こういう世界観か~
こちらの作者さんの漫画を初めて読みました。 あらすじを読んだら「ひきこもり」「カルト」「99%の絶望」とかって興味深いワードが並んでいて、闇深いのって面白いよね~という軽い気持ちでいたんです。 読んでびっくり…思ってたのと違う… どう表現したらいいのか 楽しませようとする話では一切ない!という感じ?すごく独特な流れで、向こうの世界からの視点なのかもしれないと思いました。個人的には話が面白いとは思わないんだけど、くせになる気持ちがわかるなぁと。他の作品も読んでみたいです。
ひきこもってしまった姉、カルト教団らしき怪しげなクラブ活動に熱を上げる父母、そんな家族と真正面から向き合えない「僕」……。壊れかけた一家を通して描かれる、誰かと繋がっていたいのに誰とも「本当」にはつながれないすべての人に贈る、99%の絶望と1%の希望の物語。
モーニング・ツー2010年40号〜2011年45号連載。
『変身のニュース』以前に描かれた夏次系先生の初連載作。
受験を控えた中学生の主人公柊(しゅう)は、両親がカルトにハマっており「自家製野菜で魂をリフレッシュするのよ!」という理由のもと自分の部屋を含めた家の半分をブルドーザーでにこやかに破壊されてしまいます。
先生の勧めで長く連絡を絶っていた姉のアパートを訪れたところ、なんか段ボールの塊みたいなものに姉は引きこもっていました。
姉、両親、そして柊の未来は如何に。
犬にぺろぺろ顔を舐められてうわあああとなるところや植木鉢で姉(偽)をぶん殴るところや、車で轢かれたおっさんの先生を助け起こしたら密かに女装してて顔が青ざめるシーンなど、あげるとキリがないのですが、漫画の文法が良い意味でこなれてないというか、色々演出面で今では絶対にしなさそうな描き方をしてるのが興味深かったです。他の夏次系作品は完全に現実と隔絶した異世界にあるような印象があるんですが、この作品に限ってはその筆致が生々しい現実の地続きにあるというか.......笑えない現実がリリカルなセンスを
上回りそうなほんとにギリギリのところまで迫ってきているように思えて。
姉そっくりの人物を複数アパートに飼って監視している管理人(名前不明)の
不気味さも印象に残りました。この漫画に出てくる人がみんなどこか歪んでいますが、分けても彼がトップクラスにいかれております。なんですが、なんか妙なわるい魅力があってな〜、実はこの漫画で一番好きなキャラかも。彼がお風呂のシーンで姉(偽?)の頭に噛みつくところのエロさはすごーくそそりますよ。
2018年にようやく単行本化された際、4ページの描き下ろし番外編が追加されました。
本編がどこか突き放したような終わり方をするのに対し、この番外編では皆のその後が描かれています。「僕は問題ありません」と言い切れるかどうかは
わからない境遇ですが、柊の人生はまだ先がありそうでほっとしました。
私たちの知る夏次系先生の以降の作品と比べると全体的にドライで、殺伐とした
雰囲気がたちこめています。人と人が向き合う難しさもささくれだって痛みを
伴うもので、ややわかりずらさは正直否めません。
しかし、その中に垣間見える優しさに、僕はたまらなく惹かれたのでした。
シュールで荒々しい、夏次系先生の原風景。