hysysk2020/08/06爽やかなひと夏の青春ファンタジーと言えなくもない不思議な展開がありつつ、ちょっと切なくなる作品。 登場人物とかモチーフが変なだけで、やってることは大長編ドラえもんとかと同じだから。しかしどうやって考えるんだろうこんな話。。夏の手大橋裕之
hysysk2020/07/22ダラダラと馬鹿馬鹿しく面白い元葉書職人の売れない芸人が悪魔に嫌がらせを受けながら漫才を頑張る話なのだが、何でこんなことを思いついて、何がやりたいのか全然分からない。謎のシュールな展開や妙に細かい芸人の世界の話を挟みつつ、ひたすらダラダラと馬鹿馬鹿しい出来事が続く。作中の漫才や大喜利は芸人に協力してもらう力の入れよう。同名で話題作があったため(こっちの方が先に描いてたにも関わらず)途中でタイトルが『テラートワイライト』に変わった。悪魔を憐れむ唄古泉智浩1わかる
hysysk2020/07/21みんな 見ろっ 広く感じる部屋ができたぞおっ!!📷主人公は田舎から出てきた建築デザイナーを目指す高校生。トップの成績で合格を果たし、持ち前のセンスで先輩やライバルを内装バトルや建築バトルで打ち負かすのだが、すべての実現可能性(最後は高校生が1人ずつ無人島で家を建てる)、評価の内容に納得できないので突っ込みながら楽しむしかない。 とはいえ子供向けにこんな珍しい設定で挑んだのは素晴らしいと思う。これ読んで建築の道を目指した人がいて欲しい。 役に立つ知識としてはピート・ハインのスーパー楕円テーブルと、部屋を広く感じさせるレイアウトは正方形を意識しろというのがある。建作ハンズ河本ひろし
hysysk2020/07/20高校時代のどうしようもなさ田舎の高校で、勉強も部活もそれほど力を入れず、異性にもモテることなく、だらだらと毎日を過ごす。そんな若さの無駄使いこそが最高の贅沢であったことを教えてくれる作品。こんなに美しい最終話はそうそうない。 自分も先輩から洋物のエロ本を継承したことを思い出した。思い出す必要なかったのに。ジンバルロック古泉智浩
hysysk2020/07/20どげせんからの枝分かれ土下座観の違いにより『どげせん』から、RIN先生の『どげせんR』と板垣恵介先生の『謝男』に分裂したとのことだが、実際は作品として世に出す時に要求する水準の違いが原因だったようだ。どっちが面白いかは読者に委ねるということになったが、どっちも割とすぐに終わってしまった。 上から抑えつけるのではなく、ただ下手に出て謝るだけでもなく、「祈り」が込められているところに板垣先生の鋭さがある。もっと読みたかったな。謝男板垣恵介1わかる
hysysk2020/07/20深淵をのぞくとき…「のぞきが得意な探偵もの」という設定から、見るという行為に潜む暴力性や哲学性にまで踏み込んだ快作。このテーマは『ホムンクルス』にも繋がっているように思うが、何も考えずに楽しめるしキャラクターも魅力的でエンターテインメント性が高い。 タイトルでエロい漫画なのかな?と思って読んでなかったのを後悔した(下ネタや性描写はある)。新のぞき屋山本英夫
hysysk2020/07/20読み応えある短編集世界で一番大変と言われる中国の官僚試験を描いた『儒林外奇譚』がまず素晴らしい。『みるせん』は将棋と自意識が複雑に絡み合った不思議な作品。強くなることだけが全てじゃないことを教えてくれる。『デバッガーノリコ』はゲーム会社時代を思い出した。表題作の『今日の授業は良い授業』は劣等生を教える塾講師が主人公の、心温まる話。 どの話も設定と目の付け所が良いなと思う。実体験が元になっているものも多いようだけど、人生の楽しみ方を知っているというか、何事にも面白みを見出すタイプなのだろう。今日の授業は良い授業左藤真通
hysysk2020/07/20生きづらい人が生きづらい理由私は多少趣味やキャリアパスが人と違っても、それを誇りに思うタイプなので全く生きづらさを感じてこなかった。むしろ逆境が活力になっていたりする。 そういう人間からするとこの作者みたいな人はめちゃくちゃイライラして、「そんなんだから駄目なんだよ」「虐められる側にも原因がある」みたいなことを言いたくなってしまう。母親がきつく当たっていたのも分かる気がする。 しかし。こういう人達がどのように感じ、何に苦しんでいるのか、考えたことはあっただろうか?いや、考えることはできないのだ。人の気持ちを想像するというのは、その人の思考方法をインストールしないことには無理と言ってもいい。そして初めて知る。 こんなに細かいことを考えていたのか、と。 とにかく考え過ぎだし、正解があると思い過ぎだし、原因と結果を安易に結びつけがち。自分の中だけで思考が先走り過ぎてずれまくっている(話の中で彼女が納得している答えも私から見ると違っているように思える)。そりゃ生きづらいわ。。 世の中には色んな人がいて、色んな考え方がある。私とは全く違うタイプだしほとんど共感もできないけど、だからこそ非常に参考になったし尊重したいと思った。わたしはだんだんわたしになる 自己肯定感が欲しい!akko
hysysk2020/07/182巻が良かったおっさんの気持ちを若い女性のキャラクターに代弁させるシリーズが面白い。おっさんが美少女を愛でるのは何も彼女らを征服したいからではなく、自分がなりたいからなのだが、それもそれで気持ち悪がられそうなので大っぴらには言えない。 読者と一緒に歳を取っていくか、特定の世代をずっと相手にし続けるかは作家としての戦略に関わるが、読者のライフステージの変化によって面白いと思えるかどうかが変わってしまうものが多いように思う。普遍性とは何かというのが逆に分かるし、そこをクリアした長編が読みたい。ぐっとくる細かいポイントを突く観察眼は素晴らしいから。スイートメモリー吉田貴司
hysysk2020/07/17戻りたくないけど懐かしい日々何者でもなく、根拠のない自信があり、劣等感もあり、異性が気になり、成果は思ったほど上がらない。自分にも浪人時代があったのだが、この作品は読後に何も残らないところも含めて「あの感じ」を味わうことができる。人間のタイプとしては浪人するような奴が好きだ。サマーブレイカー古泉智浩
hysysk2020/07/17現代でキテレツ大百科をやるならキテレツ大百科やドラえもんが超名作かつ発想の宝庫なのは自明として、現代的な感覚からすると足りないものがある。 それはメタな視点。こんな道具があったらこんな風に悪用するとか、道具使ってるのバレないようにわざと失敗して辻褄合わせようとか、便利過ぎて解脱しかけたりとか。転生もののチートに近いかも知れない。 かといって完全に何でもありじゃなくて、ちゃんとSF的なアイディアは応用しているし、「現実世界のCtrl+Z(アンドゥ機能)」や「母親がシリコンバレーでCEO」など、今っぽくアップデートされてる。とにかくテンポが良くて読んでて楽しい。りもで・りんぐふくた伊佐央11わかる
hysysk2020/07/15クセになる1話完結オムニバスよく引き合いに出されるのは『世にも奇妙な物語』とか『笑ゥせぇるすまん』とか星新一のショートショート、なんだけどこの例え若い人に通じるのか? 1話完結で、毎回違う主人公、徐々に脇役として馴染みのキャラクターが増えていく。基本的には普通で取り立てて特徴のない人か、要領が悪くいじめられがちの人が最終的にうまくいったり、うまくいきそうなところを欲をかいて失敗したり、単に嫌な目にあったりする話が多い。何事もプラスがあればマイナスがあり、利息がついたりもすることもある(作者は元銀行員)。 改めて読み返すと1巻の1話目だけが特殊で、何の仕掛けもなくいきなり植物になってしまう。文学的でいいなと思うんだけど、話を作りにくいのか受け入れられにくいのか、その後は不思議な道具の効果で不思議なことが起こる形式となる。明日から真面目に生きようという気持ちが湧き起こってくる名作。Y氏の隣人吉田ひろゆき1わかる
hysysk2020/07/13一瞬で読み終わるし満足度が高い死刑制度がなくなり、島流しが極刑となった日本が舞台。主人公は殺された家族の仇を取るためにわざと罪を犯してこの島に乗り込む。凶悪犯だらけの島なので、当然ハードなサバイバル生活が待っている…という設定にまず惹かれるし、実際面白い。 その後この島に隠された秘密や、主人公の家族殺害の真実が明らかになるのだが、展開がよくできていて一気に読んでしまった。サバイバルのところがもっと長くても良かったと思う。Season 2も読みたい。天獄の島落合裕介3わかる
hysysk2020/07/13今まで読んだデザイン漫画でベストデザイナーが主役となるとどうしても仕事とか業界が話の中心になるし、それでいいんだけど、この作品はちょっと違う。踏み込み方がデザイナーの生き方そのもので、具体的に今まで出会ったデザイナーの顔が思い浮かぶようなリアリティがある。いやあびっくりしました。アフォーダンスとかランドスケープデザインみたいな大きなデザインの話をしているのも良い。 全人類に読んで欲しい点として、デザイナーは1話に出てくるようにクライアントからパクリみたいなことをお願いされたりするんで、作った人だけを責めないでそれを指示した人、決定した人の存在や業界の構造にも目を向けてね、というのがあります。デザインノイロハ藤原嗚呼子3わかる
hysysk2020/07/12ゆるく見えて本格的仕事マンガ4コマだからほっこりドタバタしたやつかと思ったら、かなり細かくデザイン業の現場を描いてるものだった。しかも専門用語やマニアックなこだわりを笑いにする方向じゃなくて、装丁に関わる色んな人、漫画家がいて出版社があって編集者がいてその上司がいて…それぞれの仕事の仕方が複雑に絡み合う中で起こるトラブルや嬉しい出来事を丁寧に拾い上げている。 デザイナーが良いと思うものとクライアントが求めるもの、世間が評価するものはどうしてもズレる。そういう中で試行錯誤して合意形成していくところにデザイナーの腕の見せ所があるな、と身を引き締めました。 ちなみに書籍の装丁は数々の名作を手掛けているBALCOLONY.で、巻末に取材もあります。まんがの装丁屋さん小石川ふに1わかる
hysysk2020/07/10こんな話だったんだ小学生の我々をさんざん悩ませた電影少女(当時のみんなの言うことを信じるなら読んでる人はいなかったはず)が終わって、何かまた同じようなのが始まったぞ、と思ったのを覚えているが、改めて読むと全然違う。SFバトル漫画だったんじゃん! 作者のアメコミ趣味や鳥山明との交友関係など、大人になった今なら彼らがやりたかったことが何となく分かる気がする。残念ながら唐突に終わってしまう感は否めないけど、意欲的な作品だったと思います。これ(とSHADOW LADY)があってのI”s<アイズ>。 D・N・A2 ~何処かで失くしたあいつのアイツ~桂正和
hysysk2020/07/09記憶よりもきつかったジャンプ+にもないのにKindle Unlimitedで全部読める!となって懐かしさで読んだが、今の感覚からするとかなり厳しいと言わざるを得ない。 連載当時を思い出してみると自分は小学生で、近所の少し年上の友達に『行け!稲中卓球部』を読ませてもらっていたのでそれのパクリだと思っていた。それは小学生ゆえの知識のなさからくるものなのだけど、意外とその感覚は長く引き継がれてしまうものだ。 鈴木智恵子や奈良の母親いじりみたいのは当時もレベル低いと思っていたけど、ああいう毒舌・下ネタ・内輪ネタ、つまりは「ぶっちゃけ」が笑いになる時代だった。今だと事前に摘み取られるか、先鋭化して一部の集団にのみ支持されるようなものになるのだろう。そういう意味で貴重な記録だし、読みながら何が変わって、何が変わらないのかを確認することができる。幕張木多康昭
hysysk2020/07/071巻だけでよかったかな。。普通であるにも関わらず、普通であることに耐えられない人間が、露悪的に振る舞う結果良くないことが起きる話、というのがいくつかの話に共通する短編集。普段思っていても言わないことを言ってしまっているのが、気持ちいいと言えばいいし、単に奇を衒っているだけとも言えて何とも困る。読む時の気分や体調にも左右されるかもしれない。 1巻は面白く読めたのだけど、2巻はひたすらきつい話で読後感も悪く、徒らに心を掻き乱されるので、そういうのを敢えて楽しめる人でなければうっかり読んでしまわないように気をつけた方がいいと思います。一匹と九十九匹とうめざわしゅん1わかる
hysysk2020/07/01こんな風に生きていたい📷最年少で世界記録樹立とか、30歳未満の優秀な人物30人とか、数億円の資金調達だとか、こんなに素晴らしい人がいるんですよ、皆も頑張ろう!夢を持とう!世界をより良い場所に!努力・友情・勝利!…生きていると日々そういった煽りが目に入ってくる。もちろんそれ自体は悪いことではないし、勇気づけられることもある。 でも別に、毎日だらだらしたり、親戚の伝手でたまに仕事したり、友達と別れる時はちゃんと見送ったり、迷った末に5000円貸してあげたり、大麻吸ってゲロ吐いたり、それで良くないか? こんなことを言うと冷笑的だととられそうだが、自分はどちらかというと熱血的でマッチョな方だと思う。努力しなければ現状維持すらままならないと思っている。でも「本当に」それが、そんな世の中が望ましいのかと聞かれたら、違うと言うだろう。誰もが慎ましく生き、他人の価値観に左右されず、ちょっとだけ悪いことをするような世界が好きだ。トコトコ節いましろたかし2わかる
hysysk2020/06/26数学オリンピックを目指すスポ根的数学青春マンガ数学は好きだけど数学オリンピックはあんまり興味ない。でもあれがいかに狭き門で難しくて熱い世界なのかはちょっと分かった気がする。 本当は私も一日中数学について考えていたいのだけど、経済合理性がなさ過ぎるのでやってない。もっと若い頃に受験以外の数学の世界に気付いてれば人生違ったと思うので、若者は読んでみて欲しい。 #1巻応援数学ゴールデン藏丸竜彦38わかる
hysysk2020/06/25こんな面白いのに何で誰も教えてくれなかったのかF先生版のまんが道的な要素もありつつ、得意の少し不思議が枯れた大人向けの至高のファンタジーになっている。 実写映画化もされていて、トキワ荘周辺の漫画家たちがこぞって出演しているのが微笑ましい。映画好きな彼らだから、さぞかし嬉しかったことだろう。 短編などを除けばこれが最後の作品ということだけど、このコンパクトさでしっかり王道にまとめあげるのは究極の名人芸ではないだろうか。今まで彼が描いてきたモチーフが織り交ぜられているので、細かい部分を読み込むのも楽しい。未来の想い出藤子・F・不二雄3わかる
hysysk2020/06/23神ですら分からない現代の欲望『刻刻』も大好きで本作も本当に楽しく読んでるのだが、先が気になり過ぎて我慢していたコミックDAYSを購読してしまった。今なら遡れば7巻の終わりから最新話まで途切れず読めるしめちゃくちゃ盛り上がってるから今ですよ今! 物語は終盤に差し掛かってるような気がする。7巻で「フクノカミは現代の人間の欲望や価値感覚が分からないのではないか?」という仮説が出てきた。我々は歴史を学ぶ時などに、過去を現在の感覚で捉えて「昔の人はこんなものを信じてたんだなぁ」などと上から目線になってしまいがちだが、実は「過去から現在がどう見えるか」という視点こそが重要なのだ。人間は昔からお金に振り回されてきただろうけど、今のように庶民がお金で頭がいっぱいな時代(株、FX、不動産、インフルエンサー、保険、仮想通貨…)ってあったのだろうか。 そういった「当たり前に過ごしているけど、よくよく考えたら変だぞこれ」っていうものを象徴的に表現するのに、ファンタジックな現象をうまく利用している。細かい描写に一貫性とリアリティがあって安っぽくならない。 堀尾先生自体はあんまりSNSとかやってなさそうなのに、IT系の話題もしっかり消化して小ネタに挟んでて面白い。あと個人的に恋愛描写が好き。心理戦とか駆け引きを描くのがうまいからかな。ゴールデンゴールド堀尾省太3わかる
hysysk2020/06/18もったいないの極致ちょっと『童夢』みたいな『POCKY』やエッセイマンガなど、こんなのも描けるんだ!という驚きに満ちた短編集。間違いなく才能があるんだけど、それゆえに完成させられないなんて、こんな皮肉なことがあっていいのだろうか。 椿屋の源こと狩撫麻礼と組んだ『平成大江戸巷談 イレギュラー』なんて、描き切ってれば実写化とかされて歴史的作品になってそうな勢い。でも狩撫と組んでも完成させられないとしたら、一体どうすればいいのか。それでも多分、みんなが待たずにはいられない、ずるい魅力がある。江口寿史のお蔵出し江口寿史
hysysk2020/06/17当時と現在とでは同じ受け取り方ができないひばりくんは身体的には男性で女性として生活しているのだが、悩むでもなく性差別を是正しようとするでもなく、ただただそうすることが当たり前であるように振る舞うところがいい。「変態」だの何だの言うのは周りだけで、今の目にはそっちが異常に映るほど。 同性を好きになることの何が駄目なのか。異性の格好をするのに問題はあるのか。作者はギャグとして描き、時に差別的な突っ込みを入れているが、根源的にはそういった疑問を持っているのだろう。 同性愛自体は紀元前からある訳だし、進んでるとか遅れてるとかいうのはあんまり意味がない。ただ、1980年代の日本てこんな感じの意識だったんだなというのはよく分かる(「外人」は良くない「外国人」と言うべきみたいな描写はあったりする)。 最終回がこんな途切れ方(コンプリート・エディションで加筆されてはいるものの)なのも逆に良くて、時代が違えばもっと違う展開がありえたかも知れないという可能性についても考えさせてくれる。ストップ!! ひばりくん! コンプリート・エディション江口寿史5わかる