兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
もしも人生の「あの瞬間」に、別の選択肢を選んでいたらどうなっていただろうか…… そんな風に考えたことがある人は多いことでしょう。 新歓コンパで出逢った日から片想いをしていた春呼(はるこ)さんと絶妙に仲を深めながらも想いを告げる瞬間を逃し、最終的に他の男と結婚されて血の涙を流す男・夢路浪(ゆめじろう)。そんな彼が、別の世界線に飛んでかつての後悔を取り戻そうとする物語です。 タイムリープややり直し系の物語は昨今数多くありますが、多くの作品は過去に戻りまったく同じ状況に対して違う選択肢を取って未来を変えて行くものが多いです。 ただ、本作においてはあくまでパラレルワールド、並行して存在する世界なので、そのやり直したい瞬間に戻ったとしても、そこは数多の分岐を経て辿り着いた無数の世界線の内のひとつなので、自分の記憶通りではなく相手の性格や外見もランダムに変化しているというのがミソです。 テセウスの船のような問題ですが、一体何がどこまで残っていたらそれは自分の好きな相手だと言えるのか。SF的な、哲学的な問題もはらみながら純粋な想いが主人公を駆動させ続けていきます。果たして、サルがシェイクスピアの小説を書くような世界線ガチャの当たりを引けるのか。個人的に、アカシックレコードを可視化したようなシーンが好きです。 また、そんな夢路浪のことを昔からずっと気に掛け続けてくれた、幼馴染のサトイモこと里井桃がかわいいです。前作の『恋、ヒトゴトに及ぶ』でも見られたような、絶妙な片想いに心を擽られます。 恋愛ものが好きで、そこにSF的要素が加わったものは更に好きという方にお薦めしたいです。
名無し
1年以上前
も〜〜〜大変な作品が登場しましたよ。個人的に今後のBL界を大きく揺さぶる存在になるのではと考えていますこのモンスターアンドゴースト。作者のヒメミコ先生の画力が本当にすごくて!全ページ全コマ隙がなく美しい!何と言ってもメインカプである攻の戸純椿(ことんつばき)君と勇樹兜(ゆうきかぶと)君の顔面がむちゃくちゃ美形!!!!!本当にきれいで格好良い!!!!!それだけでなく、受のカブ君が死んでる状態で始まる異例の事態。幽霊に取り憑かれた不器用なモンスター高校生のお話です。1話では暴れまくってた椿君ですが、陽キャ幽霊のカブ君が側で理解してくれることで少しずつ角がとれて表情も柔らかくなり、周囲に引かれていた距離もちょっとずつ変化が出てきます。2話ではイビツ君という仲間もできて、椿君の暗黒面も飛び出しますがそれでより深く彼のことを知れます。 画面からキラキラが伝わるほど明るく可愛らしいカブ君ですが、死んでるんですよ。2話のラストで思い出さされて。ガーンとなりますが、ヒメミコ先生ご自身がハッピーエンドだと明言して下さっているのでご安心ください。これからもいろんなことが起きると思いますが、最後に笑えることを信じて続きを楽しみに待っています。
まみこ
まみこ
1年以上前
勿論、タイトルは、The Bandの解散コンサートを撮ったドキュメンタリー映画、"The Last Waltz"から取られています。 …のように、'70年代末辺りに、ロックやブルーズにハマった、中年、と言うか初老男性の音楽遍歴の自分語り、それも自己陶酔が過ぎて少々気持ち悪い感じ、で構成された奇妙な一冊です。 …とは言え、やっぱり画力は流石なんですよね。 楽器って、本当に銃とかバイクと同じ、精密機器なので、正しく描かないと、説得力無いんですよ。今となってはビンテージになったギターの、ペグやブリッジ、フレットの一本一本まで細かく描く、それに向き合う姿勢、全然イヤじゃないです。 Amazonのレビューでも書かれていましたが、「漫画ゴラクより、リットーミュージックあたりで連載した方が良いんでないの?」は、全くの正論ですわ。 実は、この単行本に収録されなかった、悲劇の最終回があります。 作者は、2巻に向けて、話を考えたりネームを切っていたのですが、打ち合わせの時に、担当編集者と営業担当に、「1巻の予約の数字が、目標に到達しなかったので、このまま打ち切りです」と非情な宣告を受け、心が折れてしまうのです。 「1巻の予約の数字で、その後の連載継続が決まる」と言う日本文芸社/漫画ゴラクのシステムを、ハッキリ意識したのは、これが最初だったのかもしれません。 でも、描写はされなくても、最後のワルツは、終わることなく、ずっと続いていくんでしょうね。そういう変な余韻のある一冊です。
六文銭
六文銭
1年以上前
87年連載開始で、映画化にもなった本作。 灰色の予備校時代に、帰り道のブッ○オフでずっと立ち読みしていた作品。(その後全巻買ったので、買えよ!というご意見はご容赦頂きたい) なんで、これを読んだかというと 「自分より下の人間をみて安心したかったから」 というクソみたいな動機。 最悪な動機なんですが、今思うと鬱屈した予備校時代に自分の心の支えになっていたのも事実で、その点で思い出深い作品だったりします。 さて、その内容ですが、滑り止めの大学すら落ちた主人公が、予備校で出会った美少女に惹かれ、その美少女が東大を目指すことから、自身も東大を目指すという話。 学力が全く足りないのに、この無謀な挑戦と、この無目的に流されるままの主人公に、当時の自分は勇気づけられてました。 あ、こんなんでいいんだ、と。 ここの登場人物たち予備校といっても、ほとんど勉強していないし、出席もせずスグに茶をしばきにいきます。 色恋沙汰も随所に出てくる。 およそ予備校生とはいえない、この体たらくに自分の張り詰めた気持ちが軽くなったものです。 (もっとも、この主人公のふらふらしている様に読む人によっては苛立つかもしれませんが・・・。) 添付画像のように、すべて他責にしてどうしようもない主人公なのですが、一方で、なぜか女性に好かれる。 母性がくすぐられるからなのかよくわかりませんが、だから一層、この作品の女性陣は魅力的で、こんな主人公でも、応援したり、支えたり、ありのままを受け入れつつ、現状から引っ張り上げてくれる感じが読んでて心地いいんですよね。 いつだって男が変わるのは女性の力なんだと痛感します。 (前時代的な発想なのかもしれませんが) ウジウジしている男に、元気な女性(幼なじみとか)の構図が好きなので個人的にツボです。 最後も、、決してハッピーとはいえないのですが、この主人公らしいラストなのもリアルでいいです。 つらつらと描きましたが、今読んでも古さは感じない・・・とまで言いませんが(時代背景が80~90年代だし、携帯とかないし)、絵柄やテンポの良い展開は今でも遜色なく読めると思います。
87年連載開始で、映画化にもなった本作。

灰色の予備校時代に、帰り道のブッ○オフでずっと...
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
『咲-Saki-』を読み始めたころ、世間でもっと麻雀が流行ったら良いなとは思っていましたが、Mリーグも大きな盛り上がりを見せ女流プロ雀士が大活躍し、ここまで流行るようになろうとは想像していませんでした。嬉しい誤算です。 そんなご時世もあってか、また新たな美少女麻雀ストーリーが登場しました。 麻雀打ちはどこか狂っている人が多く、そんな狂った雀士が編み出した常にお嬢様言葉で話さないとペナルティを受ける「お嬢様麻雀」という狂気的な遊びがありますが、本作では正真正銘本物のお嬢様による麻雀が行われます。 本格的な麻雀マンガとは趣を異にしており、麻雀を題材としながらも登場人物は皆麻雀初心者。ゆるくふわっとした雰囲気で、麻雀のルールを知らない方でも十分に楽しむことができます。 グレードの高いお嬢様が集う高校・鳳女学院に、疎外感を覚えながらも通う庶民の主人公の冴が、学院内でのトップオブトップお嬢様である千星(ちせ)と麻雀を介してお近づきになるところから物語はスタート。徐々に仲を深めていきながら、千星を慕う乃々花を始め、魅力的なキャラクターたちもゆっくりと増えていきます。 きらら系らしい、キャッキャウフフの男性が登場しない楽園的百合百合しさと麻雀の掛け合わせが好きな方には間違いないであろう作品です。 主人公である冴が、学院に入ってからのみならず昔から疎外感を覚えていた理由が語られ出したとき、この作品全体がギュッと締まって魅力がより輝き出した印象です。麻雀が対人ゲームであるというところの良さが、お話に上手く作用しています。 余談ですが、あとがきマンガによると筆者が麻雀マンガの企画を持ち込んでから担当編集がすぐに麻雀のルールを符計算まで覚えてくれてミスを指摘してくれたと言うエピソードが素晴らしいなと思いました。どこかの十数年連載している大人気麻雀マンガシリーズの担当編集にも頑張ってほしいなと思ってしまう今日このごろです。
兎来栄寿
兎来栄寿
1年以上前
レジェンド級のベテラン作家すらもデジタル作画に流れて行きつつあるこの時代に、フルアナログでこんなマンガが描かれようとは! 異質で異様で異彩を放って止まない独特の画面は、衝撃的です。古き良き技術を凝らして描かれた絵は、あまりにも現代の他作品とは違った空気を纏っています。狂気的な、執念のような点描による描き込みの凄まじさ。世界、宇宙、次元を横断してトぶ『ウルトラ・ヘヴン』を髣髴とさせるようなトリップ感を呼び起こされます。 そして、そのサイケデリックですらある画に呼応するかのような、夢想感たっぷりのストーリー。どこか破綻しているようで、筋や諸々の設定はしっかりとある夢を視ているときのような感覚に陥ります。 私は嬉しくて堪りませんでした。まだこんなマンガに出逢えるんだ、マンガの世界はやはり無限だなあ、と。 素晴らしいのは、筆者の佐藤達木さんが50歳の新人というところです。67歳の新人として話題になったハン角斉といい、マンガはいつからでも描けるし描いて良いのだと勇気を与えてくれます。 極限まで研ぎ澄まされた、この作品でしか味わうことのできない世界を垣間見てみてはいかがでしょう。
吉川きっちょむ(芸人)
吉川きっちょむ(芸人)
1年以上前
面白かった! 掲載される漫画が、第1話というコンセプトの新増刊「ヤングジャンプダイイチワ」に掲載されてるわけですが、他の新人作家さんたちとは明らかに別枠で圧倒的でした! 原作は、みんなご存知『ワンパンマン』『モブサイコ100』のONE先生! 作画は、ヤングジャンプ本誌でも連載中『カタギモドシ』で圧倒的作画力の設楽清人先生! このタッグはアツい!! 転校生・羊谷真は、クラスで関わるなと言われている気弱な少年・黒道武弘と隣の席になり、昔イジメられていたことと人生を上手く生きる裏技を教える。すると、黒道からはあるもの見せられる。それは、人知れずこの世に存在していたバグのようなもの、正真正銘の「裏技」で…。 高校生男子二人の青春SF(すこしふしぎ)かと思ったら、不穏さもありどうなってしまうんだ、とこの先が気になりまくる1話でした! 青春の楽しさ、からの落差、からの突き上げが最高でした! ONE先生、『ワンパンマン』の原作やりながら、 『バーサス』のシナリオ原作もやって、 https://natalie.mu/comic/pp/versus 『バグエゴ』も文章での原作ということで、めちゃくちゃ忙しいんだろうな…。 https://twitter.com/ONE_rakugaki/status/1651247115530809344 第2話が、いつどこで読めるのか今から楽しみです!