「悪者のすべて」感想
短いながらも心の奥深くに刺さる作品だった。とぼけた調子の絵柄でサクサク進んでいくから油断してたわ。ラストで見せた彼の葛藤に泣きそうになった。人は出会いや環境によって良くも悪くも変わっていく生き物だ。いい出会いは人を前向きにし、生きる力を与えてくれる。それは紛れもない事実だ。しかし長年抱えてきた苦しみや劣等感は、そう簡単にほどけるものでは無いのだろう。 …ところで、総統のバックボーンが気になるんだが…スピンオフやってくれないかな(笑)
読切『おナスにのって』で岩田ユキ先生のファンになりました。とぼけた見た目のキャラクターとすこし不思議な世界観。岩田先生の描く漫画は温かくて切なくて大好きです。
容姿のことでいじめられていたけれど、連れ去られた先で覆面によって匿名という安らぎと友達を手に入れたミツル。
一緒にご飯を食べてくれて、二人組をつくるときに自分を選んでくれる友達がいる。そんな些細なことに幸せを感じ「ゆめみたい」と涙を滲ませる姿に胸を締め付けられました。
シュウが男前なのはシュウのせいじゃない。
ミツルが自分の姿に自信が持てなくなったのは、ミツルのせいじゃない。
あの場で「戻る」選択をすることは、自分に自信が持てない・価値を感じられない人間にとってあまりにも当然の行動で、誰も悪くなくて、つらい…。
後半で逃げる2人をジッと眺めていた総統の姿がとても印象的でした。
総統には、シュウに友情を求めるミツルが、陽を浴びようと首を伸ばす花に重なって見えていたんですね。
いろいろ書きましたが、どんなに言葉を尽くしても岩田先生の世界観の良さを表現できないので、とにかく読んで感じてください。
『悪者のすべて』岩田ユキ
https://shincomi.shogakukan.co.jp/viewer/84/04/301/
小学館 新人コミック大賞
小学館 新人コミック大賞公式サイト 最新の受賞者
(画像は本編より引用。この見ててホッとする温かい絵柄が好きです)
ミツルはいじめを苦に自殺を図ったが、何者かに覆面兵士として働く施設へ連れ去られて…!? 【第84回小学館新人コミック大賞青年部門入選】