外国人視点の開国後日本
原作となるイザベラ・バードの本は読んだことがある。 でもこれほど情景豊かに想像はできなかったし、イザベラ・バード視点のみなので、やはり周辺情報が客観的に描かれる漫画はやはり違う。 絵があると、それがすべて本当のように引っ張られてしまうのが弱点と何かで読んだ。 でも、自分だけの想像力では描ききれない、田舎の恐ろしいほどのノミやその他虫、そして不衛生さ。 それらが日常の様子として描かれ続けているので、漫画とはすごいものだなと思い知らされた。 そもそも、バード女史、よく行ったな。肉もないのに。 また、環境だけでなく、懐からボトルに入れた筆を取り出し記録をしたためる鶴吉の一連の仕草。 大人になったことを誇りに思う女の子の表情。 細やかな当時の人々の日常が、ドラマの何気ないワンシーンのように描かれていて、今は消え失せた文化を知らされる。 ちなみに、ヨーロッパより難儀な雑草が多い日本で、バード女史が農民が勤勉に働き雑草を刈るから「雑草がない」と表現したコマに、フフとなった。 有名な場面ですね。 キリスト教的な倫理観が根付いている現代の我々が、当時の日本へ気軽にトリップできる、すてきな漫画です。
<ログライン>
明治初頭に日本を旅し記録する女性の物語。
<ここがオススメ!>
実在人物である「イザベラ・バード」の「日本紀行」をベースにした物語。
いま、自分たちが住んでいるこの国の過去のお話。
「生きること」が今よりもずっと大変だった時代で、「日本」といえど異文化とも言えるような状況を主人公バードの目を通じて眺める。
バード女史の真っ直ぐな瞳と魂が、僕には気付けないであろう、そこにいる人々の強さと優しさを見せつけてくる。
記録に残すことの意義を見せつけられる傑作。
<この作品が好きなら……>
・へんなものみっけ!
・乙嫁語り
・絶滅動物物語