hysysk2022/02/10人間の自由は不自由を避けたところに生じるのではない原作者である黒井千次の小説は何作か読んだことがあるが、働きながら執筆活動をしていたことは知らなかった。これは彼が専業作家になる前の体験を元にした書籍を漫画化している。 就職先を決めるタイミングが大学4年なのは現代の感覚からすると遅く、会社の決め方もずいぶん贅沢なように思う。パソコンのない時代の仕事ってこんな感じなのかなという雰囲気だが、細かい業務に現れる労働の本質は変わらない。何よりそれぞれのストーリーに体験が伴っているので単なる道徳的な説教にはないリアリティがある。 色んなタイプの同僚と出会うことで自分の殻を破っていく様子には共感を覚えるし、働きながら夢を追う人が多い現代にこそ読まれると良い作品だと思う。 第9話「職業のありか」が一番好き。大半の仕事ってこれだよなぁ。漫画 働くということ池田邦彦 黒井千次3わかる
hysysk2022/02/07こんなギャグマンガが存在する驚き陸軍中野学校は実在した日本軍のスパイ養成学校(竹宮惠子先生の父親が分校出身)で、今の感覚だと取り扱うのに注意を要するように思うが、ギャグとはいえ(だからこそ?)1985年に名前も変えずモチーフにしたというのは驚き。 実際に沖縄で教師になりすましていた人や、ビルマで僧になりすましていた人もいたので、下手に史実を知っているとなかなか笑えない設定が出てくる。当時の戦争に対する意識ってこんな感じだったのか、私が気にし過ぎなのか、これ自体が高度なプロパガンダなのか。。陸軍中野予備校安永航一郎
hysysk2022/02/03やっぱり鳥山明が好き格闘技に長けた主人公、おてんばなヒロイン、お調子者だけど大事なところで仕事をする脇役、因縁のライバル、世界征服を企む悪者…とどうしてもドラゴンボールを思い起こしてしまうが、これはこれで楽しく読めるし、キャラクターやデザインはやっぱり抜群にいいな〜と思う。カジカ鳥山明
hysysk2022/01/31何周かして現代的なテーマ私は段取りが苦手で何とかしたいのと、それゆえにライフハック的なビジネス書や大人のADHDを抱えた人がどうすればうまくやれるかみたいな本も割と読んでいる。この作品は段取りを「やらなければいけないこと」「できないといけないこと」とは別のものとして描いているのが良い。失敗もする。 限られたリソース(といってもおかずの具とか)のなかで最大限楽しむにはどうすればいいかというのは彼の他の作品にも通じるし、いまやジャンルとしても定着している。既にかなり多くのことがコンピュータや機械の発達によって解決されているが、それはこのように考える人が沢山いたことの証拠であり、なんだかんだ社会は進歩(と同時に複雑化)しているのだなぁと実感する。ダンドリくん泉昌之3わかる
hysysk2022/01/27いつの時代にも、どんな仕事にも理想を追うのか現実と折り合うのか、お金をとるか美学をとるか、そういった悩みは誰もが経験するところ。しかし実のところそれらは二律背反ではなく、両方叶う場合もあるし両方叶わない場合もある。運、というのもあるんだけど何か一つの要因で説明できないから「残酷」なんですね。 特定の立場を殊更に持ち上げる訳でもなく、ただ漫画に対してその人なりの向き合い方をした、という姿が愛おしい。 真実や正義が人の数だけあること、その真摯さと滑稽さを教えてくれる『ラ・クンパルシータ』(3巻第4話)が好き。漫画家残酷物語永島慎二1わかる
hysysk2022/01/22仮想通貨には手を出すな!いやまぁ、仮想通貨でないと買えないものもあったりするので別に持ってていいと思うんですけど、投機目的で手を出すなということです。株だったりFXとかと一緒。 こういうのって何となく失敗したらペナルティとして借金を負わされるものというイメージだったのですが、仮想通貨が直接こちらに負債を負わせる訳ではなくて、仮想通貨で儲けようとして誰かからお金を借りた時に発生してるんですね。それで仮想通貨の価値が下がったら元金を返せなくなる、という。 だからお金を借りたり、そもそも生活が成り立たなくなるほどのお金を仮想通貨に変換しなければ良いだけ…なんだけど色々あってそういう判断ができなくなる恐ろしさが描かれていると思いました。特にスマホとの親和性の高さが怖い。ずっと気になってしまったり、意図に反してボタンを押して巨額のお金が消えてしまったり…。とにかく手数料には気を付けよう。仮想通貨体験記かいち2わかる
hysysk2022/01/13フランスで大人気と聞いて人気なのはアニメらしい(名前も『ゴルドラック』となっている)が、回顧展や切手の発行、バンドデシネでのリメイク、そしてゲームの開発と、影響の大きさと深さが伺える。そもそもの日本アニメブームのきっかけがこの作品で、ディズニーなどのアニメとは違う世界観が衝撃だったとのこと。 原作は1巻完結で、少し物足りなさはある。しかしそれが結果的に想像の余地を残し、これほどの広がりを生んだのかも知れない。 UFOロボグレンダイザー永井豪
hysysk2022/01/04よくこんなに多様化したと思う #推しを3行で推す自分が子供の頃はカレーといえば欧風カレーかそば屋の和風カレーしかなく、ラーメンも塩、醤油、豚骨くらいでつけ麺はなかった。餃子に到ってはわざわざそれ目当てで店に行くなんてこともなかったと思う。 グローバリゼーション、食文化の発達、そして東京という激しい競争の場がこのような状況を生んだのだとは思うが、次から次へと新しい美味しいものが出てくる。どの国のどの地域がベースになっているか、どこの店の系列なのかなど、体系化して説明しているのが面白い。まんぷくコミックエッセイ伊藤ハムスター 小野員裕 石山勇人 広野小生1わかる
hysysk2022/01/01能力に目覚めたらそりゃ悪用するよな #推しを3行で推すカネコアツシならこう描くだろって感じのダークヒーロー。正義と悪が単純な二項対立でないこと、世界に対する恨みの持ち方が今っぽい。カネコアツシ、望月ミネタロウ、松本大洋は自分が若い頃から読んでいるが、それぞれに表現が深化している。 EVOL (イーヴォー)カネコアツシ2わかる
hysysk2021/12/17ネタバレ業界人には思い当たる節がありそう私はファッション関係の仕事をほとんどしたことないが、それでも知人や友人から様々な噂は聞くことがあって、びっくりするような人間がいるのは事実。 何というか業界にどっぷり浸かりたくはないけど片足突っ込みたい人間が踏み抜きそうな地雷が描かれているのが絶妙で、程度の差こそあれ業界的にはよくある話だと思う。そういった見栄やゴシップ、努力と才能と人情と搾取が拮抗して煌びやかな世界を作っているとも言える。 現代的な倫理観や物分かりの良さが引き起こす危険性も描かれていて、サスペンスとしてもかなり面白い。この辺りの単純に割り切れない様子を描けるのはこの作者ならでは。ファッション!!【電子単行本版】はるな檸檬2わかる
hysysk2021/12/10現地在住のブロガーが書いているだけあって現地在住のブロガーが書いているだけあって、さすがの情報量で看板のない店まで紹介している。ローカルな店の入り方や注文の仕方は知らないと戸惑うのでありがたい。あとこういう類の書籍には珍しく著者が男性で、男性が好きそうな食べ物や入りやすい店が中心なのも自分には良かった。 都内でも台湾料理が食べられる店は増えてきているが、やっぱり日本人向けに調整されてたり、土地代が高いせいか現地よりも高級な雰囲気になってしまう。台湾では自炊するより外食の方が安いと言われるほど外食文化が根付いているので、あの体験をそのまま持ってくるというのは難しいんだろうな。激ウマ! 食べ台湾Aiwan 妻鹿もえぎ1わかる
hysysk2021/12/07渋いところに目を付けたな絵画修復家の観察眼と知識が謎解きに活かされるというミステリーと美術史が組み合わさった作品。そう、絵画には化学の要素があるし建築は工学だしトリックと相性が良いのだ。掲載誌が休刊になってしまったせいで長らく連載中断となっているのだが、歴史的にも謎が多くて色んな仮説や妄想が渦巻く話をピックアップしてるので、西洋美術が好きな人は読んでみて欲しい。絵画修復家キアラたまいまきこ1わかる
hysysk2021/12/06日本にとって並行世界みたいな国電車内でも携帯で話す、お茶碗を持つのは無作法、結婚式のご祝儀は直接口座に振り込む…などなど、見た目や文化は日本と似ているけど、正反対なところもあり、SFの並行世界みたいな感覚になる。厳しいと言われる大学受験の仕組みも載っていて面白かった。高校1年から夜10時まで学校で勉強、その後塾とか大変過ぎる。 個人的には韓国の合理的な考え方は自分に合ってると思うし、何かを成し遂げる際に徹底的に努力する姿勢は見習いたい。へぇー!韓国ではそうなんですか?かおり ゆかり2わかる
hysysk2021/12/02有名店の知らなかった季節商品からワニの手までお土産でも贈り物でも、有名店で何か買う時って、定番か既に食べたことがあるものに偏りがち。頻繁に通うこともないので、季節によって売られる商品が変わっていることすら知らなかった。配送料がかかることも、交通費に比べれば全然安いんだし、どんどん使っていきたい。お歳暮、クリスマス、新年、バレンタインデーなど、これからの季節に心強い味方。おとりよせっていいな。藤沢カミヤ1わかる
hysysk2021/11/28英文法マスター編、英会話スタート編が良かったシリーズの1巻にあたる「だいじなとこだけ」に関しては本当に基礎で、自分にとってあまり新しい情報はなかったが、2巻にあたる「英文法マスター編」の不定詞の解説はあいまいな理解がすっきり整理できたし、3巻にあたる「英会話スタート編」の言い換えのコツやネットを活用したセルフチェックの方法はかなり勉強になった。 この本では「英語と日本語はそもそも考え方が違うので、英語をそのまま日本語に置き換えようとしてはいけない」ということを何度も言ってるのだが、本当にその通りだと思う。 これは別の本で読んだことだが、ネイティブスピーカーはある単語を覚える時にそれが数えられるか数えられないか、どんなシチュエーションで使うか、他にどんな単語と結びつきやすいかを経験から学んでいる。それを第二言語習得者が母語と突き合わせて一対一でパズルみたいに合わせようとすると、間違ってはいないけども意味が通じなかったり、シチュエーションにそぐわない奇怪な文章になってしまう。そして年を取って母語に慣れれば慣れるほど、難しい表現や最適化された考え方をするため、ますます別の言語に翻訳するのが難しくなる。 そういった意味でも中学英語に戻るのは最適だし、何より英語を話すことに対して背中を押してくれるエピソードが沢山載っているので、コンプレックスを抱えている人も気持ちが楽になるはず。マンガでおさらい中学英語フクチマミ 高橋基治1わかる
hysysk2021/11/19韓国ひとり旅行の味方『女ひとり 韓国ごはん旅』は食べる時に友人と一緒なことが多かったが、こちらは完全に1人。韓国でのひとりごはんのハードルが高いという悩みに応えたブロガーらしい切り口になっている。 6年前の作品なのでトレンドの違いはあるが、むしろここ数年でこういったものがどんどん日本に輸入されてきているなぁという印象を受ける。美味しい店の検索の仕方や防寒対策、バスの乗り方まで解説してくれるのはありがたい。女ひとり たらふくソウルHALE1わかる
hysysk2021/11/12먹으러 가고 싶어요!初めて韓国に行ったのは2012年、それからほぼ毎年旅行していたのに、コロナのせいでこの2年は我慢を強いられてきた。ようやく一般人にも制限が解除されそうとの噂を耳にしたので、この漫画でモチベーションを高める。 原作者は韓国料理好きが高じて留学し、東京でお店を開いている。そのため紹介する料理は精進料理から定食、市場、スーパーでの買い出しまで幅が広く、レシピも載っている。特に市場での海鮮は未体験なので行ってみたくなった。 タイトルに「ひとり」とあるが実際は現地で友人たちと一緒に食べているので、1人で食べる際の参考にはならない。最近では韓国でもひとり飯(혼밥)が定着しつつあるみたいだけど、基本的には沢山の人と沢山の種類のおかずを食べるのを良しとする文化。よく食べてよく飲んでよく遊ぶけど次の日は朝からしっかり仕事する、あのエネルギーをチャージしに行きたい。 女ひとり 韓国ごはん旅ヒラマツオ acha
hysysk2021/11/08正体は言い過ぎ実際にあった残虐な事件の内容や、それに至る流れが描かれている。正体と言うのであれば事件前後の部分にもっと焦点を当てて欲しかった。情状酌量の余地がない犯人もいれば、社会の構造が生み出したとも思える犯人もいて、やり切れない気持ちになる。 第一話の一家支配解体殺人事件は『闇金ウシジマくん』の「洗脳くん」編のモデルにもなった事件。これと第二話の愛犬家連続殺人事件に関しては巻き込まれて加害者側になってしまった人が不幸過ぎる。とにかく悪い人間に目をつけられると自分も加害者になってしまう可能性があると思うと怖い。道徳だけではどうにもできない。 第八話のホームレス襲撃事件もひどい話だが、これだけで「今そうした子どもたちが確実に増殖している」という結論になるのは違和感を覚えた(ここ20年くらいで少年犯罪の件数も率も減っている)。 事件がきっかけで法律が変わったほどの話もあり、良くも悪くも人間の想像力の限界を突きつけられる。しかし法律が整ったとしても社会が自動的に規律正しくなる訳ではないし、監視を強めたり、ましてや犯罪を起こしそうな人間を排除することは解決ではないだろう。読後感は悪いが、人間がここまで酷くなれてしまうこと、一体社会がどうなっていれば止められたのかなど、考えるきっかけになると思う。殺人犯の正体鍋島雅治 岩田和久3わかる
hysysk2021/10/26元ドワンゴ社員が読んでみたと言っても私はもう退職して10年近いし、末端だったのでほとんどひろゆきさんと絡んだことはない。たまにエレベーター前で見かける程度で、1度だけ関わったプロダクトのレビューを受けた。まともなことを言っていたように思う。ネット文化に理解があって堅苦しいことは言わないので、話が早い人ではある。 それにしてもここ最近、テレビやニュース、SNSで彼の話題を目にしない日はない。論破王などと呼ばれ、若者のオピニオンリーダーになる日が来るなんて思ってもみなかった。 この漫画はそんな彼が普段見せない姿を描いてくれているのだが、一体誰がこんなひろゆき(敢えて呼び捨て)を知って嬉しいのだろうか?彼を昔から知っている人間からすると特に意外性はなく、「宇宙語」と呼ばれる言葉遣いがキモいなと感じる程度。普通の夫婦のエッセイ(結婚式の写真がカラーで載ってる)という感じで、もしかするとそれこそが狙いなのかも知れない。「あの2ちゃんねるを作ってサラリーマンの生涯賃金を1年で稼いだにも関わらず賠償金を踏み倒しまくってる論破王も、僕らと大して変わらないんだな。微笑ましい!」 …なんて思うか( ゚Д゚)ゴルァ!!だんな様はひろゆきwako 西村ゆか6わかる
hysysk2021/10/25現代の東京が抱える課題山盛りサラダ女性の警察官、同性愛者の警察通訳がバディを組んで国際犯罪に対処する。と言っても密輸や窃盗団みたいな大規模な事件ではなく、訪日・在住外国人が起こした軽犯罪が中心。しかしそういうところから大きな事件に繋がる場合もある…。 2人ともこの仕事を選んだことについて何かしら抱えているものがありそうだが、そこはまだ明らかになっていない。舞台が東新宿周辺なのが良くて、日本で食べられる世界のローカルフードグルメ漫画要素もある。 よく海外ドラマを多様性の観点から褒めそやし、それに比べて日本は…という意見を目にするが、日本だとその役割は漫画が担っているように思うし(みんなもっと読んで欲しい)、この作品にはその流れで他のメディアに展開されても評価される要素が揃ってると思う。東京サラダボウル ー国際捜査事件簿ー黒丸5わかる
hysysk2021/10/22自分よりも高度な知性をもった狂人に何が言えるっていうんだ?↑ほんまこれ という感じで、監視社会やパターナリズムの恐ろしさを思い知ることができる。そしてこのような社会は物語の中だけでなく現実にも存在しているが、対抗する有力な手段は持てていない。 そしてもしかすると人間はこういった形を望んですらいるのかも知れない、ということがこのコロナ禍で明らかになってしまった。2+2=4と言えること、法的根拠のない時短営業要請には従わなくても良いこと、何とか守っていきたい。1984年 -まんがで読破-バラエティ・アートワークス ジョージ・オーウェル1わかる
hysysk2021/10/18理想のためなら犠牲にしてもいい人がいるのか?理想のためなら犠牲にしてもいい人がいるのか?危険に晒されている人がいて、助けられるのが自分たちだけなら危険を冒してでも助けるべきか?突然強大な力を持ってしまった子供たちがその権力の危うさに振り回されながら戦う。 正義と悪の戦いというよりは、それぞれが正義と信じるものとのぶつかり合いで、なかなか考えさせられる内容だった。今の世界の状況からしても、重要な議論がたくさん含まれている。何度かアニメ化が試みられては頓挫しているようだが、ぜひ実現して欲しい。 糞虫と呼ばれる忍者みたいなキャラがかっこいい。ザ・ムーンジョージ秋山
hysysk2021/10/07上京した人には思うところあるだろう広告で見かけて気になった。42ページ110円(税込)で気軽に読めるのもいい。家父長的な価値観、閉塞した田舎って嫌だよねというのは上京してきた地方生まれ地方育ちとして共感できる。 しかし、その見方もかなりステレオタイプで、正直違和感の方が大きくなってきた。例えばこの主人公だって、葬式に参加しただけで、その準備や片付けには関わっていない。自分もある種の特権的立場にいて、他の誰かが代わりにやってくれているのだという認識は持っておいた方がいいと思う。帰郷冬虫カイコ1わかる
hysysk2021/09/21温泉ガッパドンバの御童先生初期作品厳しい校則の施行に反対し、規則に縛られずに生活できることを証明するため中学生が学校公認で夫婦になるというとんでもない話。でも対象読者である小学生くらいの感覚を思い出してみると、好きな子とどうなりたいかって結婚以外にない訳で、フィクションとしてはちょうどいい距離感かも知れない。 今なら家事の大変さとかジェンダー的な視点も交えて面白い方向に持っていけそうな設定だが、徹頭徹尾夜の生活をいかに実現するかという内容で、当時の子供や大人がこの作品をどう思っていたのかすごく気になる。愛(ラブ)いただきます!!御童カズヒコ