吉川きっちょむ(芸人)
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2023/11/13
自分と友達はどうだったかなと思い出して浸ってしまう
やまもとりえ先生の、大学時代から現在までの少し変わった友人たちとの思い出の日々を描いたコミックエッセイ。 同じ内容をポッドキャストでも話してます。 https://open.spotify.com/episode/5WjmBjW1p7GmQXsDWxLJUW?si=d199b921940442c2 読み始めてすぐ「いつも谷間が見えている友人Yちゃん」というバズった投稿を見たことがあったのを思い出ました。 https://twitter.com/yamamotorie/status/1595362304576868352 作者さんが「大好きで仲が良い私の素敵な友達をぜひ知ってほしい」と紹介してくれてるような形だからこそ、読んでいると自分の友達もぜひ紹介させてくださいよ、という気分になってきて楽しかったです。 自分の学生時代の友人たちとの思い出がいろいろよみがえってきました。 エッセイなので、フィクションのように特別ド派手なドラマがあるわけじゃない、でも等身大の青春劇がそこにある。それがいいんですよね。 美大ならではのクリエイティブな話もあるけど、基本的には普遍的な友達の話。 そして、なんといっても一冊としての構成が素敵でした。 困ったときに友人が助けてくれた最高の人生だったんだなと。そしてこれからもそれが続くと思うと最高です。 どの友人のエピソードも面白くて、その個別の友人紹介の話があったからこそ、最後のエピソードに集約されて際立って輝いて見えて、感動しました。 同時に、男同士の友人グループだともしかしたらこうはならないだろうなっていう羨ましさもありました。男同士は楽しさを共有はしても弱みはあまり見せないこともあるから。 読んでるときの感覚としては、友達の結婚式の新婦側の仲良したちでの出し物とか、学生時代の写真のスライドショーとか見てどういうふうに仲良かったのかなーと想像したときの、最高に楽しい青春の「中身」をしっかり見せてもらった気分でした。 共感ポイントとしては、「自分たちの用語辞典作ったな~!」って思いました。 小さい界隈だけで通じる用語・共通言語ができて集団としての絆が熟成されていく感あって楽しいんですよね。秘密の合言葉みたいで。 ふわっと思い出した自分のエピソード ・Nくん、高校で誰とも全くしゃべったことなくて会話はいつも筆談していたらしく、大学で僕が普通にNくんと話してるのを見られて「どうやってあいつの心開いたんだ!?」って驚かれたことがある。そのNくんは窓が割れたままの部屋にずっと住んでて、いつもお菓子でお腹いっぱいにしてた。 ・Mくん、子供がどうやってできるか知らなくて、植物みたいに受粉するものだと思って通学で乗る満員電車に毎朝めちゃくちゃ緊張してた。その反動か、気づいたらテニスサークルに入って遊びまくってた。 などなど。 一気に読むのもったいないので、ちょびちょび1日2ページずつとか少しずつ読むのもいいかも。とはいえラストはどうやっても一気に読んでしまうはず。
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2023/10/12
「小説を書く」という行為でここまで盛り上がる物語を僕は知らない
ここ半年で始まった新連載の中でトップレベルで心動かされてる作品。 脳が喜ぶ大興奮のドラマの作り方。凄まじい高揚感。 憧れに本気で踏み込めない人はもちろん、小説や表現が好きだったりチャレンジする人を見るのが好きな人にはぜひ読んでみてほしいです。 https://urasunday.com/title/2272 【あらすじ】 会社員、黒田マコト、31歳。いい会社に入って仕事も要領よくこなして結果も出てて、彼女とも結婚が視野に入ってて順風満帆。すべては順調に見えたが、真面目すぎる黒田は実生活の小さな積み重ねによって心を病んでしまう。そんな時、学生時代の文芸部の後輩・黄泉野季郎(よみの・きろう)と再会する黒田。 売れっ子小説家になっていた黄泉野に焚き付けられ、休職期間を利用して再び小説を書いてみることに。 やがて、黒田の人生は大きな変貌を遂げ、小説業界に大きなうねりを生み出すことになる・・・。 アプリ「マンガワン」で連載中。10/19に1巻が発売します。 スカッとした読み味のエンタメ性と、じとっとした文学性のバランスが絶妙です。 心情と描写がすごくマッチしていて漫画ならではの表現が素晴らしい。 セリフがすごく練られているのが分かる。鼓舞してくれる意味でも、痛いところを突かれる意味でも刺さってくるフレーズが多い! 毎回、次の話への引きが上手すぎるし、1話ごとに主人公の才能を予感させるシーンをちゃんと出してくれるから毎回テンション上がる。それでも当然、一筋縄ではいかない。 「小説を書く」という題材で起こり得る展開じゃないことが起きていてすごい。スピード感や迫力がスポーツ漫画で見られるようなアツいやりとりだったり、映画『サマーウォーズ』で鼻血出しながら暗算するような躍動感があってテンション上がる演出がきて最高です! 主人公の黒田は、人の目を気にして常識にがんじがらめに囚われて本心を隠してしまうような人なので、後輩の黄泉野の才能を目の当たりにして、真剣に小説家を目指すことを諦める言い訳を自分で作ってしまっていたんですね。ただ後輩の黄泉野だけは、黒田が良識を捨てて自分をさらけ出したすごい文章を書けると知っていたんです。 この二人の関係性がめちゃくちゃ良いんですねー! 黒田は器用だからこそ、一般社会で上手に立ち回れてしまうけど、売れっ子の小説家である黄泉野が、誰よりも、黒田本人よりもその才能を信じてくれているのがいい。黄泉野だけは黒田の不器用な器用さの奥にある狂気を認めているんです。 黒田的には、後輩の黄泉野の才能に嫉妬して一度は夢を諦めた部分もあったので、当然一番認められたい人は黄泉野で、その黄泉野に後押しされるからこそ、暗闇に一筋の光が差す。俺だってやってやる、という原動力、燃料になって外野の足を引っ張る言葉を全て黙らす展開がアツい。 自分のことを普通の人だと思ってやりたいことを押し込めていた人が、いざ動き出してみると、いろいろ常軌を逸していることが分かっていくのってテンション上がりますよね。 常識人ぶっていた人の才能がだんだん周囲にバレていく様子に、読んでいて快感が溢れていく。読んでいると頭の奥がカーっと熱くなっていく。こいつも天才なんだろうなっていうのがビンビンに伝わってくる。 「作家なんて社会不適合者ばかりなんだから」って黄泉野のセリフがあるんですが、二人ともしっかり頭のネジが外れている。他人からの視線を気にしていた黒田はネジを締めていたんですが、それを黄泉野が外しに来たような形になってて…良い。そもそも黄泉野に小説書くの勧めたの黒田だし、この相互に引っ張り上げ合ってる感じ。 竹屋まり子先生の漫画を読んだのは『あくたの死に際』が初めてなんですが、前作『女心@男子高校生』『井戸端は憑かれやすい』読んでみるとちょっと特殊なシチュエーションのBLコメディという感じなんですね。 BLの事情に全く詳しくない上での個人的な見解ですが、BLを描いていた漫画家さんが青年漫画を描くと、登場人物たちの友情とか嫉妬とかいろんな気持ちの矢印が繊細で上手に関係性に落とし込めていて深みが増してより面白くなる傾向にあるように感じます。 ヤマシタトモコ先生、『女の園の星』の和山やま先生、『ダブル』の野田彩子先生とかそうかな?江野スミ先生だったり、『光が死んだ夏』もそうかも。挙げ始めたらきっとたくさんあるかと思いますが。 キャラの間に、友情以上の複雑な気持ちが重層的に折り重なっている。 BL作家さんたちは、気が向いたらぜひどんどん青年漫画を描いていただきたい。それをいっぱい読みたい…。 小説家と才能がテーマのものだと『響~小説家になる方法~』は暴力的なまでに圧倒的な小説の才能で全員なぎ倒していく剛腕なタイプの話ですが、『あくたの死に際』は才能があるかないか関係なくとにかくやるんだ、という熱量と人間関係のドラマに重きを置いてるように感じるので、アプローチも描きたいことも全く違うのも面白いです。 実写化するだろうなと勝手に楽しみに思っています。
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2023/10/08
人類滅亡が懸かったクソガキ×天使と悪魔の疑似ファミリーコメディ!
ちょっと好きすぎる…!! クソガキに振り回される天使と悪魔のコメディだけど、人情が染みる…! 悪魔と天使が人類を滅亡させるかどうか討論するも、話し合いでは進展しないため、一人の人間を一定期間観察してその結果で審査するという。 そこで選ばれたのがイタズラを繰り返すクソガキ(少女)・上野サチで…。 https://shonenjumpplus.com/episode/4856001361458130011 可愛くて優しくて笑えて大好きです! 人類滅亡派・悪魔代表のボロスと、人類存続派・天使代表のラン。 二人がサチの行動を監視し、悪魔は悪行に減点を、天使は善行に加点。審査期間の終了時に持ち点がプラスで人類存続、マイナスで滅亡。 超越しているはずの存在である悪魔と天使の気安い人間臭さ・俗っぽさ も、サチのクソガキさも可愛くってクセになる。 悪魔が品行方正で、天使が欲深くて怠惰っていう分かりやすく逆でたまらないです。 サチも逆張り気質のあまのじゃくなので扱いが簡単に言うこと聞かせられないんですよね。それがいい! 第1話で分かるけど、笑えるだけじゃなくてじんとくるのも振り幅デカくてポイント高すぎてヤバイ。 サチに対する周囲の目線が、悪にも善にもなり得る未来ある子どもに対する優しい接し方もいいなぁってなります。 子どものコメディであり、悪魔や天使と一時的な疑似家族になるファミリーもののようであり、人類存亡の危機が一人の肩にかかっているという世界系でもあるという複合的な面白さ! クスッと笑える細かいフックも多くてすごい。 施設の人が防犯訓練で学んださすまた術で~と言いながら殺そうとしてきたり、庶民派ハリウッド俳優がまじで仕事選んでなかったり、先生が常に鼻血出てたり、他にもいろいろふんだんに盛り込まれてる。 番外編の短い話もショートで笑えて最高! 実は1ページ目で、神様が「例年通り人間神判で決める」と言ってるんですね。 「例年通り」って、これ毎年やってるってことなのか、いつもどおりって意味なのか。 毎年の場合、人類が滅んでないってことは…?と考えてもいいのかなっていう。悪魔が情に厚くていい人だし。 どう転んだとしても、人類(クソガキ)も捨てたもんじゃないなって結果になれば幸せだなぁ。 茶んた先生の読切もむちゃくちゃ面白いのでぜひ読んでみてください! 読切『小学生歯みがき習慣ポスターコンクール』 https://shonenjumpplus.com/episode/4855956445035434364
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2023/08/22
ネタバレ
「恋と陰謀」を描く魚豊先生の新作!
『ひゃくえむ。』で陸上を新しい角度から描くのに成功し、『チ。―地球の運動について―』で地動説、天動説に翻弄され意志を繋いだ人々のドラマを骨太に描いた魚豊先生の新作がついに! 始まりましたね! 今回、アプリ「マンガワン」での連載開始と同時に一挙4話分200pちかく公開というのが最高ですし、4話まで一気に読んでこそ、この話の本当のスタートを目撃できるかと思うのでぜひそこまで読んでみてください。 ▼裏サンデーでも1話が公開されてます。 https://urasunday.com/title/2484 【あらすじ】 レストランで英語話者の人物によりテロか虐殺か行われ死屍累々の現場から始まるという衝撃のスタート。 そしてそこには触れられず、主人公渡辺の物語が始まる。 小学校4年生での論理的思考を問う小テストでの優秀者というごくごく小さな勲章を胸に、人生上手くいかなくても少なくとも自分には「論理的思考」があると考えそれを支えに生きてきた渡辺19歳。 彼は非正規雇用でコンテナで荷運びをする日々の中で、始まっている気がしない人生に嫌気が差していたが、一つだけ希望があった。 彼の夢は、金銭的に成功し人生一発逆転することだったのだが…。 と、書いてみましたが正直一言で説明するのが難しい内容です。 ただ、これが面白い。 誤解を恐れずに言えば、「恋と陰謀」を魚豊先生らしく社会を斬ったラブストーリーになっていくんだと思います。 魚豊さんは、一旦全体のストーリーを結末まで考えて構成しているようなので、1話単位よりも1冊通して読んだとき、そして作品を一気に読んだときの読み心地を優先させているのかなと。 なので、まずは1巻相当にあたるページ数の4話までを読んでいただきたい。 そしてそこまで読んで「なるほどこれってこういう話になるのか、それでここからどうするつもりなんだ?」までが1セットで、早く続きが読みたいです! 言ってしまえば世に蔓延る様々な社会的格差をまともにくらって、明らかに社会的弱者である主人公が、そもそも社会的弱者である自覚もなく、さらに平等にチャンスが与えられていると信じて考えもなしに成功を夢見ているという痛烈な始まりです。 あえて言葉を選ばず書きますが、「自分のことを賢いと思ってる馬鹿」というのがどうしようもなく辛いです。 ここから知を備えた人物たちにより一つ一つ丁寧に世の中の仕組みが暴かれて彼の希望は繰り返し砕かれていき、恋に辿りつき、さらに陰謀論者に行き当たります。 何も知らずにぼんやりとそれなりに身近な幸せを噛み締めていく人生もあったかもしれないけど、彼は大きな幸せを夢見て無様にも何度も挑戦し何度も敗れた。 何度も希望を打ち砕かれ、自分では手に出来ない仕組みを説明され、格差を見せつけられ疲弊し絶望した先で出会ってしまった恋と陰謀論。 「恋」は全ての論理を凌駕し幸せに至る道であり、「陰謀論」は持たざる者がどうにもできない格差を全てひっくり返せるかもしれない僅かな希望なわけです。 全く繋がらないかに思えたというか考えもしなかったこの2つの点が一人の人物の中で繋がったときにどうなるのか怖すぎます! この題材を魚豊先生はどう描くのか! それを読んだ自分はどう思うのか! 楽しみで仕方ないです!
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2023/07/27
しょうもなすぎるたたかいのきろくに笑ってしまう!
「たたかい」とは得てして始まりはしょうもないものである。 小田扉先生の新作は最高に面白く1話だけで大好きになりました! 読んでいくと引き込まれてじわじわ面白さが込み上げてくるタイプの良さでした! https://comic-action.com/episode/4856001361536031451 これは「戦い」でも「闘い」でもなく、「たたかい」というひらがなにひらいているのがなんとも力が抜けて気持ちのいいニュアンスになってていいですね! さまざまな「たたかい」の「きろく」を描いていくこちらの漫画。 第1話から、わー!っと万歳したくなるほど楽しかったです! 「きろく」なので、あくまで時系列と起こった事象を淡々とマジメに追っていきます。 争いの種にはなっているものの、非常にしょうもなくてそれを語るほどのことなのか、という部分にもしっかりマジメにフォーカスしてるもんだからあまりにふざけていて馬鹿らしくて笑っちゃいました!でもあくまで「きろく」なんですね! そこに「たたかい」があるから「きろく」してるだけなんです! 人類が生きていくうえで絶対に「きろく」しなくていいことなのに! でも二つの立場があって意見が割れて互いに対してのさまざまな感情が積み重なったらそのとき事件が起きるわけですが、そこのそれは放っといてあげてというレベルまで詳細に掘ってくれてるので最高でした。 これが「きろく」するということなんですね! 早く2話が読みたいです!!
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2023/06/28
かなり好きなwebtoon武侠もの
主人公含め、登場するキャラがみんな立っていて面白いです! 武侠ものっていうジャンルの正統派がどこにあるか自分には分からないし、この作品は決して正統派ではないんだろうなと感じさせはするけど、この作者さんが料理すればなんでも面白くなるんだろうなという空気感があります。 https://piccoma.com/web/product/52248 最近webtoonをよく読む知人がいて意見交換していくなかで「武侠もの」にハマり始めました。 「武侠もの」は、あくまで10作品くらい読んだだけの知識でざっくり言うと、昔の中国で様々な武術が盛んだった時代・地域の達人たちによるバトルアクション、という感じのお話です。(詳しく知りたい方はちゃんと調べることをオススメします) 日本でいうと『バガボンド』とか『無限の住人』や『るろうに剣心』~『ドラゴンボール』の間くらいの空気感に近いんでしょうか。 剣にオーラみたいなもの纏ったり、剣から遠距離技みたいなもの放ったり、界王拳みたいなパワーアップ技もあったりします。 その武侠ものがwebtoonになると、フルカラーだし演出がしっかり派手で、転生だったりやり直しだったりと一つ設定が乗っかっていたり、スッキリする展開も多くて、もっと気軽でライトに楽しめる感じでサクサク読めます。 この『飛雷刀』は、転生とかやり直しとかそういったチートが無いので、キャラやストーリーに正面から向き合っててすごく好きです。 最初、両親を亡くした少年が両親の木像を彫ってたら、その器用さを買われて通りがかりの老師匠に誘われ武功の修行をすることに。 いざ修行が始まると無茶ばっかり言われるし雑用ばっかりさせられるしで最悪なんですけど、器用な主人公が飲み込みが異常に早いのでどんどんできていくわけです。 修行が進むと街に出るようになって新たな出会いもあり、今後の目標が立ったりしていくんですね。 年月が経って途中からの学園編?あたりの空気感は『Landreaall』に近いものもあるかも。たぶんもっと無茶苦茶だけど、良い意味で。 本格「武侠もの」ではなく、師匠との揉め事があったり、笑える理不尽な出来事があったり、恋愛に近い交流があったり、友人とのドタバタあったり、たまにシリアスなバトルもちゃんとあったりですごく楽しいです。 どうやら原作小説は韓国の武侠小説で歴史に残るほど大人気だったらしいので、これからもどうなっていくのか楽しみです。
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2023/06/12
UFOが吸うスピード遅すぎ!?ゲーマー女子の命を懸けた青春譚
前編だけで文句なしに面白いです!! いいところで後編に続くのズルすぎますね!? https://twitter.com/5670000000LDK/status/1668077030603378688 巨大UFOに吸い上げられたゲーマー小学生女子だったけど、吸い上げのスピード遅すぎて12年間空中で生活する話。 話の導入から思ってもみなかった軸で話が進むのすごいです! 普通のベタな思考だったら吸い上げられたあとにどうするか、どうなってしまうかを考えるところ、思考のリズムの手前の死角になってる角度からぶん殴られた感じ。 しかも主題が、前編の段階ではUFOとかSFものというよりも身動き取れないけど時間が有り余る状況をいかに有効活用するか、そしてもっと普遍的だけど同じ状況にある人にそのまま置き換えたときの不思議な共感まで描いていてちょっとすごかったです。 時間はテンポよく飛ばしながらめちゃくちゃいいところで後編に続くので来月号(7月12日)が待ち遠しすぎます!! 山素(やまそ)先生は、以前コミックDAYSに掲載されていた読切『時間跳躍式完全無劣化転送装置』(モーニング月例賞)も最高に面白かったです。 https://comic-days.com/episode/3269754496432828238
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2023/06/06
ゲームの中でアイテム作って売りまくって現実でも成り上がる!
先日発表された「ピッコマAWARD 2023」のSMARTOON部門を受賞していましたね。 https://piccoma.com/web/product/43170 世界最高のバーチャルリアリティゲーム<SATISFY>。全世界ユーザー数20億人が参加する壮大なファンタジーゲーム。 主人公は、借金まみれで日雇いの肉体労働で稼ぐゲーム中毒者の青年。ゲームばっかりやるから友達からも家族からも見放されていたが、ある日ゲームの中の依頼をこなしていると、まだ一人も存在しないレジェンドクラスの「伝説の鍛冶職人」に転職できる本を見つけ転職する。「伝説の鍛冶職人」になったおかげで、何でも武器を装備できるし強い武器も作れるようになって、それらを売ったお金を現実で換金して儲かってゲーム内でも現実でも底辺から成り上がっていく! という話です。 アイテムの力で猛スピードで成り上がっていく痛快なストーリー、縦スクロールならではのかっこいいアクション、仲間との絆、ゲームの世界のキャラ(AI)との恋愛まであって見どころがたくさん! 底辺を味わってきた主人公だから、ずっとお金にがめつくてとにかく根性で乗り切るところが面白いです。いろいろ運も向いてくるんですよね。 気軽にサクサクスルスルっと読み進められるのでちょっとした時間にぜひ。
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2023/06/01
「夢を諦めさせる」新しい教師像
めちゃくちゃ面白いですねー! これは令和の新しい教師像とも言えるんじゃないでしょうか。 学校の先生といえば、「夢を持て」とか「諦めるな」とか「夢の力を信じろ」とか力強く生徒の背中を押すような熱い言葉をかけるのが一般的なイメージがあります。 でも、このマンガは一味違って、夢を見る残酷さ、そのリスクを先生が徹底的に調べ上げて、夢を否定してるとも取れるような手厳しいことを言ってくるんですね。 挙句の果てには「夢にはくれぐれも気をつけてください」、「夢は人を殺しかねない」と生徒に言う。 そして、この先生が何故こういう指導方法なのかというと、実は元キャリアコンサルタントなんですね。 だから生徒にとっては厳しいかもしれないけど、敢えて良い部分だけじゃなくて客観的な事実としての夢の危険性を伝えてたってことが分かるんです。 夢を追いかけるリスクを聞いても夢に突き進む生徒たちですが、一時的に望んだ仕事をできるようになっても仕事によっては数年後に心身ともにボロボロになってたりする。 そんなときにそっと会いに来て前向きに諦めることを教えてくれて、新しい道を一緒に探す手助けをする。 夢を諦める手助けをする教師って聞かないので新しいし、面倒見よくていいですよね! 「ビッコミ」でも読めますね! https://bigcomics.jp/series/a9c40aa96eed5/
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2023/05/25
笑って熱くなれて感情動かされて笑っちゃう良い読切!!
さすがの【少年ジャンプ+漫画賞2022年冬期】準入選作品! めちゃくちゃに面白かったです! https://shonenjumpplus.com/episode/4856001361262757181 小6で好きな人をモデルにえっちな漫画を描く少女。その漫画を好きな人に見られてしまうが意外なリアクションで…。 思ってもみなかった導入から魅了されまくり! 最後まで飽きさせない展開に次ぐ展開で走り切ってて面白かったです!! 主人公の少女・七橋の、描いてる時の無我夢中で妄想を爆発させてペンにすべてを込めて描いているその姿にもう僕はめろめろです。 坂草くんもエロいことを考えているときの表情が、エロさに顔が蕩けそうになるのをキリっと我慢してるようなのを感じさせるぐへへって感じが出ててもう最高でした! 『ドキドキヌプヌプメモリアルはさよなら』というタイトルとサムネが気になりすぎて読み始めたら、内容的にも真剣(マジ)なのにおふざけにしか見えない二人の温度感がずっとこそばゆくて笑っちゃいました。 小学生だからこその全力な感じと真剣さって部分もありそうだし、中盤で判明する坂草くんの事情も相まって大げさにドラマティックになってるのが面白いですね。 単純に大胆なコマ使いや緩急、言葉選びも良くて読みやすいし、くだらない中にちゃんと存在していたアホみたいな伏線も素晴らしいし、漫画家の夢・青春・ラブコメ・どん底・上昇・ひっくり返るエピローグと盛りだくさんなのに整理されてて大好きです。 素晴らしい読切でした!
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2023/05/12
人肌な温度の可愛いがよくてずっと良くて浸ってられるラブコメ
なんだか愛おしくなる可愛さをもった大人の男女二人が送る日常系セーフセックスラブコメ。 https://ynjn.jp/title/9993 昨年、ヤングジャンプに掲載された読切版を経て連載化!ということでおめでとうございます! 読切掲載時だけなぜか名前を微妙に変更していたのはお遊びだったんでしょうか、気になるところです。 原作:『ギャルと恐竜』森もり子 改め 森開発 作画:『コーポ・ア・コーポ』岩浪れんじ 改め 岩波海岸(ビーチ) そして連載化してからは元の名前なので、なんでだかちょっとほっとしました。 読切では、男の自宅でセックスしたくて盛り上がってきたけど、部屋にコンドームが見当たらなくて、コンドームを買いに外に出るけどなかなかセックスに辿り着かないという話。 セックスを前にしたもどかしさと、男が素直にあわあわしてる可愛らしさとそれを見て愛でる女の可愛さ、そして焦らすようなからかいを見せる女の余裕さがとっても良いんですよね~。 そして、セックスに辿り着かないその時間、その時間こそを楽しく過ごせるこの二人っていいよね、という気持ちで溢れてきます。 連載では、この読切の2人の居酒屋での出会いから始まります。 やっぱりなかなかセックスしそうでしない、という展開にはなるんですけど、この会話の気持ちよさ、テンポや温度、お互いに可愛いなって思ってる距離感すべてが気持ち良いんですよね。 可愛いなって思うその温度感も、沸騰しそうなものじゃなくて、人肌のぬるま湯な感じのじわ~っていう温度だからずっと浸ってられる良さがあります。 絵もいいんですよ、岩浪れんじさんの。 ちょうど気だるそうというか、肩に力入らず気負ってない感じ。あと愛ちゃんの顔の輪郭が適度にふっくら丸いのが好き。シャープじゃなくて丸みのある顔に、いつも薄く微笑んでる感じが菩薩味があっていい。 おっぱいとかおしりとか、体のラインがめちゃくちゃきれいでエロいのがすごい。 https://twitter.com/iwanamirenji/status/1656524710409306113 これからも見続けていたい二人です。 読切版はこちら https://tonarinoyj.jp/episode/3270296674368099152
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2023/05/09
最高の漫画が始まった予感
なんだこれ…。すごい。好きすぎる。 奇妙で現実的で不思議で具体的な夢を見ているような…読んでるうちに引き込まれて実際に手触りを感じられるような漫画だった。 トーチwebで始まった新連載『緑の予感たち』がちょっとスゴイです。 https://to-ti.in/product/midori-no-yokan 短編連載なので、1つ目「カッパの理髪店」を読んだ現時点での感想になる。 どこかで見覚えがありそうな、誰しも馴染みのありそうな風景。 奇妙でありながらファンタジーと呼ぶには地に足がついていて、日常の延長線上に実在するんじゃないかという感覚がしっかりとある。 唐突、だけど必然。 物語は不思議な冒頭から、リアルなバイト事情、そして煮え切らない男女の恋模様へと、主題と場面がコロコロと変わっていく。 そこがミソかもしれない。 どこが話の軸になるんだろう、誰が主役なんだろうと読んでいくと気付けば登場人物たちのギリギリ読み取れそうな関係性のリアリティに絡めとられ、読者の視点は次に何が起こるのか出来事を素直に追うだけの目になっていく。言葉の端々と表情から読みとろうと夢中になる。 それは、現実の男女の関係性に対して巡らせる思考のはずだった。だったのだが、その真っ只中へ唐突に放り込まれた非現実にかき乱されるも、不思議とこいつが妙にしっくりくる。 それは全くの無関係な非現実ではなく、まさにこの心のありようこそが核になった非現実だったからだ。でたらめだけど、そこにはきっちりと心情の筋が通っている。故に納得できてしまう。 ここに持っていくまでの腕力がすごい。 この話の転がし方、派手じゃないのに予想が付かずに最後まで分からない展開の面白さは、映画『スリービルボード』を彷彿させる。 絵も最高に良かった。 コマの中の線の情報量、線の柔らかさ、微妙な表情の変化、光と影の付け方、全てがこの話にしっくりくる。 短編連載でおそらく不定期掲載なので、単行本になるのは2024年だと思うけど、早くも単行本を買いたい。 読んだあとに、これは持っておきたい…棚に並べたい…手に持ちたい…という所有欲が溢れてくる。
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2023/05/01
嘘から人生一発逆転!で死んだ心と向き合うラブストーリー?
真面目が取り柄でパッとしなかった芸術家人生の逆転劇であり、偶然の出会いから始まる同居ものラブストーリー!? 30半ばにして画家として花開かず焦ってニューヨークへ行くも「いいひと」として便利に扱われ、いよいよ追い詰められたときにとった行動がなぜか著名クリエイターに評価され、あれよあれよと天才芸術家になってしまった主人公。 しかし、良くも悪くもその一つの嘘から全てが変わっていき…。 https://bigcomics.jp/series/17bc2f08d091b 一発逆転できるビッグウェーブが目の前に来ていたら、評価される対象・行為が真実だろうが偽物だろうが乗っかるしかないのかもしれない。 ただそれが偽物だった場合、真面目な人ほど心が死んでいくが…。 という、まさかの人生逆転の一手を手にした真面目な男の話。 しかしそこには魂はなく、表面的に評価され祭り上げられたことで罪悪感、空虚さが込み上げてくる。人生最大の嘘をついたことで犠牲にしたのは芸術への情熱だった。 ただただ日々を過ごすなかで、非常勤講師を務める大学の食堂の女性と妙な接点を持っていく。 「嘘は嫌い」「嘘はひとの心を殺すから」と語るこの女性との出会いが、果たして主人公の人生にどういった影響を与えるのか、今後が楽しみで仕方がない! 1話ラストでこれは!と思いましたが、恋愛に発展するのかどうかもまだいまの段階では分からないです。 が!楽しみにしてます!!
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2023/04/27
2話目が読めるか分からない最高の1話!
面白かった! 掲載される漫画が、第1話というコンセプトの新増刊「ヤングジャンプダイイチワ」に掲載されてるわけですが、他の新人作家さんたちとは明らかに別枠で圧倒的でした! 原作は、みんなご存知『ワンパンマン』『モブサイコ100』のONE先生! 作画は、ヤングジャンプ本誌でも連載中『カタギモドシ』で圧倒的作画力の設楽清人先生! このタッグはアツい!! 転校生・羊谷真は、クラスで関わるなと言われている気弱な少年・黒道武弘と隣の席になり、昔イジメられていたことと人生を上手く生きる裏技を教える。すると、黒道からはあるもの見せられる。それは、人知れずこの世に存在していたバグのようなもの、正真正銘の「裏技」で…。 高校生男子二人の青春SF(すこしふしぎ)かと思ったら、不穏さもありどうなってしまうんだ、とこの先が気になりまくる1話でした! 青春の楽しさ、からの落差、からの突き上げが最高でした! ONE先生、『ワンパンマン』の原作やりながら、 『バーサス』のシナリオ原作もやって、 https://natalie.mu/comic/pp/versus 『バグエゴ』も文章での原作ということで、めちゃくちゃ忙しいんだろうな…。 https://twitter.com/ONE_rakugaki/status/1651247115530809344 第2話が、いつどこで読めるのか今から楽しみです!
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2023/03/06
ネタバレ
こんなの絶対に面白いじゃん!っていう「キメラ」狩りアクション!
数多くチェックしたここ数ヶ月の新連載の中でもトップクラスに楽しみな新連載!! となりのヤングジャンプでスタート! https://tonarinoyj.jp/episode/4855956445115379262 多様な生物を取り込み巨大化する生物「キメラ」。 命を懸けて巨大なキメラを狩って生計を立てる「狩人」のユーリが主人公。 狩人として活躍し生活も豊かになり自由気ままな時間を満喫していたが、異変が起こり…。 1話の段階だとこれからどうなるのか全く読めないけど、絶対面白いの確定の超獣ハンティングアクション! 読切『一番槍の狩人』の連載版!! https://ynjn.jp/title/8703?20230126080530 読切の時点で完成度が高くてすでにテンションめちゃ上がってましたが、連載版の連載っぽさ最高~!! あ~、なるほど、読切の味わいそのままにそこを新たに膨らませるんだ~!!というワクワクと納得感! 読切の良さはやっぱり、巨大なキメラに挑む激しいアクションと対極のスローライフな雰囲気のまったり生活でした。 この対比を毎回見れるのも幸せだな~なんて思っていたのですが、そんな素人でも思いつくような連載形式にはしないのがこの作品のすごいところ! 第1話後半で予想の斜め上をいく変化球を投げてくれましたね! こうきたか!と。 絵も綺麗でかっこいいし! 古びて半壊した鉄塔がチラッと背景に出てきたり、もしかしてこの世界は僕たちの世界の地続き上にある?と思わせられる設定も良い!! 「キメラ」の特性上、もしかして生物テロかなにかの未来にあるとか? と、考察するのも今後の楽しみになりそうです!
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2023/02/13
ネタバレ
32歳、再会してふたり暮らしを始めた女ふたりのこれから
読切『普通の人でいいのに!』でネットがどよめき、『まじめな会社員』で、日本中のみんなの心を掻きむしって「このマンガがすごい!2023」オンナ編第3位を勝ち取った冬野梅子先生の新連載! この連載が始まって今日は昼から心がざわざわしていました。 https://comic-days.com/episode/4855956445047546735 それぞれ恋に破れて再会した32歳、高校の同級生の元・売れない役者とフードコーディネーターの女ふたり暮らし! 内容のこと書く前に、まずめちゃくちゃ読みやすくなってます! これまでの画面内に大量の文字詰まった形も好きだったんですが、すっきりしてるし、心の声もこれまでよりかなり減ってます。 その代わり、ナレーションが入ってるのでドラマっぽさというか、実写化にすごく向いてる雰囲気がすでに出てますね! そして冬野梅子さんの漫画で好きなのはなんといっても「図」の魅力。 こちらは健在だったのが嬉しい限り! 全体的に読みやすくなってるので、それで離れたことある人はこの機会にぜひ読んでもらいたいところ。 元・売れない役者できれいにしてるけど怠惰でふらふら生きてバイトしてる待宵マリと、フードコーディネーターとしてしっかり仕事をしてキレイな部屋に住んでる菅野翠が、高校時代の弓道部で意外と仲良かったというのがいいんですよね。 マリは幽霊部員、翠は県大会入賞とまったく違うけど、違うからこそ、関係ない部分で仲良くなれたのかな。 この結果からも分かるように努力型でしっかりしてる翠に対して、その場の感情に任せてる奔放なマリという対照的な二人。 いろいろあって翠の部屋にマリが転がり込んでふたり暮らしが始まる。 そして、この二人に対してまたフラットな視点としてカレー屋の鳥飼さんという男性がいて、いい具合に距離とってるのが客観的でいいんですよね。 客観的でありつつ、少し身を引くタイプの人間なので、消極的な翠と積極的なマリに対する反応も見てて面白いです。 人間関係も立体的になっていきそうでこれから楽しみな連載です! 読切『普通の人でいいのに!』はこちらから読めます。(https://toyokeizai.net/articles/comic/500510)
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2023/02/03
ヤベー女たちが魅力的すぎる!!恐怖と笑いのオムニバス
『絶望の犯島―100人のブリーフ男vs1人の改造ギャル』や、『バスタブに乗った兄弟~地球水没記~』の櫻井稔文先生の最新作! 「小説幻冬」での連載ですね。 こちらからも少し遅れて読めます。 https://www.gentosha.jp/series/otokonoinaionnatachi/ 『男のいない女たち』というタイトルから、独身女性の真面目な話などを想像してしまうかもしれませんがそっち方面じゃないんですよね。 恐怖の激ヤバ女たちを扱った話で怖くて笑えて最高に面白いです!! https://twitter.com/b_sakuraichi/status/1618275758824394757 まず、第1回のタイトルからして最高。 「犬ストーカー女」て!!ド直球!! 男性が犬を連れて散歩していたら、犬に惚れた女が翌日から散歩コースで待ち伏せし始めてストーカー行為が過激化していくんですが、こうれがもう絶品! 大好き!! このぶっ飛んじゃった女性自体は怖いけど、受け手の男性のテンションが面食らって戸惑ってはいるのに、どこか冷静というか呆れてるような冷めた温度感なのもちょうどいいんですよね~。 こういうヤバくてオモシレー女たちを描いたオムニバスだと思うんですけど、楽しみすぎません!? 小説幻冬にはなかなか手が伸びないんですけど、こうやってweb掲載もしれくれたのは本当にありがたいです!
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
2023/01/20
ネタバレ
青春の天国とどん底でぐるぐる
小骨トモ先生の新作読切。 短編集『神様お願い』が重版かかってるようでおめでたいです。 https://comic-action.com/episode/316190247110230189 友達がいない映画好きな高校生の小林くんが映画館で映画を観て一人泣いていると、一学年上のリカ先輩も泣いているのを発見する。 初めて同じ学校の人と出会った嬉しさと、涙を目撃し同じ視点を共有できた喜びで胸が高鳴るが…。 友達がいないから、いやだからこそ友達がいないのかもしれないけど、一人で抱えて誰にも話せずぐるぐる考えてどろどろに煮詰まって相手を見てるのか見てないのか、勝手に期待して失望して一方的に思いを吐き出して突き放していてどろどろでとてもよかったです。 小林くんの場合、同じ「視る瞳」を共有できたと思ったからこそ、全部共有できると期待してしまったのかもしれないし、それが借り物だと分かって裏切られたと感じて深く傷ついてしまったのかもしれない。 そして小林くんはそこでぶった切ってしまった。 そのコミュニケーションの先にあったかもしれない何かは思春期ならではの爆発でかき消えてしまった。 「世界はなんて美しいんだ」と、リカ先輩から降りてきたこの一本の蜘蛛の糸ですべてが救われたと感じるほどに感動したからこそのこの落差だった。 一時は同じ感情を持てたはずのに、それすら憎悪の対象としてしまった彼の青春は救われない。 どん底でよかったです。