hysysk2019/01/18フィクションであることの救い話としては結構心をえぐられる。ワニを飼っているという設定のおかげで寓話性が出て「そこまで深刻に捉えることもないな」と思えるのが救い。大島智子『セッちゃん』と通じるものを感じた。pink岡崎京子1わかる
hysysk2019/01/02私が思う芸術の力私が思う芸術の力というのは、元気や勇気をもらうみたいなポジティブなものではなくて、この作品のように「駄目さに誘惑する」力のことだ。殺人犯の口から人を殺す話を聞く、出所したら大麻を取りに行く約束をする、小豆とマーガリンを挟んだパンを隠れて食べる(見つかったら仮釈放取消し)…順風満帆、特に不自由のない人生を過ごしていたとして、「本当にそれでいいのか?」と語りかけてくるような体験が描かれている。読み終わってから冷静になって考えると、「やっぱこのままでいいや」と思うんだけど。 刑務所の中花輪和一
hysysk2018/12/31消えてなくなったんじゃなくて、全部に広がっちゃう身体が塵みたいになって拡散してしまう「病気」で、自分の意志ではどこに移動していつ実体化するかコントロールできない男が時間と空間を超えて色んな人と出会う。 この設定や世界観で小説『マレ・サカチのたったひとつの贈り物』やドラマ『Stranger Things』を思い起こしたが、描かれたのは1992年。完成までに6年かかったらしい。 話されている言葉がかなり内省的で、何を言っているのかよく分からないのだけど、とにかく絵に迫力があるので、目で追うだけでも「不思議な体験したなぁ」と思えるくらい没入できる。拡散小田ひで次
hysysk2018/12/30短編集を描いてるマンガ家という設定ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」に想を得て、各作品は主人公によって描かれた短編集という設定になっている。「ワイルドマウンテン」の元になったような話もあって、あの作品もこういう風に細かい話を繋ぎ合わせて作っていたのかも知れないと思った。ラーメン屋の行列に並んでる兄弟と、その母親と再婚を前提に付き合ってるらしきオッさんが気を遣ってる様子を観察する「若葉のころ」が好き。 新作もビートルズの「ホワイト・アルバム」に影響を受けてインドで構想を練ったらしい。 http://www.akishobo.com/akichi/moto/v1本秀康名作劇場本秀康
hysysk2018/12/23デビュー初期だからできる表現表題作に顕著な、選んだモチーフを処理しきれてない感じと、でも描きたかったんだろうなという感じが初々しい。この人が持っている良さを保ったまま作り続けてもらいつつ、より多くの人に読まれるにはどうすればいいか、勝手ながら担当編集の気持ちになって考えてしまった。そういう意味で「書店員 波山個間子」が連載作品になるのはすごく納得いく。幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい黒谷知也2わかる
hysysk2018/12/22数字であそびたい大学で数学を学んでない身からすると、「高校でやってたあれはこういうことだったんだ!」という発見がある。自分も主人公と同じく暗記で乗り切ったタイプなので(見ただけで覚えられるほどの力はないが)、すごく共感しながら読んだ。登場人物が異能を持ちながら基本的には駄目人間てのがいい。数学の知識がなくても十分楽しめるし、京都に土地勘ある人はローカルネタも楽しめると思う。数字であそぼ。絹田村子1わかる
hysysk2018/12/20小規模デザイン会社のリアル「山を渡る」が面白かったので読んでみたら、大好物のデザイン業界の話だった。デザインの大変さと難しさ、でもそこが楽しい!という部分がすごく活き活きと描かれてる。この作者は好きなことに打ち込む人の話がめちゃくちゃ上手いと思う。 正解があるようでない感じ、癖のあるクライアント、クライアントの会社の人間関係や政治、気合いの入ったプレゼン、自分が作ったものを思いがけず目にするなど、あの苦労と快感を味わった人なら確実に「これ、あるわ〜」となるはず。 でかい会社じゃなくて、個人が立ち上げた小規模なデザイン事務所が舞台なとこも良くて、近所づきあいとか、ランチの様子とか、普通の生活にデザインが入ってくるところが好き。リアルな部分とマンガ的な演出が絶妙で、もっと続いて欲しかった。鴨の水かき空木哲生
hysysk2018/12/17本格サスペンスとは実写から起こされたような絵とCGで作ったような建築物やクリーチャーが独特の質感。いろんなSFっぽい要素を詰め込んでいて、とにかく勢いがある。『みんなのトニオちゃん』収録の「アルバイト(BUTTON)」通称「5億年ボタン」みたいな振り切りが欲しかった。未知次元菅原そうた
hysysk2018/12/17セッ大島さんと言えば、絶妙にセンスのいいモチーフと言葉を選んでTumblrにGIFアニメーションをアップしているアーティストという認識だった。自分とは違うし周りにはいないけど、どこかには存在しているらしい、そんな人達の生活を覗き見ているような感覚。なのでマンガもその延長というか、退屈そうなカップルがだらだら駄目な日々を過ごす中でちょっとドキッとさせられる表現が出てくる、みたいなものを想像していたが、全然違った。ある時代の東京の、あの空気をこんな風に描けるのは本当にすごい。これがCanCamのウェブ上で連載されてて好評だったということも、自分の認識を色々と改める必要性を感じさせてくれた。。セッちゃん大島智子
hysysk2018/12/08ネタバレ本物のファンタジー二足歩行で日本語を話す猫が住んでいる島にやってきた主人公が、そこの秘密や仕組みを明らかにしたりしなかったりしながら日々を過ごす。 だいたい1話完結で、最後にポエティックな1コマが来ることが多い。これが全くいやらしくなく、意外性があるため読む度に想像力を刺激してくれる。近代美術やビートルズ、宮沢賢治などの影響が散りばめられているのも楽しい。主人公の最後の決断含めて今こそ響く作品。コスモス楽園記ますむらひろし
hysysk2018/12/05ネタバレこんな展開思いつかないものすごく長い前振りと余計な部分のみで作られているようでいて、どれもこれも伏線であるような、壮大で重厚な作品。後半はなかなか精神的にきつい話になってくるので、可愛い見た目とくだらないギャグで何も考えずに読めた頃が懐かしくなる。ワイルドマウンテン本秀康1わかる
hysysk2018/11/28粗削りな魅力絵もストーリーも扱っているテーマに追いついてるとは思えないけど、何とか表現しよういう勢いが感じられるし、小さくまとまってしまわないなりの魅力がある。 1巻の最後の方と2巻は丸々『ヤサシイワタシ』なので、既に持ってる人は買わないか、リスペクトを込めて買うか。ひぐちアサ初期新装版 傑作選ひぐちアサ
hysysk2018/11/11ネタバレAらしさこの、何とも言えない「そんなうまくいくかよ!」という話の進み方と、パターンが出来てきたところで絶妙に裏切る感じがAっぽい。最初はちょっと乗れなかったけど中盤から面白くなってきて、最後で一気に持っていかれた。愛ぬすびと藤子不二雄(A)1わかる
hysysk2018/10/24今ならアウトなサラリーマン仕事マンガ小さい頃に祖父母の家で読んだ記憶がある。おそらく叔父が所有してたもので、当時のサラリーマンに対する世間のイメージがジェンダー観含めて色濃く反映されてるように思う。学歴を持て囃したり、学歴だけあっても駄目だよと言ってみたり、宴会芸を頑張ったり、(今ではギャグにならない)セクハラパワハラ当たり前の世界。現代的な感覚からするとパワーワード満載でTwitterにでも貼り付けて投稿したら数千RT稼げる気がする。やらないけど。いっしょけんめいハジメくんコンタロウ
hysysk2018/10/22気楽に読める数学ギャグマンガ日常生活に関わるものが多いので、確率の話(じゃんけん、宝くじ、同じ誕生日)がよく出てくる。マイナスかけるマイナスがプラスになる理由とか、くじの公平性とか、マンガならではの表現でイメージを掴むのにいい。インド式計算とか恋のゲーム理論も面白かった。「補習授業」として各話の後に詳しい解説もついてる。 迷信やことわざ、日常会話でよくある思い込みを数学的に論破しちゃったりするので、知識として知ってはいてもマウンティングには使わないように気をつけたい。数学と文系ちゃん ~役に立つ数学のススメ~タテノカズヒロ1わかる
hysysk2018/10/19ねじ式は6巻美術予備校に通ってた頃に友達に教えてもらった。当時は鈴木翁二が人気で、その影響を遡って行き着いたんだと思う。今は「無能の人(14巻)」とかが沁みます。つげ義春作品集つげ義春
hysysk2018/10/11よくできてるな〜日常生活でのささいな疑問、そういやこれってどうなってるんだっけという話題(自分の身長よりも高い木の高さをどう測るか?骨しかない恐竜の重さをどうやって推測してるのか?など)を分かりやすく解説してくれてるし、絵も洒落てるし、ちゃんとマンガとして面白い。この良さ、子供の時に分かりたかった…。 おまけコンテンツとして収録されてる編集部日記も楽しそうで最高。こんな仕事いいなぁと思う。内山安二コレクション内山安二
hysysk2018/10/01ちょうどいい旅行僕は旅行をする時、観光名所を周るよりはその土地の人の普段の暮らしを体験したいと思う。日常の延長上にあって、ちょっと逸脱した気分を味わいたい。前々からしっかり予定を組むんじゃなくて、ふらっと週末あるいは平日に行けてしまうような…。そんな欲望に応えてくれる作品。 大阪名古屋から東京に帰る途中、静岡あたりで寄り道したくなる気持ちとか、めちゃくちゃ分かる。ぱらのまkashmir3わかる
hysysk2018/09/25自分の地元が出てくるのが楽しみ色んな出身地の人がいる大学生とか、社会人はより楽しめると思う。これ読んで育った子供が大人になった時に語れるくらい続くと素敵だな。ジモトがジャパン林聖二
hysysk2018/09/16短いながらも濃密史実とファンタジーを絡ませながら時間と場所を変えて続いていく話(『火の鳥』とか)がまず好み。色んな人間の死生観や思惑が真理を解明する障害になっていて、さらにその不利益を被る人が沢山出てくるので落ち込む。爽やかな気分になる話ではないけど、生きていく上で起こる絶望や希望が神話的に描かれていると思う。 収録されている短編の『指』も素晴らしい。まず「18歳になるまで(確かに使っていたのに)自分の指を指だと認識しなかった」という描写に驚かされる。自分の身体も歯が生えたり毛が生えたりお腹がちょっと出てきたり、相当に変化してきているが、こんなこと考えたことなかった。イアラ楳図かずお1わかる
hysysk2018/08/24広告デザインの現場かつて広告制作会社で働いていたこともあり、何となく雰囲気はわかる。オーソドックスなA案、少し変えたB案、大胆に変えたC案を出すのもよくやった。 短期間のプレゼンでクライアントの想定を超える物量のデザイン案を作ったりする、「一流の人はここまでやるんだ!」っていう部分がリアリティを持って描かれてるし、デザインは自己表現じゃない、という話も(割と今は認識されてる気もするけど)通俗的なイメージを更新するものだと思う。 自分が業界を離れたからか、最近はこんな感じの「強いアートディレクター」を見ない気がする。激務が当たり前の業界で、描きにくい部分もあると思うけど、ぜひとも切り込んで欲しい。戦うグラフィック。西野杏1わかる
hysysk2018/08/03当時の小学生はどんな気持ちで読んでたんだろうか割と自分も(後になって気づくと)大人向けのマンガを読んでいたので面白みは伝わると思うが、一般的に想像するような子供向けマンガのドタバタ感や分かりやすいオチはない。 地下道に住んでる大妖怪カエルちゃんとのやり取りが最高。 あんずちゃん「お前ここで何やってんの?」 カエルちゃん「何にもしてないよ 寝たり起きたり」「穴掘るのが趣味だからさーたいくつだと穴掘って遊んでるんだ」 あんずちゃん「かっこいいじゃん」 あるがままの自分でいい、ということではなく、こうなるしかない、みたいなキャラクターがいましろ作品の魅力。何もしてなくてもいい。宝くじで3億円が当たっても、やりたいことはなくていい。 とかく夢や目標を持たなければ駄目だと言われがちな小学生(そしてそれを分かっていて大人が喜ぶようにうまく立ち振る舞えてしまうやつ)にとって、こういうスタンスは目から鱗なんじゃないかと思う。 『グチ文学 気に病む』というエッセイにこの作品を描いている時の話が出てきて面白い。小学5年生が「先生と話がしたいから家に遊びに来てくれ」というファンレターを送ってきたり、宝くじが当たると色んな人がたかりにくる噂は都市伝説であることを担当編集が調べてたり(えらい)。 個人的には、いましろ節が利いてて、モラルの面でも思想的な面でも安心して人におすすめできる作品。化け猫あんずちゃんいましろたかし4わかる
hysysk2018/07/26無茶苦茶うめえ〜「陽子のいる風景」「ちひろ」がたまらなく好き。静謐な作品でありながら、コマとコマの間の動きが気持ち良く脳内で補完され、音まで聴こえてきそうな臨場感がある。地上の記憶白山宣之1わかる
hysysk2017/12/25忘れてた記憶が蘇るもしかしたら授業で先生が言ってたかも知れないけど忘れてしまった数学を勉強する際の心構えとか、疑問に思ったけど教科書では「そういうもの」とされていて納得できなかった話が、すっと入ってくる。章の終わりに丁寧なまとめもあって良い。パート5は初歩的な統計学を扱っていて、仕事にも役立つ。マンガでおさらい中学数学春原弥生 佐々木隆宏