歳を取るのも悪くない
歳を取ると、若い頃に漠然と抱いていた成功や名誉への欲がなくなってくる。それはある程度の達成感だったり、今更どうしようもないという諦めだったりするが、自分の手でどうすることもできないことに対して苦しむよりは、手の届く範囲でいかに楽しむかという方向にシフトするという感覚が大きい。つまり自己満。 もともと漫画家になるくらいなのだから凝るタイプなのだと思うが、最初の全くこだわりがなかった状態から始まり、いろいろ試してあるスタイルに落ち着く、みたいなプロセスや思想が描かれているのがいい。ガイドブックやカタログでは得られない知見だし、何よりめちゃくちゃ楽しそう。40歳を超えて自分なりの楽しみ方を見つける方法や着眼点が参考になった。
普通は自己満足とか自己満とか言うとあまりいい意味には
取られませんね。
なんだか世間一般では無価値なものを自分だけ
無理やりに価値があるものと言い張っているような感じで。
最近の世間一般が普通にイメージする自己満足を至上とする生き方をする人となると、炎上系Youtuberとかでしょうか?
けれどこれらって、自己満足を得るためにやっているとしても、
結局は、世間にアピールしたい、世間に認めさせたいという
対外的な欲求が素になっていますよね。
それと金銭的なメリットが目的だったり。
玉井先生のおっしゃる「じこまん」は
自転車による自分だけの価値観の追及でした。
世間に認められたいとかとは真逆。
自分の価値は自分で決めて自分が評価すること。
この漫画「じこまん」で作者の玉井先生のおっしゃる
「じこまん論」の色々には、納得してしまうものが多かったです。
身もも蓋もない言い方をしてしまえばこの漫画は
中年男の自転車ライフを中心としたエッセイ漫画。
それだけといえばそれだけ。
ですが炎上系Youtuberとかと違って、だれにも迷惑はかけない。
それでいてあまり世間に共感されない趣味の世界での話を、
ここまで面白く「じこまん漫画」としてエンタメ化しているのが凄いです。
それはやはり、玉井先生本人が真面目に
「じこまん」しているからでしょうね。
けして漫画を面白くするために自己満をきどっているのではなく、
本気で自己満しているからなのでしょう。
たとえ暗い道で自動車にビビリながら走ろうとも、
仲間が側溝に突っ込んでも(基本は事故らないのが前提で)
それさえも「じこまん」に繋がる。
第三巻の最初であらためて「じこまん」について
「自分で自分を評価できる大人にしか得られない快感」
とか定義されていましたが、
なるほどなあ、と納得してしまいました。