アニ研ものって定期的に面白いのが出てくるよね
「映像研には手を出すな!」でアニメ映像を作る学生達のストーリーが話題となったの昨今ですが、アニメを作る学生さん達の作品は定期的に生まれていると思うのです。 「迷走アニ研部」ていう同人も読んでて面白かったんですが、描きたいことがきっと共通しているのです。それはきっとアニ研の楽しさだったりアニメの素晴らしさだったりアニメを作る大変さだったりなんだけど、それをマンガにするだけだと商業的に成り立ちにくいのでどうしても奇抜な方向に行きがちなのです。 この「ハックス!」は商業的に難しい方の路線ですが、ちょいちょい学生であることによる面倒くさいところが含まれてたりして(映像研はそこも深堀りしてますね)バランスが難しいんだけど、ハックス!のとっつきやすさは絵柄なのです。 失礼ながら画力でいうと中の下ぐらいな印象だけどそこも相まって善悪がわかりやすすぎるがために深読みしなくて済むのも良いところで、これもストーリーに集中できるポイントであると考えます。 学生時代アニ研に憧れる事はなかったけど、実際どういうことしてるんだろうなーという興味はちょっとあったなー 見てみたかったなー などと歳を取ると昔の自分に活を入れに行きたくなりますね、しみじみ。
ニコニコ動画のタグで「野生のプロ」って、ありますよね?無名だけれど、凄い技術力の動画に付されるタグ。
この『ハックス!』は、そんな「野生のプロ」が誕生する瞬間を描いた物語です。
★ ★ ★ ★ ★
高校に入学した阿佐実みよしは、新歓で見たアニメに感動と既視感を覚え、アニメーション研究部へ。
新歓アニメフィルムの保護を訴える美少年・児島に教わった既視感の正体は、「前半だけ伝説」の商業アニメ。第一話を観て興奮したみよしは翌日、衝動に任せてパラパラ漫画を描いてきて、それを映像技術に詳しい児島が動画にし、ニ⚪︎動(にまるどう、と読んでね)にアップ。すると……
……すごい!観られてる!
この感動を足がかりに、みよしは動画を、もの凄い勢いで描き始めます。
面白いのは、みよしの才能がアニメーションの面白さと「手の速さ」であること。ひと月で6本のパラパラ漫画を描きつつ、出来た作品からフィードバックを得て質を上げていく様は、最高のOJT。
彼女、結構「現場」向きかも知れません。
文化祭で上映するアニメ制作に突き進むみよしと児島。しかし、やる気はあったが煮え切らない部長、部外者だけれど部長と遊び、邪魔な先輩、逆恨みで難癖をつけてくる人……マイペースなくせに意外と他人のことを考えてしまうみよしは、モヤモヤしてしまいます。
果たして文化祭アニメは完成するのか?そして例の新歓アニメの製作者の謎は……?
★ ★ ★ ★ ★
部室に残っていた本格的な機材や、かつての製作の遺跡、フィルムに埃が映り込む感じなど、生々しい感触があるこの作品は、同時期のアニメ製作漫画『空色動画』を「スーパー系」とすれば、「リアル系」と分類できるでしょうか。(スパロボ的分類)
ニコニコ動画の当時のネタっぽい物が出てくるのも面白く、細かな見所の多い作品になっています。
アニメ製作の面白さを描きつつ、何かに打ち込む人と何もせず腐る人のコントラストが複雑な感慨を与えてくれる、骨のあるドラマ。古びない普遍性のある作品です!