吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
1年以上前
小さい男の子が、頭が提灯のおじいちゃんに絵本の読み聞かせをお願いすると、目がかすんで読めない代わりに自身が知る少し前の話を話し始める。 そこで語られるのは、1923年(大正12年)9月、関東大震災が起こった直後の東京での出来事。 一人で暮らす父を訪ね、少年がしゃべる提灯を片手に東京を歩いていると凄惨な光景が目の前で繰り広げられる。 そして震災後の混乱の中で「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマから始まり、朝鮮人の虐殺に発展していく。 この光景を記憶に焼き付けた「提灯お化け」は少年に語る。 決してこの灯を消してはいけないと。 https://twitter.com/sakumo_info/status/1542672690523213824 文献3冊からの引用、そして参考文献が6冊。 中盤以降の画面を覆いつくすような凄惨な情報量に目を覆いたくなった。 ここで目を背けてはならない。 まずは知ること、そしてどう思うか、思考停止してはならない。 いつもどこかユーモアが感じられた作風だったが、テーマがテーマなだけに今回は感じられなかった。 読後、衝撃でしばらくぼんやりしてしまった。 よりよく生きるために、気を付けなければいけない。 いままでの妖怪読切シリーズがまとまった8月の短編集『ようきなやつら』の発売が楽しみだ。 https://twitter.com/sakumo_info/status/1529670580311846913
酒チャビン
酒チャビン
1年以上前
黎明編に引き続き、ヤマト編を読みました。 時代としては手塚治虫公式サイトによると、4世紀頃とのこと。物語としては、ヤマトタケルインスパイア(オリジナルの方を知らないのでどれくらい下敷きになってるのかわわかりませんが)です。 黎明編の最後で崖を登って旅立ったタケルが出てくるのですが、それが80年前とのことなので、前作は3世紀の設定ですかね。黎明編には卑弥呼が出てきて、卑弥呼は242〜248年ころ没とのことなので、大体そんな感じかもしれません。 黎明編のタケルが外界に出て作った国の名が「クマソ」なのですが、これはタケルのお母さんが生まれ育った国の名と同じで、黎明編で滅ぼされてしまっているのですが、同じ名前をつけているところがすごくジーンときました。 長さ自体は結構短く、1時間もあれば読み終わってしまうのですが、体感としてはかなり内容が濃く、読み終わった後の充実感がありました。 印象に残った一コマは、オグナがかなりサイケデリックな背景の中、火の鳥に笛を聞かせているシーンです。P-FUNK系の曲調だったのでしょうか。 作品のメッセージ自体は「生きる幸せとは」といったかなり壮大なものですが、作風がかなり砕けており、すごくわかりやすく読みやすいので、お子様にも安心してオススメすることができると思います。 次回は、作中の時系列で読み進めるということだと、「太陽編」の半分くらいが7世紀なのですが、もう半分が21世紀なので、前編8世紀頃の「鳳凰編」とどちらに進むか迷います・・
ひさぴよ
ひさぴよ
1年以上前
表紙とタイトルで、飲んだくれの医者のように勘違いしていたが全然そんなことはなく、ちょっとガサツだけど患者の気持ちに寄り添う心温まるスポーツドクターの物語だ。作画は『解体屋ゲン』でおなじみ石井さだよし先生で、大昔の初期作品を収録した短編集となる。初出は書かれてなかったけど、まんがSeekで調べたらビッグコミックオリジナルで1974、1989、1990年と不定期に載っていた作品とのこと。 https://mangaseek.net/work/18278.html 人情ドラマであると同時に、スポーツと医学の関係についてもしっかりと描かれていて、最後の方にはブラインドサッカーらしき選手が登場するなど、現代から見るとかなり時代を先取っていた作品だったのではないか。作画についても1コマ1コマがきっちりと描かれていて、この時代のアナログで描かれた漫画の手仕事って本当に素晴らしいなあと思う。同時収録の「ウドの達人」はやや時代を感じてしまう内容で、好みは別れるところかも。 スポーツドクター漫画で言うと、『ドクターメシア』『ドクターゼロス』『ママはスポーツドクター』など読んできたが、作品数は多くないけど、いずれもハズレなしの面白い作品の多いジャンルだと思った。