわからなかったのですが、あれは有名なシーンを再現したものだったんですね。 あとこれは私だけだと思いますが…絵がとてもお洒落なので、ずっと雨宮先生と妹さんのことも日英ハーフだと思って読んでしまい混乱しました笑 新潮社から出ているということで、カバー下が新潮社の文庫本と同じデザインになっています。読み終わってから気づき粋だなと思いました。 【連載ページ】 https://www.comicbunch.com/manga/bunch/amemiya/
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2020/08/12
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恐ろしいのに惹き付けられる「魔法使い」
不幸な子ども、誘拐、魔法、師匠と弟子、契約。自分が好きなものの要素が全部入った、小説みたいにじっくり読める作品で超大好きです…!! 現実と切り離されているようで地続きになっている、リアルとファンタジーの混ざり具合がたまりません。 https://i.imgur.com/kJGXTuS.png 特別な力を持った存在が、実親から引き離して人間の子供を弟子に取る怖さ。「魔法使い」という特別な人たちが、身を潜めながら群れを作り生きているワクワク感。魔法使いたちの社会の複雑な人間関係と、魔法の不気味さ。無邪気にドリルを解いたり庭で遊ぶ春生の可愛らしさ。ガラスケースに保存されている泉太郎が殺した叔父の生首。得体が知れないけど春生を心から心配している泉太郎の温かさ。 魔法とそれ取り巻く社会はかなりダークで恐ろしいんだけど、泉太郎と春生はそんな社会から離れてひとつ屋根の下で優しい関係を築いているという、怖さと温かさが丁度いいバランスでずっと読んでいたくなります。 https://i.imgur.com/J27s7kL.png 少しでもこの世界を理解したくて、登場人物たちの何気ない会話で魔法の仕組みや魔法使い社会の構造が話されているのを、既存の情報を思い出しつつ「こういうことか…?」とかなり真剣に考えながら読んでしまいました。 「魔法使いは総じて家族と縁が薄い」っていう設定が超グッときます。 不幸な子どもって大好きなんですよ…というか、家族が居ない、愛されていない子どもが1人で新しい場所に適応するのを見るのが好きなんですよね。未来少年コナンとかロミオの青い空とか、カスミン、ハリーポッター、夏目友人帳も。 泉太郎から出されたドリルを自分でちゃんと解いて、ときどき猫をだっこしておしゃべりして、1人で楽しそうに動きながら家の中を歩き回る。 春生の昼間の過ごし方を見てると、自分の子供の頃を思い出してなんか「ああ、子どもってこんなだよなぁ」と優しい気持ちになります。 単行本は24話(ウィングス2017年4月号掲載)が収録された3巻が2018年に出たのが最後。気になってバックナンバーの話数を数えてみたら、最新話が36話(ウィングス 2020年4月号)ということで既に12話ほどストックがあるようで、そろそろ新刊が出るかも知れません。楽しみ…!!
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2020/07/31
3組の研修医&指導医の小児医療ドラマ
「表紙が優しくていいなぁ」と眺めているときに、「そういえば面白くない医療漫画ってないな」と思い立ち買いました。大変なことばかりの厳しい研修医生活を描きながら、表紙どおり温かさのある素敵なお話でした! ほのぼの天然研修医・美貴先生。 エリートで自信満々で超優秀な指導医・名越先生。 小児科医1年目の指導医で幼馴染・ひかる先生(年下) 勉強熱心で優秀で何でもソツなくこなす研修医で幼馴染・健太郎先生(年上)。 怖い指導医にまいっている研修医・しんのすけ先生。 名越と仲が悪くて気難しい高城先生。 美貴先生のド天然っぷりが最高でした…! こういう先生が病院にいたら安心できますよね。 そして幼馴染コンビの関係にはすっごくキュンとしました。「私はいつの間にBLを…!?」と錯覚するほど素敵な関係でした。 タイトルの意味がわからなかったので調べてみたら、 「ネーベン(ねーべん)とは、研修医のことである。ドイツ語のNebenより。 ネーベンに対し、指導する立場の医師のことをオーベンという。」 https://bit.ly/39GBugI とのこと。テーマそのままズバリのタイトルだった。 6人の先生が出てくるのですが、1巻では最初の2組にフォーカスが当たっていたので、早くしんのすけ先生回が見たいです。2巻も楽しみにしています! https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_CB01201123010000_68/
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2020/07/09
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「ネコとじーちゃん」とか泣くしかない…
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温かくて優しくてホッとする素敵な読切でした。最初に読んだあとすぐ2回め読み返したんですけど、やっぱり涙がジワッと出てきてました。ネコとじーちゃんはずるいって…! 死んでしまったネコの「ミー」。ツナ缶がどうしても食べたくて、もうすぐ小学生になる「ちえちゃん」の身体に入り込み、いつもくれた「じーちゃん」のところへ行くことに。 ネコに追いかけられたり、犬に吠えられたり、知らんおばちゃんに話しかけられたり…いろいろあって土手の草むらで丸くなっていると、ちえちゃんの祖父であるじーちゃんと偶然出会う。 子供の中にネコが入ってても、元気に遊び回るにゃーにゃー言ってる子にしか見えないところがすごく可愛い…! そして細くて柔らかい線で描かれる、生活感溢れるおうちの描写がたまらない…! いかにも「じーちゃん家」って感じの家で、じーちゃんが料理をする音を聞きながらご飯を待つ。食べたら2人で縁側でのんびりする。 この穏やかな空気があまりに優しくてそれだけでも切ないのに、お母さんが迎えに来て別れ際、ミーはじーちゃんを抱きしめる。 すると、じーちゃんはハッとした様子で「この子はちえじゃない」と気づき、感極まった様子でミーを抱きしめ返す。 も〜〜ここで何度読んでも涙が…。 スタンド・バイ・「ミー」というタイトルの良さもここで効いてくるんですよね…ミーはじーちゃんの側にいた…。 そして最後、ミーがじーちゃんとの出会いを語るという終わり方でとどめを刺されます…切なすぎる…! 柱コメントでちばてつや先生が「間」を評価していましたが、まさにその通りですね。誰も何も言わない、ただ時間だけが流れるコマの作る空気が最高でした。 松本勇気先生の次回作楽しみにしています…!! 【作品掲載ページ】 http://d.morningmanga.jp/viewer/1642/1624 (↓このページ、あったかくて最高に好きです)
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2019/12/25
短い恋と大きな愛の話
そのタイトルの意味は恋人たちが睦み合う音のことなのですが、愛情に満ちた母子家庭を描く漫画のタイトルとしてこれ以上相応しいものはないと思います。 1巻は主人公・菫子の娘・のぞみの視点で始まります。中学生になる彼女にはボーイフレンドがいるのですが、恋人としての関係を重ねる中で母のことを見つめ直します。 良いところのお嬢さんだった菫子は、高校生の時に幼い頃、親子三人で住んでいた一軒家を訪ねます。するとそこで性格の悪い年上の男の子と出会い次第に惹かれていく…。 両親を亡くしている菫子、裕福な家庭で将来を期待されていた皓(あきら)。二人は駆け落ち同然で結婚し、貧しいながらも幸せな生活を送るのですが、菫子が身籠っている時に、皓を事故で喪ってしまう。 菫子と皓の短くも美しい恋人時代。そして、まだ女性の社会進出が進んでいなかった90年代の日本でシングルマザーとして働き子育てするのんのんの幼少期編。 どこを読んでも困難がばかりで、でも同時に大切な人たちの愛情でいっぱいで…温かくて切なくていつも胸が苦しくなります。一人暮らしが長いため、家族の良さを忘れがちなのですが、「世界でいちばん優しい音楽」がいつも思い出させてくれます。 結婚したらこんな風に子供を愛したいなと思わせてくれる素敵な作品です。
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2019/11/19
海外のオタクが日本に暮らしたら!
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すこし前に海外エッセイ漫画と海外ウェブトゥーンにハマっていて、フランスはとにっきやモンプチ(フランスに偏ってますが)などを読み漁っていました。そのころにたまたま「海外のマンガ家さんが日本での生活を描いたエッセイ漫画」という興味ドンピシャのマンガがあると知って「絶対面白い…!」と思いながら読んだのがこれでした。 https://www.comic-essay.com/episode/68/ 絵がすごくかわいい!コミックエッセイらしさとお洒落さが絶妙なバランスの絵が素敵✨ クチコミを書くにあたりさっき冒頭を読み返してみたら ・アニメやマンガで買い物袋から突き出しているものが「ネギ」だと知って真似したくてスーパーで買う ・日本で人の家に招かれた際、「(※客間に)上がって上がって」の意味がわからなくて、3階まで上がって待っていた ・スーパーで売ってる下着が地味なのが不思議 …という面白エピソードがたくさん出てきて笑ってしまいました。 ちなみに私が好きなのは「あられの日に窓の外を見たら男の子がマンガみたいに屋根の上で空を見上げていた」という話。もし自分が海外出身のオタクでそんな光景を見たらエモすぎて一生忘れられないと思う…!! (↓このエピソードです。「第10話 あられで出会った少年2」) https://www.comic-essay.com/episode/read/747 20話以上がコミックエッセイ劇場で公開されているのでぜひ読んでみて下さい! (追記) 当時は知らなかったのですが、フー・スウィ・チン(FSc)さんは、日本でも著者を発表してる有名な作家さんなんですね。最近知ってすごく驚きました。 (画像は序文の挨拶のところ。優しい塗りと洗練された柔らかいデフォルメが素敵です。)
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2019/07/04
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読んで感じてくれとしか言えない
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読切『おナスにのって』で岩田ユキ先生のファンになりました。とぼけた見た目のキャラクターとすこし不思議な世界観。岩田先生の描く漫画は温かくて切なくて大好きです。 https://shincomi.shogakukan.co.jp/eximages/winner/84/4301.png (画像は岩田ユキ『悪者のすべて』より) 容姿のことでいじめられていたけれど、連れ去られた先で覆面によって匿名という安らぎと友達を手に入れたミツル。 一緒にご飯を食べてくれて、二人組をつくるときに自分を選んでくれる友達がいる。そんな些細なことに幸せを感じ「ゆめみたい」と涙を滲ませる姿に胸を締め付けられました。 シュウが男前なのはシュウのせいじゃない。 ミツルが自分の姿に自信が持てなくなったのは、ミツルのせいじゃない。 あの場で「戻る」選択をすることは、自分に自信が持てない・価値を感じられない人間にとってあまりにも当然の行動で、誰も悪くなくて、つらい…。 後半で逃げる2人をジッと眺めていた総統の姿がとても印象的でした。 総統には、シュウに友情を求めるミツルが、陽を浴びようと首を伸ばす花に重なって見えていたんですね。 いろいろ書きましたが、どんなに言葉を尽くしても岩田先生の世界観の良さを表現できないので、とにかく読んで感じてください。 『悪者のすべて』岩田ユキ https://shincomi.shogakukan.co.jp/viewer/84/04/301/ 小学館 新人コミック大賞 https://shincomi.shogakukan.co.jp/winner/ (画像は本編より引用。この見ててホッとする温かい絵柄が好きです)