クルドの星
『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』の偉才・安彦良和が、中東の火薬庫「クルディスタン」を舞台に描く冒険活劇の初期傑作、ついに電子化!日本人の父とクルドの母を持つ真名部ジローは、生き別れになった母からの手紙に導かれ、10年ぶりにトルコを訪れる。しかし、その手紙はジローをおびき寄せるために、クルド武装ゲリラで「鉄の腕」(デミレル)の異名を持つカシムが出したものだった。ジローはイスタンブールでクルド人ゲリラとトルコ治安軍との対立に巻き込まれ、トルコ東部辺境の地クルディスタンへと逃れる。部族が潜む秘密の洞窟でジローが出会ったのは、同じ「ジロー」という名を持つ不思議な少年だった──。クルディスタンは今もなお、国際政治の狭間で翻弄され、戦禍の中にある。しかし、トルコ治安軍の弾圧にも、サダム・フセインの化学兵器にも、イスラム国のテロにも、アサド政権の空爆にも屈しないクルドの人々。その不屈の魂の淵源に触れることができる、貴重な一冊だ。「剽悍な民族クルドはそのような民である。典型的に勁くしたたかな、しかし非業の民である。絶えず生存をおびやかされながら、しかしきっと生存し続けてゆく民族である。我々は結局そういう彼等の姿を此岸から黙って見守るしかない」(著者あとがきより)