nyae
nyae
2021/04/07
中東シリアでヤマザキ一家と出会った猫ゴルム
ものすごい数の国境を超えた引っ越しを繰り返すヤマザキマリとその家族。 この漫画の舞台である中東シリアの首都ダマスカスには、旦那さんのベッピーノの希望により移住することとなり、そして再びイタリアへ引っ越す2ヶ月まえに出会う猫・ゴルムとの日々を描く。というよりゴルムの目線で物語は語られる。 世界中いろんな場所でいろんな猫とともに生きてきた著者が言うには、シリアに住む猫は肝が座っていておおらかなのが多いらしい。ゴルムの目から見たヤマザキマリ一家の滑稽な日常描写もさることながら、このシリアという場所がこのあととんでもないことになるという事実が、読んでいて頭によぎる。 あとがきによればイタリアに引っ越す前の時点ですでに平和とは言えない状況だったらしいけど、それでもあそこまで長引いて、歴史的な建造物や遺産がなくなってしまうとは思いもよらなかっただろうなと思います。猫が主役の愉快な猫マンガですが、いろんな背景を思うとゴルムはとても不思議な運を持った猫だなと感じます。 ぜひイタリア引っ越し以降のゴルムの生活を描いた続編も読んでみたいものです。 ちなみにゴルムの名前はロード・オブ・ザ・リングからとっている。 日本では「ゴラム」と発音してたけどここでは違うのが国の違いを感じて面白いですね。
nyae
nyae
2021/03/26
ネタバレ
残酷だけど希望もある、とある中学生の恋 #1巻応援
何も考えずに楽しく読める漫画じゃないってことは1話を読めば明らかなんですけど、無視できない"引力"がある漫画です。読まないとな、という気持ちになります。 主人公の女子中学生・淳が、幼馴染の彼氏がいながらもある時自分のピンチを救ってくれた女子高校生・圭と知り合い、圭への恋心を自覚します。中学生って大人よりも大事なものや簡単に失うことができない物事が多すぎて、残酷な現実だなと思います。そのなかで大きな心で支えてくれようとする大人もいて、淳も自分なりにけりをつけるところにはつけて、初めての感情と向き合おうとします。 こういう場合、圭への恋心に蓋をするかしないかには正解も不正解もなくて、もし六丸くんと付き合い続けてもそれも間違いじゃないと思うので、読者としては淳のしたいようにしてほしいという気持ちしかないですね。 あと個人的には、もし知らない人がいたら伝わってたら良いなと思ったのが生理の描き方。もちろん全員がそうじゃないけど、生理ってこういうことが起きるんだってちゃんと描いているのが良かったです。 少年誌で描かれていることがちゃんと意味のあるものになってほしい作品です。 気になるのはあの梅島心くんという少年ですね。 淳たちのクラスメイトなのにまったく素性が明かされないまま1巻が終わりました。圭ちゃんと親しそうな関係みたい。
nyae
nyae
2021/03/16
ネタバレ
いま連載してる中でいちばん面白いかも…?
フルカラーの縦スクロールが馴染まなかったので読まずにいたけど、単行本になったので読んでみました。 当然といえば当然ですけど、東村アキコファンは絶対読んだほうがいい。面白い。 もしかしたら今連載中の東村作品の中でいちばん面白いかも。 かんたんにいうと、芸能ゴシップライターの主人公・遥が、大好きな俳優・SORAの熱愛スクープをきっかけに、小学生の頃にした3歳年下の可愛い男の子「こうちゃん」との切ない恋を思い出すんだけど、そのこうちゃんがもしかしたらSORAと同一人物かもしれないという話。というか同一人物なんだけどいまのところ遥はそれに確信を持てていない。取材で対面して名乗ったけどSORAは無反応。覚えてないのか、どうなのか…。 当時、幼馴染の猫作に変態だとからかわれたせいでこうちゃんとの思い出を30歳になるまで蓋をしていたから、一度その蓋が開いてからどんどん色んなものが蘇ってくる感じがなんかわからないけどこっちもドキドキする!! 仮に「あのとき本当はこうちゃんのこと好きだった」と言ったところで、いやむしろ言うべきなんかじゃないけど、どうしても記憶って美化されがちだし幸せだったときの思い出って蔑ろにできないよね、しがみつきたいよね…!ってのがものすごくわかる。 あと東村作品の好きなところ、サブキャラがホント良い。 個人的にはSORAのお兄ちゃんが最高。
nyae
nyae
2021/03/07
ASが「20〜30人にひとりくらいはいる」と知って
📷
そんなにたくさんいるの?と思う人がほとんどなんじゃないでしょうか。 私はこの漫画を読んでそれを知った時、発達障害と呼ぶことに違和感を覚えました。確かに、漫画に描かれてる作者含めた様々な人の「やらかし」を読んでいると、特殊だな、大変そうだな、と感じることが多いです。しかし同時に、そもそも健常(と呼ばれる側)が置いてるハードルも高すぎるんじゃないか、それを超えられない人をまとめて障害と呼ぶのは乱暴なんじゃないかとも感じました。 とはいえ、今まで生きてきたなかで自分の中に埋め込まれてきた 「普通はこうすべき」「こうするのが常識」「これができないなんでおかしい」という思い込みを取り払うのが難しいのも事実(そこは頑張れよという話だが)。 読んでると、ASの人でも関わる人や環境によっては健常同様に生きていける場合もあることがわかります。運と縁とタイミングってやつだな、と思いますけど、健常も同じですよね。 しかし作者もその他の方も、よく今まで無事に生きてこれたなというエピソードが満載です。親しい人にAS等の特徴があったら、今まで生きてきてくれてありがとうと伝えましょう。 あとがきに、「健常」と「障害」は区別であって差別ではないって書いてあったことにもハッとしました。漢字表記を気にして変えたりとか、気遣いのやり方のズレなんだなと。
nyae
nyae
2021/02/25
あかねが主役の『ヤマタノオロチ編』
数あるバトルエピソードのなかでも、ダントツに好きなのがコミックス25巻から26巻にかけて描かれる『ヤマタノオロチ編』で、自分が生まれて初めてらんま1/2を読んだ回でもあり、ヒロインのあかねが主役です。 ある日あかねがひとりで化物退治に向かい、そこである少年と運命的な再会を果たし…というもの。まず料理下手のあかねが"普通のカレー"を作るという衝撃的な始まり方をする点からも、他とは一線を画すると思っています。 またここでは"真之介"という(この漫画の中では)わりと普通の少年が出てくるのが特徴的で、それにより"乱馬に正統派ライバルがいるタイプ"の珍しい三角関係が生まれるのも見どころのひとつ。 そんな複雑な関係性と悲しいすれ違いが起こる中、乱馬はあくまであかねの「真之介を救いたい」気持ちを汲んで、真之介と共闘する展開になるのもアツい。全体的にみんなの人としての優しさとか思いやりがベースにあるのがなんかいいんですよね。 女好きなヤマタノオロチのところへ、あかねのかわりに女らんまが行くのではなく、あえて乱馬は女装して戦いに臨みます。あくまでもあかねが中心に真之介のために戦うという構図が最後まで崩れないのが良かった。そして忘れてはいけない良牙の存在ですが、ここまで都合のいいように扱われた回もなかったのでは。笑 という感じで、あかねの武道家としての強くて真摯なところと優しくて情に厚いところ、更には乱馬とあかねのもはや"家族愛"ともいえる絆を改めて感じることができたいい回だったなと思います。らんまを読んだことがない人にこのエピソードだけでも読んでほしいくらい、お気に入りです。 しかし、あの時どうしてあかねは普通のカレーを作ることができたのか。謎です。 #マンバ読書会