【第5回トーチ漫画賞〈大賞〉受賞作】エアコン組立工場で働く川上綾は、小説家志望。 繰り返される単調な日々の中、月に一度、文芸サークルの集いを楽しみにしている。 しかしある事態をきっかけに、信じていた日常は崩壊する。 「”創作”なんかから卒業するきっかけを 本当はいつも探していたんだ」 逃れられない創作の呪縛、 この苦しみが誰かの喜びに変わる時まで――。
獅子と牡丹
聖なる秘宝を求めて……血脈と宿命のサーガ 富永電(あきら)は地元・天草の地金買取「天竺トレーディング」で働く29歳。 母は早逝し、ギャンブル依存の父と二人で暮らしている。 彼には幼少期から繰り返し見る夢がある。 曇天の海、死人のような影、仄暗い地下トンネル…… 不穏な夢と虚しい現実をもてあまし、未来を諦めかけた彼を追いつめるように、ある日、父が多額の借金を残して失踪し…… 第24回手塚治虫文化賞「マンガ大賞」受賞作家・高浜寛が描きだす血脈と宿命の一大叙事詩。
ある晩夏
夏の神戸の街を歩く、母と娘。 久しぶりに会った母の腕は、抗がん剤のせいで痩せ細っていた。 「次があるか分からないから」そんなことばかり繰り返す母に、つい苛立ってしまう。 伝えたい言葉は、想いは、もっとたくさんあるのに…。 『そしてヒロインはいなくなった』『姉の友人』ばったん新作読み切り。
「おれ、ドブ川で溺れた。誰も助けてくれないのに。」 田舎の不良中学生りゅうしんが近所の川で見たお供え物。 溺れて死んでしまった子でさえ気にかけてくれる人がいるのに自分は——。 ドブ川の中から孤独をさけぶ、渾身の読切57p
かつて〝通勤漫画家〟だった男は、東京の街を転々とさすらう…… 浦島は助けた亀に連れられて、新宿ゴールデン街にある〝竜宮城〟へ—— 建築家・漫画家の座二郎が描く、 おとぎの都市・東京を舞台に、現実と幻想が交差する物語シリーズ第一弾。
地層の女
【第4回トーチ漫画賞〈大賞〉受賞作】眠る地層を呼び覚ます、第4回トーチ漫画賞大賞作。 前世が地層だと話す女、「他者性」としゃべる犬、ふらっと家に現れる虎…。 眠る地層を呼び覚ます、フレッシュな奇想短編4本。
君らのための教室
私の学校は、今日も形を変えて私の登校を阻む。 思春期の繊細な気持ちが渦巻く、「君ら」と私のアンチ学園ストーリー。 心の起伏をつぶさに拾いあげる期待の新鋭 トーチ初登場!
蟹を食べる
【第3回トーチ漫画賞 準大賞受賞作】第3回トーチ漫画賞《準大賞》に輝いた、期待の新人が送る32ページ読切。 フラれた友達を励ますために蟹鍋を囲もうとした青年3人。そんな彼らを何者かが襲う……。 ごくごく狭い部屋で起こる、わちゃわちゃホラーコメディ。
オガワくん大繁殖
思い出の中のオガワくんは、増殖していた。 育った町でいつのまにか増殖していたオガワくんたちとの日々は、 都会に疲れたオオモリの心をあの時に引きとめるが——。 心の起伏をつぶさに拾いあげる期待の新鋭による短編シリーズ。
「やろうよ、流しそうめん」 優秀な理系大学生・リリと夢見がちな文系落第生・ハルカ。 なかよしだけど正反対の二人は、リリの留学を機に離ればなれに。 夏の終わり、思い出づくり。ふたりの友情と流れるそうめんの行方は——。 宇宙は燃え、君は旅立つ。若き実力派による大ボリューム60P!
BEM
「長い旅路だった……ニューヨーク…オハイオ…フロリダ…ミズーリ…テキサス…アリゾナ……州境を越えるたびに死体の数は増え続けた……人間がこんな残虐なことをするはずがない…そう思いたかったのかもしれない。だが証拠が揃うたびにある考えが頭をよぎるようになり、今では確信している。これが“エイリアン”の仕業であることを……」 アメリカ全土で続発する奇妙かつ残虐な殺人事件。名うてのFBI捜査官・ヘイドリアンは旅を続ける中で宇宙からの侵略者の存在を確信し……『死都調布』『武蔵野』の斎藤潤一郎が描く、衝撃のエイリアンSFハードボイルド黙示録!
コウモリ怪人とムカデ怪人の間に生まれた 悪のスーパーサラブレッド、デスベノム! 幼き頃より英才教育を施されし、正真正銘の大怪人!! してその正体は……… 労働、介護、老い、追憶 「でも…私の人生はまだ何も…」 這い上がれ、これは人生との戦いだ
小説家はとうの昔に諦めてしまったけれど、何者かになりたい気持ちを捨てきれずに集まり続ける3人の女の子。 平和で楽しそうな3人の文芸サークル「キャロット通信」が何をきっかけに崩壊したのかを描く作品。 可愛らしくあたたかみのある絵柄、女の子たちのほのぼのした会話、そこからの残酷で現実的な展開がおもしろいのはもちろんだけど、主人公・川上の人物描写が素晴らしかった。 工場で長年働きながらも工場の人たちをナチュラルに下に見てる感じが節々に現れていてゾクゾクした。ちょっとしたリアルさがいい。 この描写があるから後半の展開がさらに残酷に見えていいんだよな……と感心してしまった。 夢を諦めないのはいいこととされがちだけど、諦めきれないのは悲劇でもあるんだなあと改めて実感させられる作品。 救いと見るか呪いと見るかは読む人次第なのかも。