淡々と生きていくことって難しい。
人生の最後をどうやって迎えるか。 人間誰しも、死んでしまうのだから、その最後くらい自分で決められるものなら決めたい。 が、なかなかそうはいかないのが、現実である。 限界集落で起きた老夫婦の心中。 生まれた土地で、育ち、死んだら灰になって土に還る。 ふたりが亡くなるまでの、準備段階のなんと楽しそうなことか。 最後まで笑顔で、亡くなった、二人の秘密はずっと守られていく。
北陸の勝野市、田園地帯の集落で火葬場から老夫婦の焼死体が見つかる。警察は老老介護の末の心中と結論付ける。事件から半年後、東京で週刊誌記者をしている伊能は取材ため勝野市を訪れる。近隣住民の口は重く難航する取材のなか伊能は、地域の雑貨屋の駐車場に残る濃いタイヤ痕、焼死した夫婦が事件の半年前に車を買い替えたこと、挙動不審な小学生という三つの『不自然』に気付く。それは事件の深淵へ至る第一歩であった。
火葬場で見つかった老夫婦の焼死体。
その夫婦は子供もなく、最近妻が認知症になり、夫がその介護をしていたという状況。
そこから介護疲れによる自殺とみなされたが、しかしその真相は・・・という話。
週刊誌の記者である伊能が現地を訪れ、事の真相を地域住民から聞き出していく展開は、ミステリーっぽさもあるけど、それ以上に人間ドラマ的な要素が強く、最後は感動した。
二人が死に至った思いというのが、懺悔でもあるし、故郷に対する思いもある。
何より、愛情もあるだろう。
相手を残して先に死にたくないという強い思いが、後半にかけて強くにじみでてくる様に、特に自分は感動しました。
子供のいないたった二人の家族だから到達した感情だと思います。
実際にあった事件ー老夫婦が焼死体で発見されたーをモチーフに、内容はフィクションではあるようだが、実際の事件にも、本作のような二人の何か思いがあったのか?と感じずにはいられません。
最期の瞬間、死に方にその人の人生観がでるとすれば、これほど美しいものはないのではないでしょうか?